【スキルコレクター】は異世界で平穏な日々を求める

シロ

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一章 始まりの街

7 仮面の力

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 大通りで一人、オレは立ち竦んでいた。
 少女が先程までいた場所を、見つめている。手には少女に無理やりつけられた仮面が握られている。

 先程の少女の言葉が、オレの頭の中を支配していた。運命神とは何だ?弄ばれた人生?それにアイツ・・・もだと?あの少女は一体誰だったんだ?
 ぐるぐると答えの出ない疑問が頭の中で回り続ける。手掛かりがなく、手詰まりの状態になっている。

 少女につけられた仮面に目を向ける。
 黒塗りの仮面は、一色で塗りつぶされ視界のための穴すらない。
 不意に、『解析眼』が仮面に対し発動した。

名称:神隠れの面
効果:絶対遮断 不壊
製作者:unknown
解説:全ての物を遮断する事ができる。神の瞳すらも、この仮面を見通す事はできない。

 性能は一級品、いやそれすら上回るほどの逸品だろう。何故これほどの物を少女はオレに渡したのか。
 謎は深まるばかりだが、少女が言った「運命神に逆らってみよ」という言葉。それが頭にこびり付いて離れない。

 手にした仮面をストレージへ入れようとしたが、どうもそういう気分にはならない。
 仮面を付けてみると、驚く事に視界は確保されていた。目の部分を触ってみても返ってくるのは仮面の感触だ。
 もうこれ以上驚く事はない。一先ずこの仮面をつけていたら不審者でしかないので、少しずらし顔の横に付ける。

 辺りはもう暗くなっていた。冒険者ギルドは明日にする他ない。
 お腹も空いたので、『木枯らし亭』へ足早に向かう。





◇◆◇◆◇





「おかえりなさいエノクさん!おや、お面をお買いになったんですか?」
「ええ、ちょと縁がありまして」
「へぇ、そのお面不思議ですね」

 受付の少女が仮面について聞いてくる。
 確かにこの仮面は黒一色で目の穴すらない。見方によれば不気味とも取れるだろう。
 オレは曖昧に笑って誤魔化し、席に着いた。

 運ばれてきた料理はやはり美味しかった。今日狩った一角兎の肉を用いて焼いた香草包みだ。
 パリパリの皮に、鼻を抜ける独特な風味の香草が良いアクセントになっている。今日はコンソメスープのような物も混じっていた。優しい味付けでこれまた美味しい。

 食べ終わると、皿を回収しに来た少女に先日聞けなかったことを聞いた。

「昨日は聞けませんでしたが、体を洗うのは何処ですればいいんですか?」
「ああ、それなら宿の裏にある井戸水を使ってください」

 流石に昨日はまだしも、今日はモンスターと沢山と戦ってきたので汗もかいている。このまま寝るには少し嫌だろう。
 それにしてもやはり風呂はなかったか。仕方が無いので井戸水の行水で済ませる他ない。
 部屋へ戻ると、手早く装備を外しシャツに着替える。

 そのまま宿の裏へ回ると、井戸がある。鶴瓶を奥へ垂らして、近くに置いたあった桶に水を貯めていく。
 一度仮面を外し服を脱ぐ。布をストレージから取り出すと桶に張った水に漬け、濡れた布で体を擦った。

「くぅ……寒い」

 夜の冷えた空気は、身に沁みて寒い。水を温めるためにも火魔法は至急獲得すべきだろう。
 何度かそれを繰り返し、最後に昨日買った石鹸で頭を洗うと水を流す。予備の服に着替えると、余った水で以前着ていた服をついでに洗濯する。
 衣服用の洗剤は無かったので、水洗いだ。ついでに買った洗濯板らしき物でよく洗う。
 最後に端の方にあった水を捨てる場所に流しておしまいだ。

 部屋に戻ると、ベッドに寝そべって今日一日を振り返る。
 戦闘は何ら問題なかった。慢心は駄目だろうが、この調子で狩っていけば危険はないはずだ。
 問題は先程の少女、あの少女は一体何者だったのか結局分からず終いだ。

 先程外していた仮面を取り出す。手で弄ってみるが、よく分からない。材質は木でも金属でもない不思議な感触だ。
 頭も疲れてきたので、今日はもう寝る事にする。

 カザドに言われていた通りに武器を簡単な手入れだけすると、早々に床に入る。

 仮面を枕の隣に置き、蝋燭の火を消すとオレは深い眠りについた。





 朝早くに目が覚める。着替えると宿の裏へ行き、水を貯めて顔を洗った。
 食堂兼酒場の席へ行くと、ちらほらと朝食を食べている人物が目に付く。オレも同様に朝食を頼んだ。

「お待たせしました!」

 朝から元気溌剌とした少女が食事を運んできてくれた。

「ありがとうございます。すみませんがお昼のお弁当をお作りして頂くことは可能でしょうか?お代は払います」
「構いませんよ、家は冒険者が泊まることも多いですから!銅貨五枚です」

 オレは少女に銅貨を六枚・・渡した。

「あのこれって……」
「そういう物は何も言わずに受け取るものですよ」

 少女は目を輝かせ笑顔になる。どうやらチップは有効なようだ。
 こんな事なら門兵にチップを支払って置けばよかったと後悔する。そうすればあそこまで邪険にされることもなかっただろう。
 食事を終え、部屋に戻って装備を整える。

 下へ降りると、少女がバケットを詰めた草を編んだ籠を持っている。それを渡してきた。

「はいどうぞ!」
「ありがとうございます、では行ってきますね」
「行ってらっしゃい!」

 同年代ほどの少女に屈託もなく送り出されるのは良いモノだ。まあ、恋愛感情とは程遠いが。

 門に着くと門兵にギルドの証を見せる。顔の横に付けた仮面は奇異な目で見られたが、証を見せる際に早速チップとして銅貨をいくつか握らせてみた。
 すると昨日や一昨日よりも断然対応は良くなっていた。仮面についても何も触れて来ない。
 これくらい欲に忠実な方が扱い易いというモノだ。

 外に出ると、また昨日の草原を目指す。
 今日は昨日の分の精算も必要なので早く帰るつもりだ。さっさとモンスターを狩ってしまわねば。軽い足取りで草原へ向かう。





 今日の目標は、前回に引き続き魔法を放つゴブリンと遭遇する事と、加えてアーツを獲得する事だ。
 以前、カザドの店の奥で鎧を斬ったとき、《無我ノ極地》を発動させる事ができた。あの時、オレは深くまで集中していた。
 武器を持った状態で集中すると、頭の中にいくつか技の名が浮かび体がどう動けば良いか分かるのだ。これがアーツの発動条件なのではないかとオレは考える。

 今日はそれを実戦でも確かめるようにするのだ。勿論薬草の採取も忘れない。
 早速オレはファイ薬草へ向け『探知』を発動させると、活動を開始した。


【経験値を獲得】
【『拳術』Ⅰを獲得】
【『堅牢』Ⅰを獲得】
【短剣アーツ《ブロー》Ⅰを獲得】
【『罠察知』Ⅰを獲得】
【刀アーツ《居合斬り》Ⅰを獲得】
【『怪力』Ⅰを獲得】
【短剣アーツ《リバースティン》Ⅰを獲得】
【刀アーツ《朧孤月》】
【[剣士]Ⅰ→ⅡUP】
【レベル3→7UP!】





 オレは草原で身を低く屈め、コートのフードを被り様子を伺う。その視線の先には一体、孤立したゴブリンがいた。
 『神隠れの面』を付けると、ゴブリンの背後から忍び寄った。手の届く間合いに入ると、小太刀で心臓を一突きする。
 ゴブリンがこちらの存在に気付き声を上げようとすると同時に、残ったダガーで首をかき切った。青い血が飛び散る。
 ゴブリンから小太刀を引き抜くと、振り払って血を飛ばした。

【『暗殺』Ⅰを獲得】
【『不意討ち』Ⅰを獲得】

 あれからこの仮面を使っていてわかった事が一つある。
 この仮面の効果『絶対遮断』とは、つまるところ全てを遮断する事が出来る能力だった。
 殺気、気配、視線、体温、発せられる音、匂い、そんな曖昧なモノですら遮断出来てしまう。そしてその効果は、付けている者自身にも及ぶ。
 要するに全く気づかれる事なく行動する事が可能になる訳だ。

 先程のゴブリンを殺した際も、その効果を利用して倒す事が出来た。まあその分、物騒なスキルも獲得することが出来たが。
 何事も使い道だ、人の道を外さなければそれで良い。そう思いつつ、スキルレベルを最大まで上げていく。

 ちなみにだがこの仮面、全力で『絶対遮断』を発動させると透明人間になる事すら可能になる。本当は透明になっているわけではなく、存在が希薄になる上視線を逸らされてしまうのだが、見えなければ同じようなものだろう。これに『気配隠蔽』を併用すれば、気付く者は居まい。

 先程は不意討ちでゴブリンも仕留めたが、他にもちゃんと真正面から狩ってもいる。
 レベルも上がり、アーツも色々獲得できたし少しステータスを確認してみるのも良いだろうと思い、心の中で念じた。

《ステータス》

名前:エノク
年齢:15歳
種族:人族
職業:剣士Ⅱ
特殊職業:剣聖Ⅰ
称号:異世界からの転生者
LV7
HP750/750
MP700/700
STR90 VIT90 AGI80
INT70 DEX80 LUK70
アーツ NEW
片手剣:無我ノ極地Ⅹ
短剣:ブローⅩ リバースティンⅩ
刀:居合斬りⅩ 朧孤月Ⅹ
スキル
武術:剣術Ⅹ 短剣術Ⅹ 刀術Ⅹ 槍術Ⅹ 短槍術Ⅹ 弓術Ⅹ 杖術Ⅹ 盾術Ⅹ 拳術Ⅹ 二刀流(亜種)Ⅹ
便利:遠見Ⅹ 偽表情ポーカーフェイスⅩ 交渉Ⅹ 値切りⅩ 手入れⅩ 探知Ⅹ 採取Ⅹ
学術:ルーテリア王国語Ⅹ
補正:怪力Ⅹ 堅牢Ⅹ 疾走Ⅹ
技能:投擲Ⅹ 威圧Ⅹ 暗殺Ⅹ 不意討ちⅩ 敵察知Ⅹ 罠察知Ⅹ 気配隠蔽Ⅹ 急所感知Ⅹ
耐性:精神苦痛耐性Ⅹ 威圧耐性Ⅹ
ユニークスキル
解析眼 スキルコレクター
[SP∞]

 スキルが多くなり過ぎて、どうにか見易くならないか思っていたら頭を悩ませていたら、種別に分けて表示されるようになった。
 それにしても、ステータス画面は随分と豊かになったようだ。スキルの多さによって忘れそうになるが、相当ステータスも上がっている。
 STRやVITに至っては100に届きそうなほどだ。

 そして[剣士]のレベルについてだが、解析眼で詳しく解析するとモンスターを30体剣で倒す事でレベルが上がるらしい。その必要な数も、レベルが上がるごとに倍々になっていくようだ。剣と言っても、片手剣限定という訳でもなく短剣や大剣、刀なんかでも良いらしい。職業レベルが上がることにより、ステータスに掛かる補正が足されていく。
 しかし[剣聖]に至っては、剣で80体もの討伐。それも武器は片手剣限定という難易度だ。
 流石は特殊職業、一筋縄では行かない。

 ちなみにアーツについてだが、今回は普段装備になりつつあるダガーと刀だけを取得した。
 今後時間に余裕が出来れば、ゴブリンから奪い取った武器を使ってアーツを取得するのも吝かではない。

 今日もまた、望んでいた魔法を使うモンスターと遭遇エンカウントすることは無かった。念願の魔法は、まだまだ遠くなりそうだ。

 空を見上げると、日は傾いていたが沈んではいない。4時頃だろうか?昨日の精算分も合わせるので、今日はもう帰ろうと思う。
 余談だが、もらった昼飯はサンドイッチで美味しく頂かせてもらった。
 『疾走』を発動させ、オレはダルメアノの街を目指した。




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