瑠菜の生活日記

黒岩 姫

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瑠菜の同級生が来た

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 「やめさせてください。」
 「かえ、今日の日付は?」
 「十月二十七日。」
 「おぉ、二か月経ったね。よくもまぁ、あきもせずに毎日言いに来るわね。」

 龍子が横で深々と頭を下げているにもかかわらず、瑠菜はそのままジャスミン茶を口に入れている。

 みんなで海に行き花火をしてから二か月が経ち、もう秋へと季節が変わった。
 木の葉は色づき桜の花びらのように舞っている。

 「やめさせてください。」
 「はいはい、明日ね。」

 最初言いに来た時にはゆっくりと話を聞いて龍子の相手をしていたが、ここ最近は毎日適当にあしらうようになっている。

 「なぜですか?」

 もちろん龍子がそれに気づかないわけではない。
 龍子は自分が思っていたよりも大きな声でそう叫んでいた。
 瑠菜と楓李はそれに対してとても驚いた。
 いつもなら龍子はすぐにあきらめて帰っていたからだ。

 「なんでダメなんですか?」

 瑠菜は龍子にしつこく聞かれて、何とも言えない表情をしながら下を向いた。

 「瑠菜もう言ったらどうだ?」
 「……そうね、このまま黙っているのもかわいそうね。龍子君。」
 「……はい。」

 楓李に横から口を出されてようやく瑠菜は龍子を見て話しだした。 

 「あなたをやめさせられない理由は一つ。ただ単にめんどくさいからよ。」
 「はぁ?」
 「ブハッ……っ……。」

 瑠菜がそう言い切ると龍子はいかにもそんな理由でという顔をした。
 一方楓李は腹を抱えてケラケラと笑っていて少し苦しそうに息を吸ったり吐いたりしている。

 「る、瑠菜……フ……ハハ。言葉が足りなさすぎだろ……。それは、フ……ハハハ!」
 「わかりやすくしようと思って長く話してもわからないでしょう?」
 「それもそうか……。」

 楓李は少し落ち着いてゆっくりと深呼吸をすると龍子に手招きをした。
 龍子は意味も分からずに楓李の方へと向かう。

 「これ、何かわかるか?」
 「……報告書……ですか?」

 楓李は何十枚という書類がホッチキスでまとめられたものを一冊、机の上に置いた。

 「お前を弟子にしたときに俺が書いたものだ。これをあと六冊は書いた。」
 「え?六冊も……。」
 「あぁ。俺が持ってるこの一冊、雪紀兄さんが持ってる分、社長、会長。あとは事務長も持ってるな。そしてお前の場合サクラの手伝い、つまりは瑠菜の仕事もやってるだろう?龍子は今、瑠菜とも契約を結んでいるってことになる。これは解約するときも似たような量を書かないといけないんだ。だから、面倒だと瑠菜は言った。」
 「あぁ……そういう……。」

 龍子は一枚一枚書類をめくってみた。
 内容としては龍子の記憶がない過去などの龍子が知らないことから、龍子の個人情報などの龍子も知っていることまで様々だった。

 「龍子君は……さ、別にそんなにやめたいと思ってないんじゃない?何なら、まだここにいたいとか。」
 「は?」

 龍子は瑠菜が何を言っているのかわからずに首をかしげた。
 やめたいと言っている人に言う言葉ではないと龍子でもわかる。

 「いや、あのね。これは私の考えなんだけど、本当にいやなら仕事をすべて放り投げてバックレることもできたでしょう?もっと適当にサクラへ接して、何なら怪我をさせることもできた。その方が確実に辞められると思うし。」

 瑠菜はいつもよりもスラスラと龍子にわかりやすく考えを述べた。
 いつものほんわかとしたしゃべり方とは裏腹に、仕事のできるキャリアウーマンのようだ。
 そんな瑠菜を見て、楓李は自分が口出しする必要はないと思って、二人を見守ることにした。

 「龍子君が嫌なのは……会いたくないのは青龍君でしょう?」

 瑠菜にそう言われて、龍子はハッとした。

 自分ではない、横の知らない人が自分の的の中心を矢で射抜いたような感覚。
 悔しいとか、その人への恨みとかそういう感情ではなく、ただただ何が起こったのかわからずにあっけに取られているような感じ。
 そんな中でも龍子はその一言がなぜか腑に落ちた。

 瑠菜のやっぱりという目は少し悔しいが間違ってはいないと龍子は思った。

 「青龍君、よく私のとこに来るようになったもんね。というか、龍子君ってサクラのこと大好きじゃん。」
 「……ごめんなさい。楓李様、瑠菜さん。……その、明日は一日休暇をもらえませんか?少しゆっくり考えたくて。」
 「了解。」
 「じゃあ、明日は私がサクラの近くにいるわね。」

 龍子が深々と頭を下げると、瑠菜も楓李も笑顔で了承した。






 そして次の日。

 「お久しぶりです!最近いつも雑用ばっかりだったので懐かしいような気がしますね。」
 「残念だけど、今日は私の雑用をよろしくね。」

 元気いっぱい小屋の中に入ってきたサクラは、瑠菜に言われてえぇーっと少しいやそうに反応した。

 珍しく龍子だけが休みという状況にほんの少し違和感を持ったサクラだったが、瑠菜に毎回一緒の方がおかしいでしょと言われて確かにと思った。
 瑠菜と楓李でさえも毎回同じ日に休みを取っていないこともサクラの納得した理由の一つだ。

 逆に今までなぜ一緒の休みだったのか、恋人でもないのにとサクラは一人で考えた。

 「……瑠菜さん、サクラに恋人はできるのでしょうか?」
 「サルでもできるわよ。」
 「私も瑠菜さんみたいになんでもできる人なら良かったです。」

 瑠菜はそれを聞いて黙ったまま引き出しから何十枚もの紙を取り出した。

 「瑠菜さん、これは?」
 「この会社でたまにあってるテスト。これ見ても何でもできると思う?」
 「え……?」

 それは英語のテストらしく、一桁の点数しか書かれていない。

 「十点満点ですか?」
 「五百点満点よ。」
 「五百?」

 サクラは瑠菜の言葉を聞いて答案用紙を二度見してしまった。

 「え?瑠菜さん、英語苦手なんですか?」
 「あぁ。こいつの世界最大の敵だな。どんなに教えても四分の一も点数が取れなくて、いつの間にかこの点数に戻ってるんだ。」
 「相当ですね……。」

 顔を真っ赤にしている瑠菜の横から楓李がニヤリと笑いながら言った。

 「あと、火やや水もあんまり好きじゃねぇな。あ、卓球とテニスも三年間やってまだ初心者って言われてるんだっけ?」
 「だから、花火もプールも海も楽しそうじゃなかったんだ。」

 サクラは瑠菜と出会ってからのほぼ半年間を思い出した。
 この感じだと泳ぐことはおろか浮かぶこともできないのだろう。

 「瑠菜さんってミステリアスで、子供っぽいことが嫌いなのかと思ってました。」
 「こいつが一番ガキに近いけどな。食べ物も好き嫌い多いし。」
 「かえ、もう黙ってて。もういいでしょ?」
 「悪かったって、わかったから叩くな。」

 ぽかぽかと楓李の胸のあたりを少々強めに叩く瑠菜に楓李はそう言っている。
 しかし、言葉で言っていることと表情が全くあっていないと思うくらい、にこにこと笑っているところを見る限り痛くはないのだろう。

 「びっくりですね。瑠菜さんにそんな欠点があったなんて。」
 「何言ってんのよ。欠点だとは思ってないわよ。英語に関してはかえがいれば問題ないし。」
 「そういうことじゃないと思うんですけど。」

 サクラは瑠菜の余裕ぶった一言に茶々を入れるように言った。
 いつも良い点数のテストは紙飛行機にしてゴミ箱に入れる瑠菜が、悪い点数の英語だけを取っていることには違和感でしかない。

 もちろん瑠菜もまったく気にしていないわけではないからこそ取っているのだが。

 「欠点があるのと彼氏がいるのは別問題よ。」
 「まぁ、瑠菜にでさえも俺みたいな彼氏がいるしな。」

 自分は天才だと言わんばかりに胸を張っている楓李に瑠菜は少しムカついた。

 「楓李は苦いものとか辛いものは食べられないおこちゃまだし。」
 「お前も大して辛いの食べられないだろ。」
 「カフェで甘いケーキやパフェを私より食べてたじゃない。」
 「別にいいだろ?それくらい。」
 「おこちゃま。」
 「あ?」

 瑠菜と楓李が言い合いをしている間にサクラの居場所は徐々になくなり、サクラは二人の言い合いを止めることをあきらめて外へ出ることにした。

 「本当に仲いいですねぇ……。あれ?あの人…………。」

 サクラが外に出た時、そこには一人の男がいた。

(カッコいい!)

 サクラはその人を目で追ってから声をかければよかったと思った。

(次来たら声かけよう!)







 数日後、龍子が瑠菜と楓李の所を訪ねた。
 休む前よりもスッキリとしていることから気持ちが落ち着いたのだろうと、瑠菜と楓李は思った。 

 「あれ?サクラは……。」
 「外よ。ここ毎日あんな感じなの。」

 瑠菜があきれたように言うので龍子がちらりと窓から外をのぞくと、少し頬を赤らめながら道の真ん中でキョロキョロとしたりうろうろと落ち着きがなさそうにしているサクラがいた。

 「何してんすか?あれ。」
 「さぁね……。野鳥でも探してるんじゃない?それより、あんな感じでボーっとしているから龍子君にも仕事手伝ってもらってもいいかしら?」
 「はいっ!あ、楓李様いいですか?」
 「どうぞ。青龍が毎日出てきてくれるからこっちも手が空いてるし。好きにしていいぞ。」
 「わかりました。」

 楓李は昔から仕事をこなしていた青龍が他の弟子と楓李の間に入ったことで、相当仕事がやりやすくなっていた。
 青龍の人当たりの良さがよかったらしく、他の弟子からはとても好評で仕事の質も上がっている。

 「龍子君、本当に落ち着いたわね。」
 「なんか少し安心って言うか、あきらめというか、吹っ切れました。」
 「それはそれでどうかしら。」

 瑠菜は本当にそれでいいのかと少し頭を抱えた。

 「あれ?龍子君来ていたんですね。」
 「サクラ、なんかご機嫌ね。」
 「やっと連絡先聞けちゃったんです!」
 「誰の?」

 サクラは龍子に問い詰められてもまったく気にしていない様子で、ただただ幸せそうに笑っていた。

 「あの道を毎日通る人です。かっこよくていつも私から話しかけられなかったんですけど、やっと声をかけてもらっちゃって。」
 「あぁ、あの人ね。」
 「瑠菜さん知っているんですか?え、名前とかほかに何か知りませんか?」
 「……残念ね。いつも通ってるのを見るだけよ。それより一目ぼれしてナンパ待ちみたいな行動はあんまりお勧めしないわ。やめなさい。」
 「今回だけですよ。クリスマスまでには恋人欲しいですし。」

 サクラはそういって自分のスマホの中を見た。
 瑠菜は若干ため息をこぼしながら、龍子にサクラへ頼むはずだった資料整理を頼んだ。

 「瑠菜、悪い。相談者が来たぞ。」

 一時間ほど作業に瑠菜が熱中していると、楓李に声をかけられた。

 瑠菜は両手を上にあげて大きく伸びをしてからいつもより小さい声で了解という。
 一人でずっとしゃべらずに作業していたこともあってか、声が少し出しずらいらしい。

 「こんにちは、予約でしたか?」
 「あ、いえ。すみません急に来てしまって。」
 「いいえ、別にいいんです。ただ一応みんなに聞いているだけなので。」

 瑠菜はそう言いながら書類とペンを持って依頼人の前に立った。

 「ここに一応書いてもらってもいいですか?」
 「あ……は、はい……。」

 相談をしてきたのは瑠菜と同じくらいの年の女の子だった。
 恋愛と進路についてアドバイスをもらいたいらしい。
 瑠菜はよく通る道でたまに見かけたことがあるが、女の子の方は全く気付いていないらしい。
 多少メイクで顔を変えているからだろう。

 「あの……えっと……。」

 女の子は少ししどろもどろになりながらチラチラと瑠菜の方を見た。
 瑠菜はそんな女の子を見てびくりとしてしまう。
 同い年とばれてしまえば瑠菜は雪紀から怒られてしまう。

 「わ、私は瑠菜。年は二十二歳で基本的に相談は私が受けているの。」
 「……妹さんとかいらっしゃいますか?私と同い年の。」
 「個人情報についてはあまりしゃべっちゃいけないのよ。少なくとも私は聞く側に会って話をする側ではないから。」

 それを聞いて少女は少しいやそうな顔をした。
 それもそのはず。
 少女が瑠菜から渡された紙は少女の個人情報を書く欄がたくさんある。
 自分だけが個人情報を提示することに不信感があってもおかしくはないだろう。

 「別にすべてを書く必要はないです。名前だけ書いていただければいいので。」
 「え?」
 「かえ。」
 「うちのやつが言葉足らずだったですね。すみません。あ、ジャスミン茶は好きですか?」
 「は、はい。」

 楓李は少女が書いている途中の紙を取り上げて瑠菜に渡した。
 瑠菜は少し不服そうにありがとうと小声で言ってそれを受け取っている。

 「あ、かっ……かっこいいですね。どういう関係なんですか?」
 「言う必要ある?」
 「え、あ……。」
 「同僚とか幼馴染よ。それより恋愛と進路……恋愛から話を聞いて行きましょうか。」
 「えっ……進路からじゃ。」
 「あなたのいいところをたくさん知ってからのほうがいいからね。進路ってことはあなたの未来にとても関わることだし。」

 瑠菜はそういってサクラを呼んだ。
 サクラはぼーっとしていたらしく、慌てて瑠菜の横に立った。

 「な、何ですか?まだ仕事が終わりそうにないのですが……。」
 「はい、三人分な。俺はいないほうがいいだろうから。」

 楓李は持ってきた飲み物とお菓子をサクラに預けると、少女に軽く頭を下げてからその場を立ち去ろうとした。
   楓李自身、女子がしている恋の話を聞いても何も反応できないし、あまり興味を持ったこともないのだ。

 「あ、あの……一緒に聞いてもらえませんか?男性のアドバイスとかも……ほしいので。」

 少女は楓李にそう言うと恥ずかしそうにした。

 一方楓李の方はというと、少しいやそうな顔をほんの一瞬だけ見せてから、すぐに営業スマイルに戻って瑠菜を見た。
 自分を追い返してほしいと訴えられているような気がして瑠菜はそっと目をそらした。

 「いいですね!それ。私もいてほしいです。」
 「サクラ、かえだって仕事大変なんだから。巻き込まないの。」
 「いいじゃないですか。終わってないのは私もなので。」
 「うぅ……。そうね。」

 楓李のにらんだ目にもお構いなしに瑠菜は引きつった笑顔でそう答えた。
 もともとボーっとしているサクラにお茶やお菓子を持ってこさせるのは危険だと思って楓李がやったのだが、龍子にやらせればよかったと楓李は後悔した。

 「実は、相手はサッカー部のエースで……すごく人気者なんです。私なんかが釣り合えるとは到底思っていません。あの人自体がモテるということもあるのですが、私は教室の隅で本を読んだり絵を描いたりしているような人間ですから。」
 「釣り合うとか釣り合わないとか、恋愛や友達間では関係ないと思いますけど。」

 落ち込んでいる少女にサクラはふと思ったことをそのまま口に出してしまった。
 サクラはすぐにハッとなり瑠菜の顔色を窺ったのだが、瑠菜は何かを考えたまま下を向いていて表情を見ることはできなかった。

 「関係ありますよ。いや、そりゃあすごく充実している人たちには関係ないのかもしれないと思いますけど、私みたいに隅で固まる埃みたいな人間は、そういうことも気にしないといけないんです。私なんかが付き合ったら、きっと相手が迷惑なんです。」

 少女が少し声を張り上げて話すとサクラはドキッとした。
 サクラは一年の半分も学校に行っておらず、こうやって瑠菜のもとで働いているとはいえ学校では引きこもりと同じ扱いだ。
   もともと孤児院にいたころいじめられたりもしていたので、今はそのいじめっ子に会うことが怖くて仕方がない。

 「……でも、人間って天秤にはかけられないのよね。」

 サクラが余計なことを言ったと思いどうしようか迷っていると瑠菜が急に口を開いた。

 「え?」
 「まぁ、神様とかエンマ大王とかなら天秤にかけたりするって言われていたりするけど、生きている人間でどっちが上とかどっちがしたとか、どっちが下僕だとかは決まっていないんじゃないかしら?」
 「そ、それは……。」
 「別に充実しているからえらいとかはないし、サクラの言ったとおり友情にも恋愛にも上下関係は全くなくて、必要なのはその人たちその人たち同士の気持ちよ。」

 瑠菜がそう言うと、少女はでもと反論したそうにしていた。
 しかし、反論する言葉も見つからず、言葉にならない気持ちを言葉で表そうと考えていた。

 サクラは瑠菜の様子を見てどうすればいいのかと思い、楓李の方を見た。
 楓李は瑠菜の様子を観察しているようで黙ったまま下を向いている。

 「でもっ……。」
 「でもそれは、自分のことをしっかりわかっていないとできない。いくら上下関係なんてないとは言っても誰かがあなたより早く恋人を作ったり、頭がよかったり運動ができたらそこでその人はあなたをバカにする。」
 「そうですよ……。」
 「人間は脳が発達しているから、大人の中でも人をバカにする人は多い。そういう人に会ってしまったときはね、自分は布だって思いこむといいの。布がなびくのと同じように悪口や陰口をひらひらかわすのが一番いいの。」

 少女は最初、自分に言われているのかわからなかった。
 そこにはいない誰かに対して瑠菜は自分の思いを伝えているのではないかと少女は感じたのだ。
 それはサクラも同じで、不思議と瑠菜が誰に対して言っているのかわからなかった。

 「……私は、告白してもいいですかね?」
 「相手に恋人がいないならやってみる価値あるかもね。」
 「ファイトです!」

 瑠菜とサクラに応援されて少女は少しだけ安心した気がした。

 「恋愛って一人で頑張っていくものだと思ってました……。」
 「……案外そうじゃないように見えて、一人かもな。」
 「え?」

 楓李がぽそりとつぶやいた一言に少女は少しびっくりしてしまった。
 瑠菜やサクラを見ていると一人で頑張るなんてありえないとでもいうような寄り添ってもらっている感があった。
 だからこそ、楓李の言葉を理解できなかったのだ。

 「あなたが告白するときには私たちはついて行けないからね。」
(そもそもその学校の生徒だからバレちゃうし。)
 「あ……。そうですよね。」
 「でも、告白の結果を聞いて喜んだり、悲しんだりすることはできるから。また来て頂戴ね。この通り、この子もそういう話は大好きだから。」

 瑠菜が楓李の一言に付け加えるように言うと少女は少し安心したような顔つきに変わった。
 少女自体、告白することはあまり考えていなかったが、楓李や瑠菜の言葉を聞いて現実味が増した、気がした。

 「ま、待ってます!」
 「ありがとう、ございます。」

 その後、瑠菜が席を外し、楓李がいなくなってもサクラと少女はしゃべり続けていた。
 サクラも恋についてはしゃべりたくてしゃべりたくてたまらなかったのだろう。

 瑠菜や楓李は恋愛については興味がなさすぎるし、龍子は何かと文句をつけてきてうるさいので、良いしゃべり相手になっているらしい。

 少女の方もサクラの話を聞いて頷き自分も好きな人についてよいところや悪いところなどをしゃべってキャッキャと楽しそうにしている。
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