アンハッピー † デス † エンド

0gⅢ

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Ⅰ - 傲慢の檻 -

白銀の悪魔

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“天束 イル”と名乗る青年が教会を訪れた、1時間前程の話。

冒頭の真っ白な姿をした悪魔 “ルシフィード”は、強風にあおられ色とりどりの花弁を散らす、前日まではさぞ美しく咲き誇っていたであろう花々が犇めく中庭を、教会の屋根の上から見下ろしていた。

台風の影響で雨脚も強まり、地面はかなり泥濘んできているが、綺麗に敷かれた緑の芝生がクッションになり、足を取られて危険なレベルだという程でもなさそうだ。

ルシフィードは冷ややかな目で、雨粒を受け揺れる芝生を見つめる。

「……まぁ、こんなものでは出てきませんね。こんなに早く出てこられては、こちらも困りますが 」

意味深にそうポツリと呟き、屋根を蹴り軽く跳躍すると、ふわりと泥濘んだ地面へと降り立った。

足が地面に着地するやいなや、ルシフィードは自身の姿を一瞬にして人間の姿へと変える。

頭部に携えた淡く白銀に光る角と、腰から伸びた偏光する青みを帯びた美しい羽は忽然と消えて無くなり、その美しい容姿以外はどう見ても普通の人間に見える。

もうおわかりであろうが、“天束 イル”という名前は全く架空のものであり、この姿もルシフィードが仕事で使っている人界での仮の姿だ。

普段から身体中に魔力を纏っているルシフィードは、この悪天候でも跳ねた汚泥が衣服に付着したり、身体が雨に濡れたりすることはまずないのだが、今は纏う魔力を遮断しているため、雨水が身体を伝い、全身を濡らしている。
出来れば濡れるのは避けたい所だが、普通の人間であれば雨に打たれて身体が濡れないことはまずない。目に付く不自然さは、標的の違和感を招く。仕事上、多少の我慢はやむおえないのだ。

なので、これも演出の一つ。いくら相手が好意的であっても、ここで傘でもさしていれば、教会の中に招かれることも無く帰宅を促され、標的との接触の機会を失う確率は高いということだ。
ルシフィードにとっては、このタイミングが第二接触には好条件であり、このチャンスを逃すわけには行かなかった。

顔に張り付く髪を払いながら、ルシフィードは不快そうに顔を歪める。

「はぁ……しかし仕事とはいえ、気象に左右される人界の環境は何百年経とうと肌に合いませんね 」

ため息をつきながら、ルシフィードは忌々しそうに曇天の空を仰ぎ睨んだ。

雨よけのために教会を囲む木々の下に移動したルシフィードは、改めて標的の神父の情報を確認する。

「そして家族構成……あまり情報はありませんが、確か巳崎良司の子供の一人は“祝福”持ち。これが利用できるものか邪魔になるものか。場合によっては排除も必要ですね 」

“祝福”とは、魂の転生を司る天界で特定の魂に付与される特別な能力を指す。
ただこれは、天界の気まぐれなお遊びであり、空を飛ぶ等の人間の機能を超越するような物は一切ない。
すごく勘が良かったり、妙に運が良かったり、五感の一部が優れているといった、人より感覚が優れた能力の話だ。

そういった人間は仕事上、利用価値がある場合と、逆にその存在が邪魔になる事もある。そのため、十分に見極めが必要なのだ。

「今回は彼の身内ですからね。利用価値があれば上場ですが 」

ルシフィードは短くため息を付くと、吹き荒れる雨風の中を進み、教会の入口へと向かった。
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