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かんらく
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何処からか、何かが、人の声が聞こえて来る。ぼくは、意識が夢から現実に引き戻されるように、重い瞼を開けた。
気付くと、見慣れない天井で、ぼくはベッドの上で仰向けになって寝ていた。動こうとしたが、両手が頭の上でまとめられている形で拘束されている事に気付き、はっとする。
起き上がれなかったが、顔を横にして、辺りを見回すと、目の前の光景に驚愕した。ーーそこには、スーツ姿の青年の膝の上で全裸のよくが座っていた。青年に揺さぶられる度に、熱い吐息を漏らし、涙で目を潤ませながら、微かな嬌声を漏らすよく。
「んっ……やぁっ……い、たぃ……っ。んむんんんっぅ」
「大分、薬が効いて来たようだね。ーー痛いけれど、気持ちイイだろう? よく」
「ん……は、はいっ」
青年は、よくに優しく口付けると、舌をそっと入れてよくの舌と絡めた。室内は、深い口付けによる水音が響き渡る。よくは青年の首に腕を絡めて、青年を受け入れ、青年のキスに素直に応じていた。
「ぷはっ……はぁっ……はぁっ……」
「さっきよりも素直になって来たね。……いい子だ。ご褒美に優しくしてあげるよ」
「……はい」
よくの頭を丁寧な所作で撫でる青年は、またよくの体を揺さぶる形で動いた。よくは、恍惚そうに艶かしい声を上げる。何度も何度も揺さぶられる度に。ぼくは、そんなよくの扇情的な姿にぞっとし、自分の顔からサーッと血の気が引くのを感じた。
そうして、青年は、ぼくの顔を横目で見やると、ぼくが起きた事に気が付いたようで、ぼくに微笑み掛けながら振り返る。
「あ、かすか。おはよう。ーーごめん。うるさかったかな?」
「……んっ……やぁっ……ぁっ……あっ!」
「……っ」
行為を続けながら涼しい顔でぼくに向かって挨拶をする謎の男に、ぼくは言葉を失った。ぼくは、この男を知らない。なのに、何故、この男はぼくの事を知っているのだろう? と考える。
「んっ!? やっ! ゆき、様。……やめてっ……やめて下さいっ。そこ、嫌ですっ……」
「あ、此処? 此処ね。重点的に突くよ。よく。頑張って?」
「んんんぅっ……やぁああっ!」
「やめろッッッ! よくから、離れろよっ! ーーお前、誰だっ!?」
青年の体の動きが激しくなるのをぼくは黙って見守った後、はっとした。気が付けば、謎の男に向かって叫んでいた。マグマのような憎悪と嫉妬の感情が湧き出して来るのが分かった。
「……え? 僕は、ゆき。よろしくね。かすか」
「……っ」
平然とぼくの問い掛けに答えるゆきと名乗った男は、能天気に「ーーちょっと待ってて。もう少しで終わるから」と言葉を続ける。
「ーーふざけるなっ! よくを離せって言ってるんだよっ!?」
「え? でも、此処で辞めたら、よく、体辛いと思うけど? ねえ? よく」
体の動きを止めて、息が上がったよくに語り掛けると、黙ってよくに再度、口付けた。よくは、目を瞑って、従順にゆきの口付けに答える。また深いキスをし出すゆきに、ぼくは「ーーやめろッッッ!」と暴れたが、拘束具からガチャガチャと金属音が虚しく響き渡るだけだった。
「……ふっ……んっ……んっ……」
「よく? 体、熱いだろう? 辛いかい?」
「ーーやめろって言ってるだろッ!」
ぼくの怒声をゆきは涼しい顔で無視をする。よくは、ぼーっとした表情でゆきからのキスを何度も何度も受け入れていた。よくの意識が定まっていない事に気付き、薬か何かを飲まされている可能性を考える。
「……可哀想だね。直ぐに楽にしてあげるからね。よく」
「ーー無視すんなッッッ!」
「……そこまで怒らなくたっていいだろう? かすか」
「ふざけるなっ! いい大人がこんな事をして許されると思ってるのかよッ!?」
「……ふふ」
ゆきは、ぼくの言葉に微笑んだ。その瞳は笑っているけれど、笑っていない。ぼくは、ゆきの表情を見て、肌で感じた。ーーこの男は、世間では許されない事を自分が平然とやってのけたとしても許されるだろうと自負している。
「……っ」
「かすかが眠っている間に、この子は健気にも、かすかの事ばかりを案じていたよ」
「ーーッッッ!?」
「ずっとかすかには、酷い事をしないでくれって、必死にかすかを守ろうとしてた」
「……っ」
「この子は、とてもいい子だね。ーーかすかが……この子を好きになるのも無理はないかな」
「!?」
図星を突かれて、息を飲む。よくは、変わらず嬌声を漏らしていて、耐えず、襲って来る快楽に耐えているようだった。ゆきは、そんなよくを芸術品のように眺めている。
「よくもよくで、かすかの事が好きみたいだね」
「……え?」
「……? 気が付いてなかったのかい?」
意外そうな顔をするゆきに、ぼくは呆然とした。ゆきは、にっこりと微笑むと言葉を続ける。
「よくには、ちょっとえっちな気持ちになるお薬を飲ませちゃったから、効果が切れるまで相手をしてあげるようなんだ。だから、その効果が切れるまでかすかはそこで黙って見てて?」
「ーーッッッ!?」
「あ、よくはもう嫌がってないから。安心してね」
「なっ!?」
「僕とのセックス、よくは気に入ってくれたみたい」
「……っ」
淡々と微笑みながら言うゆきは、よくの頭を撫でると、また体を動かし始めた。よくの絶頂は近いみたいで切迫した様子で吐息を漏らす。
ぼくは、思考が今の状況に追いついていなかった。目の前の光景は夢か何かなのではないだろうか? と思う程に。その位には現実味がなくて、ひたすらにその光景を見つめる他なかった。
ゆきは、ぼくに見せつけるようによくに深い深い口付けをする。よくは、とろんとした情欲の孕んだ瞳でゆきを見つめ返す。その瞳にはゆきしか映していなかった。ゆきからの口付けで頭が一杯なようで、ぼくの存在に気付いている風ではなかった。
気付くと、見慣れない天井で、ぼくはベッドの上で仰向けになって寝ていた。動こうとしたが、両手が頭の上でまとめられている形で拘束されている事に気付き、はっとする。
起き上がれなかったが、顔を横にして、辺りを見回すと、目の前の光景に驚愕した。ーーそこには、スーツ姿の青年の膝の上で全裸のよくが座っていた。青年に揺さぶられる度に、熱い吐息を漏らし、涙で目を潤ませながら、微かな嬌声を漏らすよく。
「んっ……やぁっ……い、たぃ……っ。んむんんんっぅ」
「大分、薬が効いて来たようだね。ーー痛いけれど、気持ちイイだろう? よく」
「ん……は、はいっ」
青年は、よくに優しく口付けると、舌をそっと入れてよくの舌と絡めた。室内は、深い口付けによる水音が響き渡る。よくは青年の首に腕を絡めて、青年を受け入れ、青年のキスに素直に応じていた。
「ぷはっ……はぁっ……はぁっ……」
「さっきよりも素直になって来たね。……いい子だ。ご褒美に優しくしてあげるよ」
「……はい」
よくの頭を丁寧な所作で撫でる青年は、またよくの体を揺さぶる形で動いた。よくは、恍惚そうに艶かしい声を上げる。何度も何度も揺さぶられる度に。ぼくは、そんなよくの扇情的な姿にぞっとし、自分の顔からサーッと血の気が引くのを感じた。
そうして、青年は、ぼくの顔を横目で見やると、ぼくが起きた事に気が付いたようで、ぼくに微笑み掛けながら振り返る。
「あ、かすか。おはよう。ーーごめん。うるさかったかな?」
「……んっ……やぁっ……ぁっ……あっ!」
「……っ」
行為を続けながら涼しい顔でぼくに向かって挨拶をする謎の男に、ぼくは言葉を失った。ぼくは、この男を知らない。なのに、何故、この男はぼくの事を知っているのだろう? と考える。
「んっ!? やっ! ゆき、様。……やめてっ……やめて下さいっ。そこ、嫌ですっ……」
「あ、此処? 此処ね。重点的に突くよ。よく。頑張って?」
「んんんぅっ……やぁああっ!」
「やめろッッッ! よくから、離れろよっ! ーーお前、誰だっ!?」
青年の体の動きが激しくなるのをぼくは黙って見守った後、はっとした。気が付けば、謎の男に向かって叫んでいた。マグマのような憎悪と嫉妬の感情が湧き出して来るのが分かった。
「……え? 僕は、ゆき。よろしくね。かすか」
「……っ」
平然とぼくの問い掛けに答えるゆきと名乗った男は、能天気に「ーーちょっと待ってて。もう少しで終わるから」と言葉を続ける。
「ーーふざけるなっ! よくを離せって言ってるんだよっ!?」
「え? でも、此処で辞めたら、よく、体辛いと思うけど? ねえ? よく」
体の動きを止めて、息が上がったよくに語り掛けると、黙ってよくに再度、口付けた。よくは、目を瞑って、従順にゆきの口付けに答える。また深いキスをし出すゆきに、ぼくは「ーーやめろッッッ!」と暴れたが、拘束具からガチャガチャと金属音が虚しく響き渡るだけだった。
「……ふっ……んっ……んっ……」
「よく? 体、熱いだろう? 辛いかい?」
「ーーやめろって言ってるだろッ!」
ぼくの怒声をゆきは涼しい顔で無視をする。よくは、ぼーっとした表情でゆきからのキスを何度も何度も受け入れていた。よくの意識が定まっていない事に気付き、薬か何かを飲まされている可能性を考える。
「……可哀想だね。直ぐに楽にしてあげるからね。よく」
「ーー無視すんなッッッ!」
「……そこまで怒らなくたっていいだろう? かすか」
「ふざけるなっ! いい大人がこんな事をして許されると思ってるのかよッ!?」
「……ふふ」
ゆきは、ぼくの言葉に微笑んだ。その瞳は笑っているけれど、笑っていない。ぼくは、ゆきの表情を見て、肌で感じた。ーーこの男は、世間では許されない事を自分が平然とやってのけたとしても許されるだろうと自負している。
「……っ」
「かすかが眠っている間に、この子は健気にも、かすかの事ばかりを案じていたよ」
「ーーッッッ!?」
「ずっとかすかには、酷い事をしないでくれって、必死にかすかを守ろうとしてた」
「……っ」
「この子は、とてもいい子だね。ーーかすかが……この子を好きになるのも無理はないかな」
「!?」
図星を突かれて、息を飲む。よくは、変わらず嬌声を漏らしていて、耐えず、襲って来る快楽に耐えているようだった。ゆきは、そんなよくを芸術品のように眺めている。
「よくもよくで、かすかの事が好きみたいだね」
「……え?」
「……? 気が付いてなかったのかい?」
意外そうな顔をするゆきに、ぼくは呆然とした。ゆきは、にっこりと微笑むと言葉を続ける。
「よくには、ちょっとえっちな気持ちになるお薬を飲ませちゃったから、効果が切れるまで相手をしてあげるようなんだ。だから、その効果が切れるまでかすかはそこで黙って見てて?」
「ーーッッッ!?」
「あ、よくはもう嫌がってないから。安心してね」
「なっ!?」
「僕とのセックス、よくは気に入ってくれたみたい」
「……っ」
淡々と微笑みながら言うゆきは、よくの頭を撫でると、また体を動かし始めた。よくの絶頂は近いみたいで切迫した様子で吐息を漏らす。
ぼくは、思考が今の状況に追いついていなかった。目の前の光景は夢か何かなのではないだろうか? と思う程に。その位には現実味がなくて、ひたすらにその光景を見つめる他なかった。
ゆきは、ぼくに見せつけるようによくに深い深い口付けをする。よくは、とろんとした情欲の孕んだ瞳でゆきを見つめ返す。その瞳にはゆきしか映していなかった。ゆきからの口付けで頭が一杯なようで、ぼくの存在に気付いている風ではなかった。
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