【スキルコレクター】は異世界で平穏な日々を求める

シロ

文字の大きさ
26 / 36
一章 始まりの街

26 ボス戦開始:Ⅱ

しおりを挟む
 補正系スキルをすべて発動させ、その上『思考加速』と『集中』を上乗せしてグレドーナへと立ち向かう。

 現状、グレドーナに理性が無いのは『狂戦化バーサーク』による効果だろう。そのスキルを詳しく解析すると、理性と引き換えにステータスが向上すると書かれていた。

 強制的に行われているのは、運命神がやっているのだろうか?

 INTの値を見る限り、相当な向上バフが掛かっているに違いない。
 その分理性が無くなり、戦略ではオレの方が勝ってはいるが、純粋な力勝負に持ち込まれれば、相当こちらは分が悪いだろう。

 グレドーナは素早くこちらとの距離を詰めて来る。
 ダメ元で麻痺毒の付いた毒針を放つが、モノともせずにこちらへと突っ込んで来た。背後には壁がある。

 左の二本の腕を振るう。
 どちらも『危機察知』が警告を出した。魔法で壁を作る隙もない。
 オレは武器での受け流しを選んだ。

 袈裟懸けに振り下ろされる腕へ向け、ダガーを下へと反らしながら二本の腕への隙間へ飛び込む。
 少しでも空間を増やすため、小太刀を上の腕へ向け押し当てる。

 ギャリギャリと、まるで硬い金属のような音を立てる毛皮に苛立ちを感じるが、不満は言っていられない。

【『受け流し』Ⅰを獲得】

 上体を反らし、何とかその隙間へと入り込み、抜け出すことに成功した。
 日本でいた頃では考えられないような芸当に、苦笑が漏れる。

 ゆっくりと、グレドーナは理性無き瞳でこちらを振り返る。口からは、涎が滴っていた。

 小太刀とダガーを受けた箇所は、薄皮一枚斬れ血が流れているが、直ぐさま時を巻き戻すかのようにその傷口は塞がった。

 これが『超回復』の力かと、一人考察する。

 『痛覚耐性』を持ているので、傷も気にせず攻撃してくるだろう。
 厄介な事だ。

「グラァアア!!」

 またしてもグレドーナは叫んだ。その声に、また『咆哮』を行ったのかと警戒すると、どうやら違うようだ。

 まるでゴルーダルと同じ、いやそれ以上の重圧が体にのしかかる。
 恐らく『重圧プレッシャー』を発動させたのだろう。それに『魔力感知』がグレドーナの体に魔力が纏っている事を知らせてくれる。

 『身体能力向上フィジカルアップ』も発動させたのだろう。これでより、奴の能力が向上した。

【解析完了】
【スペル『重圧プレッシャー』Ⅲ→ⅤUP!】

 こちらも対抗するように、身体能力向上系の魔法を使った。

「『我が奥底に眠りし力―今目覚めよ』“気纏法”『魔力よ―我が肉体を奮起させ―強き力を』“身体能力強化フィジカルアップ”『我を恐れよ―我に怯えよ―我が力は強大なり―跪け』“重圧プレッシャー”」

 一気に三つ発動させる。『重圧プレッシャー』は『威圧耐性』を持つグレドーナには、あまり効かないだろうが少しは阻害になるだろう。

 体に相当な負荷がかかるが、『HP回復速度上昇』があるため幾分かマシだ。

 グレドーナがまたしても愚直に突っ込んでくる。
 本来であれば隙だらけの筈だが、圧倒的な身体能力の前には意味を成さない。

「はッ!」

 オレは『神隠しの面』を発動させ、思いっ切り地面を踏み切ると、高く跳躍する。
 くるりと空中で向きを変えると、天井に脚を付け、今度はグレドーナへ向け跳躍する。

【『跳躍』Ⅰを獲得】

 グレドーナは急に視界から消えたオレに、反応出来ていなかったが、『危機察知』が感じ取ったのか、上を見上げる。

 オレはそれを好機と見て、グレドーナの両目へ武器を差し込んだ。

「ギャラアアアァァァ!」

 グレドーナの悲鳴が、すぐ耳元で発せられる。あまりの大声に耳を塞ぎたくなるが、今ここで武器を離すわけには行かない。

「うらぁああ!」

 オレも負けじと声を張り、奥深くまで差し込んだ。

 グレドーナの悲鳴がより一層大きいものとなる。
 オレの存在に気付き、体を暴れさせ、腕を振りかざしてきた。

 堪らずオレは距離を取る。
 耳からは血が出て、周囲の音が聞こえていない。どうやら鼓膜が破れたようだ。

「グルゥウウウ……」

 唸り声を上げるグレドーナ。自身の両目に差し込まれた武器を、何とか取り出そうとするが、オレはそうはさせまいと針を飛ばす。

 しかし、頑丈な毛皮に阻まれ、どうすることも出来なかった。
 グレドーナは自身の目を抉るかのように、差し込まれた武器を取り出した。

 グレドーナの足下へ音を響かせながら武器が落ちた。
 黒いダガーと半ばポッキリと折れた白い小太刀が。どうやら小太刀はダガーよりも長く、完全には取り出せなかったようだ。

 両目の傷が徐々に治っていくが、右目にある残った小太刀の残骸がそれを阻んでいた。
 右目からは血が滴っている。

 片目だけでも潰せただけマシだが、どうやら完全に怒らせてしまったようだ。

「グルゥウラァアアアアア!!!」

 今までで一番大きな『咆哮』が、グレドーナの口から放たれる。
 大気を揺らし、地震にように部屋を震わせた。

 鼓膜が破れたオレの耳に、三半規管へ直接のダメージが行く。

【『咆哮耐性』Ⅰを獲得】

 どうやらギリギリ『咆哮』による硬直は防げたものの、グレドーナは怒り狂っている。

 金色と朱色、白色のオーラを身に纏い、筋肉も膨張をしていた。

「『気纏法』と『闘気』、それに『豪腕』か……」

 忌々しげに、オレはそう呟く。
 スキルにより、身体能力が目に見えて向上していた。

 熊の野生の勘からか、オレの方へ全力で駆けてくる。
 急な行動に、『危機察知』が反応をするがオレは反応をする事が出来ず、その振りかざした腕を胴に食らった。

「かはッ……!」

 壁まで吹き飛ばされる。
 口から血が溢れ、HPは半分以上減っていた。

 『痛覚耐性』のお陰で、痛みは感じないが、確実に命に関わりそうな攻撃に冷や汗が流れる。
 中級体力回復薬(特殊)を数本取り出し、患部へ掛け、口へと含む。

 幾分か回復もされ、『HP回復速度上昇』も相まって再生されていく。
 その過程で鼓膜も治った。

 外傷はそれほどでもない。しっかりと防具が守ってくれたようだ。
 後でアルバートには感謝せねば。

 そう心で思う。

「グルゥウウウ……」

 オレを殴り飛ばし、それでも飽き足りないグレドーナは、未だこちらを睨み付けている。

 こちらも全力で向かわねば死ぬな。

 そう判断したオレは、ストレージから黒炎雷斧槍ブラックサンダレーメを取り出し構えた。

「さあ、来い!」

 オレの顔には笑みが浮かんでいた。





【解析完了】
【『闘気』Ⅳを獲得】
【『豪腕』Ⅳを獲得】
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

毒舌アイドルは毒の魔物に転生する。

馳 影輝
ファンタジー
毒舌を売りにして芸能界で活躍できる様になった。 元々はアイドルとしてデビューしたが、ヒラヒラの衣装や可愛い仕草も得意じゃ無かった。 バラエティーの仕事を貰って、毒舌でキャラを作ったらこれがハマり役で世間からのウケも良くとんとん拍子で有名人になれた。 だが、自宅に帰ると玄関に見知らぬ男性が立っていて私に近づくと静かにナイフで私を刺した。 アイドル時代のファンかも知れない。 突然の事で、怖くて動けない私は何度も刺されて意識を失った。 主人公の時田香澄は殺されてしまう。 気がつくとダンジョンの最下層にポイズンキラーとい魔物に転生する。 自分の現象を知りショックを受けるが、その部屋の主であるリトラの助言により地上を目指す。 ダンジョンの中で進化を繰り返して強くなり、人間の冒険者達が襲われている所に出くわす。 魔物でありながら、擬態を使って人間としても生きる姿や魔王種への進化を試みたり、数え切れないほどの激動の魔物人生が始まる。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

処理中です...