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一章 始まりの街
8 精算
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街へ入ると、真っ先にギルドを目指す。鞄には戦利品を詰め込んで置いた。昨日の分と合わせ、ファイ薬草は57束、ゴブリン31体、一角兎6体と、今日は戦闘を多めに行った。
そのせいか、鞄にぎゅうぎゅうに押し込んでも入り切らなかったため、いくつかはストレージへと仕舞ってある。
一角兎は今回は出さない。ストレージ内はどうやら状態保存の効果があるらしい。入れたときと変わらぬまま出てくる。
一角兎は肉も売れるのだが、未だ血抜きはしていないので、今は必要ないと判断した。
両開きの木製の扉を開けると、空いたカウンターが目に入る。オレは迷い無くそこへ向かった。
そこには、以前登録時に対応してくれた金髪の受付嬢さんがにっこり微笑みかけてくる。
「お久しぶりですね、狩りの成果は如何ですか?」
「ほどほどですよ、ゴブリンとファイ薬草の買い取りをお願いします」
「ではテーブルへどうぞ」
そう言われ、目の前のカウンターの机を指される。
その指示に従い、鞄からどんどん取り出していった。ファイ薬草とゴブリンの耳で分けて出していく。止まる気配はなく、小さな小山ができ始める。10個ほど出したところで、受付嬢の顔が引き攣っていた。
全部出した頃には、結構な山になっていた。
「これは……今日取ってきたモノです…か?」
「いえ?昨日の分も入っていますよ」
受付嬢は、若干引いたような視線をオレへ向けてきた。
「魔石の買い取りは行いますか?」
「あ、はい。お願いします」
そういってまた小山のように魔石を出していく。受付嬢の顔が引き攣っていた。
「そ、それでは精算させていただきます」
「よろしくお願いします」
受付嬢は、一つ一つ手に取り検分を始める。しかし慣れたモノなのか、速度は早い。どんどん山が崩されていった。
ものの数分で、生産が終わる。
「まずはゴブリン31体分は銀貨三枚と大銅貨一枚となります。また10等級の魔石の買い取り価格ですが、一つ銅貨五枚となるので計銀貨一枚と大銅貨五枚、銅貨五枚となります」
まあまあの稼ぎになったな、明日は狩りにも慣れたことだし、もっと多く出来るかもしれない。他の狩場も調べておかねば。
そう考えていると、受付嬢が深いため息を吐いた。
「次にファイ薬草の買い取り価格ですが、全て非常に状態が良かったので一束大銅貨一枚となります。従って合計銀貨五枚と大銅貨七枚ですね」
「ブフッ!」
思わず吹いてしまった。気管に唾がはいり少しむせてしまう。
だがオレはそれどころでは無かった。
一束の買い取り価格がゴブリンと同等だと?お金を稼ぐなら圧倒的にファイ薬草の方が効率が良いじゃないか。スキルレベルマックス、恐るべし。
聞き間違いではないかと思い、もう一度聞き返す。
「ほ、本当に一束大銅貨一枚何ですか?」
「はい、どれも非常に状態が良かったですよ。何処かの薬師の元で習ったんですか?」
「いえ……」
これで誰にも習っていないと言えば怪しまれる。必死でオレは言い訳を考えた。
「育て親の祖母に習いました。祖母は薬に詳しくていろいろ教えてくれたので」
「それは腕の良い人だったのでしょうね」
幸いながら、受付嬢には信じ込ませることが出来たようだ。本当は居もしない祖母へ向けて感心している。
その様子に、少しだけ罪悪感が芽生えた。
受付嬢は机の下から小さな袋を取り出すと、オレに向けて置いた。その中からはジャラジャラと音がする。
「それでは報酬の金貨一枚と大銅貨三枚、銅貨五枚です。凄いですね、中級冒険者並みの稼ぎですよ!」
「それはどうも」
受付嬢は身を乗り出して讃えてきた。何やら背後から、ギルド内にちらほらといる冒険者から視線が飛んできた。
予想以上の報酬に自分でも戸惑っているが、ギルドからの視線にいたたまれなくなる。金貨を銀貨十枚に崩してもらい、報酬に包まれた袋を取ると足早にギルドを去る。
オレはギルドから帰る足で、カザドの店へ向かった。
三日に一度は顔を出せと言われたので、行かねばならないだろう。契約したのに行かないのは、不義理というモノだ。
カザドの店に着くと、扉を叩いて店へ入る。案の定、カザドはカウンターには居なかった。
「おーいカザド!来たぞー!」
「あ゙ん?誰だ――なんだエノクか」
「オレで悪かったな」
奥にいたカザドは、凄みのある剣幕で出てきたが相手がオレと分かると迫力を抑える。
「いやすまん、気にするな。今日は点検か?」
「ああ、頼めるか?」
「勿論だ」
オレは武器を腰から外すと、カザドへ明け渡す。
「少しそこで待ってろ」
そう言うと、答えを聞かずカザドは奥へまた消えていった。
残されたオレは、店内全体を見渡してみた。オレ以外何年も人が訪れていないような埃の被った店内、しかし武器は丁寧に一つ一つ整備されており、カザドがどれほど武器を大切にしているかが分かる。
10分ほどいくつか武器を見て回っていると、カザドが奥から戻ってきた。
「点検が終わったぞ、何も問題はねぇ。ちゃんと手入れも行ってるようだな、一流の鍛冶師と遜色が無かったぞ」
「高く評価されて光栄だな」
「嘘じゃねぇ、教えたばかりだっていうのに才能か?興味があるなら今度鍛冶を教えてやろうか?」
「それは楽しみだ、是非頼む」
カザドに今度鍛冶を習う予定を取り付ける事ができた。これは好ましい、この機会を逃すつもりはない。ありがたくご教授願おう。
それはそうと、ここに来た二つ目の目的を思い出した。
「そういえばカザド、借金をしている立場で悪いが数個武器がほしい」
「構いわしねえ、どんな武器だ?」
カザドは本当に借金など気に留めておらず、オレガ欲しがる武器に興味津々と行ったところだ。
欲しい武器の形状を口頭で伝える。
「針が欲しい、それも短剣サイズのものが。色は目立たない黒塗りで、スペアに5本ほど欲しい」
「そりゃまるで暗殺者みたいだな」
「潜むのが得意分野でな」
オレはそう言って笑みを見せた。
「頼めるか」
「ああ任せとけ、明日の狩りには間に合わせてやる」
「助かる、無理はするなよ」
カザドは笑って親指を突き立てた。これだけ元気なら大丈夫そうだ。
料金は銀貨三枚、安いモノだ。即金で支払う。
世間話をすると、時間もいい頃合いになったので宿へ帰った。
宿へ戻ると、部屋へ戻り装備を外して下へ降りる。料理を注文すると、席に一人着いた。
「ガハハハッ!今日は上手く行ったな!!」
「ああ!今日は大漁だ!!」
周囲を見渡すと、依頼が上手く行ったのか機嫌良く酔っている冒険者のパーティがいた。剣士らしき風貌の厳つい男が、横に大剣を立て掛け騒いでいる。
そう観察をしている打ちに料理が届いたので、冷めないうちに頂くとする。どうやら今日は、オークの薄切り焼き定食のようだ。定番のモンスターオーク、一度は会ってみたい。
まあ勿論、遭遇すれば倒すが。
「うるせぇな!人の迷惑を考えやがれ!!」
隣で何やら不穏な気配がするが、無視して料理を口に運ぶ。
口の中で、調味料とオークの肉がいいハーモニーを奏でている。少し味は薄いが、肉そのものの味が濃いため特に不満はない。
「んだと!?何だテメェ!!」
「おう!?やんのか!!」
先程の厳つい剣士と、体格の良い拳闘士のような人物が取っ組み合いの喧嘩を始めていた。両者とも、酒に酔っているのか顔が赤い。
そんあ事は気にせず、料理を堪能する。このオークの薄切り焼き定食に米が付けば最高だったのに。
そう思いながらフォークを進めていく。ちなみにこの世界ではフォークとナイフで食べるのが主流だ。
最も、野蛮な人物だったりしたら手掴みで食べるのも日常らしい。
「おら!喰らえ!!」
「はッ!効くかよ!オラあぁ!」
殴り合いの喧嘩が始まっている。両者とも、なまじ冒険者なだけに力があり、誰も介入しようとしない。
厳つい剣士が吹き飛ばされた。その方向は、絶賛オレへ向かっている。
慌てずにオレは、厳つい剣士を横へ叩き落とす。無論死なない程度には加減をした。レベルが上がってステータスが上昇した今なら、それほどの事は容易い。
そして取っ組み合いをしていた二人へ向け、『威圧』を発動させる。流石に手加減はして、Ⅴほどまで抑えた。
「煩い」
食事タイムを邪魔されたのに気が立ったのか、自分でも分からなかったが、いつの間にか口調が厳しくなっていた。
シンッっと店の中が静寂に支配される。威圧を当てられた拳闘士の男は腰を抜かして座っていた。厳つい剣士の男は、足元で床に叩きつけられた衝撃で気絶している。
オレは残った料理をかき込むと、部屋へ戻った。下の階からは何時もの活気が消え、静まり返っている。
「少しやり過ぎたか……」
一人反省しながら呟いた。
本当ならこのまま宿の裏で行水を行いたいが、行ける雰囲気でもない。仕方なく明日の朝へ持ち越しし、オレは蝋燭の光を消して就寝した。
朝早く目覚めたオレは、宿の裏へ回ると行水をして顔を洗った。早く風呂が欲しいと思う今日この頃である。
宿へ入ると、視線がいくつか飛んできた。やはり先日の騒ぎが効いているのだろう。
それらをなるべく気にしないようにして、朝食を頼んだ。
暫くすると朝食をあの少女が運んで来た。
「エノクさん、強かったんですね!昨夜の二人、どっちもDランク冒険者だったんですよ!」
「いや、それ程じゃないよ」
「また謙遜して」
昨夜の事を掘り返されながらも食事を受け取ると、素早く食べ終える。少女にチップと代金を渡して昼食分を支払うと、部屋で装備を整えた。
今日は狩りに行く前にカザドの鍛冶屋と冒険者ギルドに寄るつもりだ。
カザドから先日頼んだ武器を受け取り、冒険者ギルドでは新しい依頼や狩場を見繕うためだ。
草原でも良いのだが、何分物足りなくなってきた。相手とのステータス差は何十と離れている。
現在、オレは上昇したステータスの効果により身体能力がとてつもないことになっている。先日の一件でも分かるとおり、力は片手で身の丈ほどもある大岩を持ち上げることができる。素早さに至っては、全力で動けば自分の意識が追いつかなくなるほどだ。
早く感覚を慣れさせることも重要だろう。
「さて、行くか」
昼食を受け取ると、オレは宿から出発した。
◇◆◇◆◇
「おう、来たか!」
鍛冶屋へ行くと、カザドが店のカウンターで待ち侘びていた。
机からいくつか注文の品を取り出す。
30センチほどの細長い黒針、両端は鋭く尖っている。それらが計五本、専用と思われるベルトに入れられてる。
「頼まれてたヤツだ。黒曜岩って硬い岩を削ったから、耐久性は保証するぜ。ベルトはオマケだな」
「何から何まで悪いな」
「良いってことよ!それより早く名を挙げて、俺も有名にしてくれや」
そう言ってカザドは笑い掛けてくる。現金な性格だが、それに応えたいと思ってしまうのは彼の人柄の良さからだろうか?
手早くベルトを付けると、カザドの店を後にする。
「分かった、期待に添えるよう努力しよう」
「頑張って来いよ!」
冒険者ギルドに着くと、そこは人でごった返していた。
朝張り出される依頼をいち早く取ろうと、多くの人が集まっている。割のいい仕事を取られたら食う物にも困ってしまうのだ。必死にもなるだろう。
その必死さ故か、怒声も多く飛び交っている。
オレはその人混みを避けつつ奥へと向かう。依頼を探すつもりだったが、あの量の人を見てその気も失せた。
ギルドの奥へつくと、一つの扉がある。それをオレは迷い無く開けた。
中を覗くと、そこには多くの本が並んでいた。
冊子に書かれてあった通りだ。ギルドの奥の部屋には、周辺地理や生息するモンスターについての本が置かれている。
とはいえ、この世界の紙は貴重らしい。汚したり傷付けたりした場合は具合にもよるが銀貨五枚ほどの弁償が必要になるそうだ。
オレはいくつか本を手に取ると、近くに用意されている椅子に座り、情報収集に勤しんだ。
地図については、国が規制しているためそこまで詳しく書かれていない。軍事利用されないためだ。やはりこの世界は戦争も絶えないらしい。
その影響で、地図を確認したが本当に大雑把なモノしか描かれていなかった。いつも行っている草原は東に、魔物が生息する森が西に。北へは迷宮都市と呼ばれる街が、南は港町があるらしい。
これならMAPを確認したほうが早い。
そう判断したオレは、モンスターの情報収集に専念する。今日行く森には、草原には居ないウルフ系のモンスターや植物系のモンスターが生息しているようだ。
そして何より、それらのモンスターから剥ぎ取れる素材はゴブリンや一角兎に比べ価値が高い。
その分、モンスターは強くなるがオレにしてみれば誤差に過ぎない。依頼に無くとも、モンスターの買い取りを行ってもらうことは出来る。剥ぎ取る部位などを確認して、オレは冒険者ギルドを後にした。
目指すは西の森、街の西へ行くと職人街特有の臭いが鼻を突く。朝早くから鉄を打つような金槌の音も聞こえてきた。
それらを楽しみながら西門へ向かう。
何時もとは違う門兵にギルドの証を見せ、街の外へ出る。その際にチップを渡すことも忘れない。
すると笑顔で対応してくれた。この世界の人間はチップに弱いらしい。だが、それは人を見極める必要があるから注意は必要だろう。
そういう事を考えながら、オレは西の森へ向け走り出した。
そのせいか、鞄にぎゅうぎゅうに押し込んでも入り切らなかったため、いくつかはストレージへと仕舞ってある。
一角兎は今回は出さない。ストレージ内はどうやら状態保存の効果があるらしい。入れたときと変わらぬまま出てくる。
一角兎は肉も売れるのだが、未だ血抜きはしていないので、今は必要ないと判断した。
両開きの木製の扉を開けると、空いたカウンターが目に入る。オレは迷い無くそこへ向かった。
そこには、以前登録時に対応してくれた金髪の受付嬢さんがにっこり微笑みかけてくる。
「お久しぶりですね、狩りの成果は如何ですか?」
「ほどほどですよ、ゴブリンとファイ薬草の買い取りをお願いします」
「ではテーブルへどうぞ」
そう言われ、目の前のカウンターの机を指される。
その指示に従い、鞄からどんどん取り出していった。ファイ薬草とゴブリンの耳で分けて出していく。止まる気配はなく、小さな小山ができ始める。10個ほど出したところで、受付嬢の顔が引き攣っていた。
全部出した頃には、結構な山になっていた。
「これは……今日取ってきたモノです…か?」
「いえ?昨日の分も入っていますよ」
受付嬢は、若干引いたような視線をオレへ向けてきた。
「魔石の買い取りは行いますか?」
「あ、はい。お願いします」
そういってまた小山のように魔石を出していく。受付嬢の顔が引き攣っていた。
「そ、それでは精算させていただきます」
「よろしくお願いします」
受付嬢は、一つ一つ手に取り検分を始める。しかし慣れたモノなのか、速度は早い。どんどん山が崩されていった。
ものの数分で、生産が終わる。
「まずはゴブリン31体分は銀貨三枚と大銅貨一枚となります。また10等級の魔石の買い取り価格ですが、一つ銅貨五枚となるので計銀貨一枚と大銅貨五枚、銅貨五枚となります」
まあまあの稼ぎになったな、明日は狩りにも慣れたことだし、もっと多く出来るかもしれない。他の狩場も調べておかねば。
そう考えていると、受付嬢が深いため息を吐いた。
「次にファイ薬草の買い取り価格ですが、全て非常に状態が良かったので一束大銅貨一枚となります。従って合計銀貨五枚と大銅貨七枚ですね」
「ブフッ!」
思わず吹いてしまった。気管に唾がはいり少しむせてしまう。
だがオレはそれどころでは無かった。
一束の買い取り価格がゴブリンと同等だと?お金を稼ぐなら圧倒的にファイ薬草の方が効率が良いじゃないか。スキルレベルマックス、恐るべし。
聞き間違いではないかと思い、もう一度聞き返す。
「ほ、本当に一束大銅貨一枚何ですか?」
「はい、どれも非常に状態が良かったですよ。何処かの薬師の元で習ったんですか?」
「いえ……」
これで誰にも習っていないと言えば怪しまれる。必死でオレは言い訳を考えた。
「育て親の祖母に習いました。祖母は薬に詳しくていろいろ教えてくれたので」
「それは腕の良い人だったのでしょうね」
幸いながら、受付嬢には信じ込ませることが出来たようだ。本当は居もしない祖母へ向けて感心している。
その様子に、少しだけ罪悪感が芽生えた。
受付嬢は机の下から小さな袋を取り出すと、オレに向けて置いた。その中からはジャラジャラと音がする。
「それでは報酬の金貨一枚と大銅貨三枚、銅貨五枚です。凄いですね、中級冒険者並みの稼ぎですよ!」
「それはどうも」
受付嬢は身を乗り出して讃えてきた。何やら背後から、ギルド内にちらほらといる冒険者から視線が飛んできた。
予想以上の報酬に自分でも戸惑っているが、ギルドからの視線にいたたまれなくなる。金貨を銀貨十枚に崩してもらい、報酬に包まれた袋を取ると足早にギルドを去る。
オレはギルドから帰る足で、カザドの店へ向かった。
三日に一度は顔を出せと言われたので、行かねばならないだろう。契約したのに行かないのは、不義理というモノだ。
カザドの店に着くと、扉を叩いて店へ入る。案の定、カザドはカウンターには居なかった。
「おーいカザド!来たぞー!」
「あ゙ん?誰だ――なんだエノクか」
「オレで悪かったな」
奥にいたカザドは、凄みのある剣幕で出てきたが相手がオレと分かると迫力を抑える。
「いやすまん、気にするな。今日は点検か?」
「ああ、頼めるか?」
「勿論だ」
オレは武器を腰から外すと、カザドへ明け渡す。
「少しそこで待ってろ」
そう言うと、答えを聞かずカザドは奥へまた消えていった。
残されたオレは、店内全体を見渡してみた。オレ以外何年も人が訪れていないような埃の被った店内、しかし武器は丁寧に一つ一つ整備されており、カザドがどれほど武器を大切にしているかが分かる。
10分ほどいくつか武器を見て回っていると、カザドが奥から戻ってきた。
「点検が終わったぞ、何も問題はねぇ。ちゃんと手入れも行ってるようだな、一流の鍛冶師と遜色が無かったぞ」
「高く評価されて光栄だな」
「嘘じゃねぇ、教えたばかりだっていうのに才能か?興味があるなら今度鍛冶を教えてやろうか?」
「それは楽しみだ、是非頼む」
カザドに今度鍛冶を習う予定を取り付ける事ができた。これは好ましい、この機会を逃すつもりはない。ありがたくご教授願おう。
それはそうと、ここに来た二つ目の目的を思い出した。
「そういえばカザド、借金をしている立場で悪いが数個武器がほしい」
「構いわしねえ、どんな武器だ?」
カザドは本当に借金など気に留めておらず、オレガ欲しがる武器に興味津々と行ったところだ。
欲しい武器の形状を口頭で伝える。
「針が欲しい、それも短剣サイズのものが。色は目立たない黒塗りで、スペアに5本ほど欲しい」
「そりゃまるで暗殺者みたいだな」
「潜むのが得意分野でな」
オレはそう言って笑みを見せた。
「頼めるか」
「ああ任せとけ、明日の狩りには間に合わせてやる」
「助かる、無理はするなよ」
カザドは笑って親指を突き立てた。これだけ元気なら大丈夫そうだ。
料金は銀貨三枚、安いモノだ。即金で支払う。
世間話をすると、時間もいい頃合いになったので宿へ帰った。
宿へ戻ると、部屋へ戻り装備を外して下へ降りる。料理を注文すると、席に一人着いた。
「ガハハハッ!今日は上手く行ったな!!」
「ああ!今日は大漁だ!!」
周囲を見渡すと、依頼が上手く行ったのか機嫌良く酔っている冒険者のパーティがいた。剣士らしき風貌の厳つい男が、横に大剣を立て掛け騒いでいる。
そう観察をしている打ちに料理が届いたので、冷めないうちに頂くとする。どうやら今日は、オークの薄切り焼き定食のようだ。定番のモンスターオーク、一度は会ってみたい。
まあ勿論、遭遇すれば倒すが。
「うるせぇな!人の迷惑を考えやがれ!!」
隣で何やら不穏な気配がするが、無視して料理を口に運ぶ。
口の中で、調味料とオークの肉がいいハーモニーを奏でている。少し味は薄いが、肉そのものの味が濃いため特に不満はない。
「んだと!?何だテメェ!!」
「おう!?やんのか!!」
先程の厳つい剣士と、体格の良い拳闘士のような人物が取っ組み合いの喧嘩を始めていた。両者とも、酒に酔っているのか顔が赤い。
そんあ事は気にせず、料理を堪能する。このオークの薄切り焼き定食に米が付けば最高だったのに。
そう思いながらフォークを進めていく。ちなみにこの世界ではフォークとナイフで食べるのが主流だ。
最も、野蛮な人物だったりしたら手掴みで食べるのも日常らしい。
「おら!喰らえ!!」
「はッ!効くかよ!オラあぁ!」
殴り合いの喧嘩が始まっている。両者とも、なまじ冒険者なだけに力があり、誰も介入しようとしない。
厳つい剣士が吹き飛ばされた。その方向は、絶賛オレへ向かっている。
慌てずにオレは、厳つい剣士を横へ叩き落とす。無論死なない程度には加減をした。レベルが上がってステータスが上昇した今なら、それほどの事は容易い。
そして取っ組み合いをしていた二人へ向け、『威圧』を発動させる。流石に手加減はして、Ⅴほどまで抑えた。
「煩い」
食事タイムを邪魔されたのに気が立ったのか、自分でも分からなかったが、いつの間にか口調が厳しくなっていた。
シンッっと店の中が静寂に支配される。威圧を当てられた拳闘士の男は腰を抜かして座っていた。厳つい剣士の男は、足元で床に叩きつけられた衝撃で気絶している。
オレは残った料理をかき込むと、部屋へ戻った。下の階からは何時もの活気が消え、静まり返っている。
「少しやり過ぎたか……」
一人反省しながら呟いた。
本当ならこのまま宿の裏で行水を行いたいが、行ける雰囲気でもない。仕方なく明日の朝へ持ち越しし、オレは蝋燭の光を消して就寝した。
朝早く目覚めたオレは、宿の裏へ回ると行水をして顔を洗った。早く風呂が欲しいと思う今日この頃である。
宿へ入ると、視線がいくつか飛んできた。やはり先日の騒ぎが効いているのだろう。
それらをなるべく気にしないようにして、朝食を頼んだ。
暫くすると朝食をあの少女が運んで来た。
「エノクさん、強かったんですね!昨夜の二人、どっちもDランク冒険者だったんですよ!」
「いや、それ程じゃないよ」
「また謙遜して」
昨夜の事を掘り返されながらも食事を受け取ると、素早く食べ終える。少女にチップと代金を渡して昼食分を支払うと、部屋で装備を整えた。
今日は狩りに行く前にカザドの鍛冶屋と冒険者ギルドに寄るつもりだ。
カザドから先日頼んだ武器を受け取り、冒険者ギルドでは新しい依頼や狩場を見繕うためだ。
草原でも良いのだが、何分物足りなくなってきた。相手とのステータス差は何十と離れている。
現在、オレは上昇したステータスの効果により身体能力がとてつもないことになっている。先日の一件でも分かるとおり、力は片手で身の丈ほどもある大岩を持ち上げることができる。素早さに至っては、全力で動けば自分の意識が追いつかなくなるほどだ。
早く感覚を慣れさせることも重要だろう。
「さて、行くか」
昼食を受け取ると、オレは宿から出発した。
◇◆◇◆◇
「おう、来たか!」
鍛冶屋へ行くと、カザドが店のカウンターで待ち侘びていた。
机からいくつか注文の品を取り出す。
30センチほどの細長い黒針、両端は鋭く尖っている。それらが計五本、専用と思われるベルトに入れられてる。
「頼まれてたヤツだ。黒曜岩って硬い岩を削ったから、耐久性は保証するぜ。ベルトはオマケだな」
「何から何まで悪いな」
「良いってことよ!それより早く名を挙げて、俺も有名にしてくれや」
そう言ってカザドは笑い掛けてくる。現金な性格だが、それに応えたいと思ってしまうのは彼の人柄の良さからだろうか?
手早くベルトを付けると、カザドの店を後にする。
「分かった、期待に添えるよう努力しよう」
「頑張って来いよ!」
冒険者ギルドに着くと、そこは人でごった返していた。
朝張り出される依頼をいち早く取ろうと、多くの人が集まっている。割のいい仕事を取られたら食う物にも困ってしまうのだ。必死にもなるだろう。
その必死さ故か、怒声も多く飛び交っている。
オレはその人混みを避けつつ奥へと向かう。依頼を探すつもりだったが、あの量の人を見てその気も失せた。
ギルドの奥へつくと、一つの扉がある。それをオレは迷い無く開けた。
中を覗くと、そこには多くの本が並んでいた。
冊子に書かれてあった通りだ。ギルドの奥の部屋には、周辺地理や生息するモンスターについての本が置かれている。
とはいえ、この世界の紙は貴重らしい。汚したり傷付けたりした場合は具合にもよるが銀貨五枚ほどの弁償が必要になるそうだ。
オレはいくつか本を手に取ると、近くに用意されている椅子に座り、情報収集に勤しんだ。
地図については、国が規制しているためそこまで詳しく書かれていない。軍事利用されないためだ。やはりこの世界は戦争も絶えないらしい。
その影響で、地図を確認したが本当に大雑把なモノしか描かれていなかった。いつも行っている草原は東に、魔物が生息する森が西に。北へは迷宮都市と呼ばれる街が、南は港町があるらしい。
これならMAPを確認したほうが早い。
そう判断したオレは、モンスターの情報収集に専念する。今日行く森には、草原には居ないウルフ系のモンスターや植物系のモンスターが生息しているようだ。
そして何より、それらのモンスターから剥ぎ取れる素材はゴブリンや一角兎に比べ価値が高い。
その分、モンスターは強くなるがオレにしてみれば誤差に過ぎない。依頼に無くとも、モンスターの買い取りを行ってもらうことは出来る。剥ぎ取る部位などを確認して、オレは冒険者ギルドを後にした。
目指すは西の森、街の西へ行くと職人街特有の臭いが鼻を突く。朝早くから鉄を打つような金槌の音も聞こえてきた。
それらを楽しみながら西門へ向かう。
何時もとは違う門兵にギルドの証を見せ、街の外へ出る。その際にチップを渡すことも忘れない。
すると笑顔で対応してくれた。この世界の人間はチップに弱いらしい。だが、それは人を見極める必要があるから注意は必要だろう。
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夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
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「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。
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