ネオン・リベリオン

PON

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第二章

追跡者

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夜の逃走

ナオミとクロムを乗せたエアバイクは、カイロス・シティの夜空を滑るように駆け抜けた。

下には都市のスラム街が広がり、朽ち果てたビルの間で違法改造されたドローンが漂っている。遠くには高層ビル群がそびえ、巨大企業のロゴが光を放っていた。

「どこへ向かう?」クロムが低く唸る。肩の傷から血が滲み、戦闘支援AIが損傷の程度を警告していた。

「セーフハウスよ。まずは傷を手当てしないと」

ナオミがバイクを加速させる。だが、その時——背後の空気が震えた。

「——来たわね」

赤いホログラムの警告が義眼に浮かぶ。

《追跡者確認》
《シンギュラ・コーポ武装ドローン部隊》

夜空を裂くように、三機の高速ドローンが彼らを追っていた。

「ちっ……シンギュラの追っ手か」クロムが拳銃を抜く。「どうする?」

ナオミは片手でバイクを操作しながら、脳内に組み込まれたネットワークインターフェースを起動する。

——ハッキング開始。

「五秒で墜とす」

義眼が光を放ち、彼女の脳内スクリーンにドローンの制御システムが映し出された。防壁を突破し、強制シャットダウンのコードを流し込む。

「——あと三秒……二秒……」

だが、ドローンが予想以上の速度で距離を詰めてくる。

「間に合わない!」クロムが警告を叫ぶ。

次の瞬間、ドローンが銃口を向けた。

——銃撃。

ナオミのエアバイクのエンジンが一瞬スパークし、機体が揺れる。

「っ……クソッ!」

彼女はすぐにシステムを修復し、回避行動を取る。

「クロム、撃て!」

クロムは即座に銃を構え、最も近いドローンの中央に照準を合わせる。

——パンッ!

一発の弾丸がドローンのセンサーに命中し、機体が制御を失ってスラム街へと墜落した。

「残り二機!」

ナオミは再びハッキングを試みる。

《……進行率:89%》

「……捕まえた」

次の瞬間、ドローンのシステムが完全に制圧される。

「——自滅モード起動。」

二機のドローンが突然機能を停止し、そのまま地上へと落下していった。

「ふぅ……」ナオミは息を吐いた。「これで撒いたわ」

「派手にやりすぎだ」クロムが呻く。「シンギュラが本気で追ってくるぞ」

ナオミはデータチップをポケットに押し込み、バイクをさらに加速させた。

「なら、もっと速く逃げるだけよ」

セーフハウス

エアバイクは、スラム街の片隅にある古びた倉庫に降り立った。

外観は廃墟のようだったが、内部は電子機器で溢れ、情報収集用のコンソールや武器のラックが並んでいた。

「座って」

ナオミはクロムを椅子に座らせ、医療キットを取り出した。

「企業の弾丸はナノトラッカーが仕込まれてるかもしれない」

「なら、さっさと抜いてくれ」

ナオミは慎重にクロムの傷口を調べ、ピンセットで弾丸の破片を取り出す。

「……大丈夫そうね。感染の兆候はなし」

消毒剤を吹きかけ、人工皮膚のパッチを貼る。クロムは痛みに眉をひそめたが、文句は言わなかった。

「さて、問題はこっちね」

ナオミはデータチップをテーブルに置き、端末に接続する。

——プロジェクト・ルシファー。

「……こいつが何なのか、ハッキリさせましょう」

データが開かれ、ナオミの義眼に映し出される。

「……これは……」

彼女の目が驚きに見開かれた。

——人間の意識データ化計画。

企業が開発していたのは、完全義体化を超えた技術だった。

人間の脳をデータ化し、サーバー内に保存する。肉体は不要になり、意識はデジタル空間で永遠に生き続ける。

「……企業は、人間をデータとして売買するつもりなの?」

ナオミの声が震えた。

「そんなことが……」クロムも愕然とする。「本当に可能なのか?」

「少なくとも、彼らは本気でやろうとしている……」

ナオミは拳を握り締めた。

「これを止めなきゃ……」

新たな脅威

ナオミが深く息をついたその時、セーフハウスの警告アラームが鳴り響いた。

《外部アクセス検知》
《侵入者接近》

「……チッ、やっぱり追ってきたか」クロムが銃を手にする。

ナオミは素早くモニターを確認する。

「……待って。これは……」

スクリーンには、黒い戦闘スーツを纏った謎の部隊が映し出されていた。

「……シンギュラの特殊部隊?」

だが、その中心に立つ人物を見た瞬間、ナオミの表情が凍りついた。

「……ゼロ……?」

かつての仲間——ゼロが、完全武装の状態で彼女たちを追っていた。

だが、彼の目は以前とは違っていた。

——無機質な、冷たい光を放っていた。

クロムが歯を食いしばる。「……まさか、義体を乗っ取られたのか?」

ナオミの拳が震える。

「……いいえ、もっと最悪なことが起こったのよ」

ゼロはゆっくりと銃を構え、冷たい声を発した。

「……データを返せ。さもなくば、殺す」

——かつての仲間が、企業の兵器になってしまった。

ネオンが瞬き、銃撃戦の火蓋が切って落とされる——。
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