【スキルコレクター】は異世界で平穏な日々を求める

シロ

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一章 始まりの街

29 戦闘終了・報酬

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「うッ……」

 目が覚めると、オレは迷宮の床に這いつくばっていた。

 どうやら、また死んであの場所へ逆戻りになっている事は無さそうなので安心した。
 辺りを見渡すと、部屋は依然として凍っていたが、グレドーナの死体はなくドロップアイテムとお金だけ残し、姿を消していた。

 だが、その隣に不可解なモノがある。
 ゴテゴテ、見るからに良いモノが入っていそうな宝箱があった。

 ログを確認してみると、どうやら試練の報酬のようだ。もう一つの『望む情報の開示』と書かれている方も気になるが、まずは置いておこう。

 レベル30到達報酬、一先ずお預けだ。

 自身の傷を見ると、一通り全回復していた。防具はボロボロだが、修理をすれば問題無いだろう。

――しかし

 そう思ってある場所を見る。
 そこには、オレが今まで使われていた小太刀とダガーが落ちていた。

 小太刀はグレドーナに半ばから折られ、ダガーも損傷が激しく修理も難しいだろう。
 オレはそれらへ近付くと、拾い上げた。

「――今までありがとう」

 そっとそう言うと、ストレージへと収納する。今までこの武器に助けられてきた。

 最後まで武器として、その仕事を全うしてくれたのだ。後で何か、これを利用したモノをカザドに作って貰おうと、そう思った。

 そのまま黒炎雷斧槍ブラックサンダレーメを拾い上げると、ストレージには収納せず装備した。
 周囲にモンスターはいないとはいえ、不測の事態が起こらないとは限らない。

 最低限、自衛はちゃんとしておくべきだ。

 そして、最後の問題であるモノへオレは目を向けた。

 そこには、グレドーナのドロップアイテムである『灼熱の牙』と『あかく燃え盛る毛皮』、ステータス上昇効果のあるアクセサリの『朱玉の指輪』。
 お金は白金貨四十枚と、頭がおかしくなるような大金。

 そして何より、あの無駄に装飾の豪華な宝箱、そして視界に先程から主張してくる『質問欄』と書かれたウィンドウ。

 恐らくここに質問を書き込めば、それに関する情報が開示されるのだろう。

 先にこの宝箱を開けることにした。
 宝箱に手を掛け、中の物に期待をしながら開く。

――ガチャッ!

 だが、それは叶う事なく抵抗に阻まれた。

「鍵付きかよ……」

 その言葉には、恨めしさが帯びていた。
 仕方なく、メニューのショップからピッキングツールを購入し、試行錯誤しながら解錠を行う。

【『解錠』Ⅰを獲得】

 約十分ほどで宝箱は開いた。中には、蒼色と紅色の二振りの短刀と、黒い鉱石の塊が収まっていた。
 一先ず解析を行う。

『蒼碧之断刀』
神によって作られた神刀。蒼き水の力を宿した強力な刀。扱う者の力次第で全てを切り裂く。
効果:STR+225 VIT+50 AGI+195 INT+40 DEX+120 魔纏切断 蒼き水流

『紅赫之貫刀』
神によって作られた神刀。赤き炎の力を宿した強力な刀。扱う者の力次第で全てを貫く。
効果:STR+195 VIT+60 AGI+200 INT+120 DEX+55 魔纏貫通 紅き赫槍

『アダマンタイト塊』
アダマンタイトの塊。非常に重く、そして頑丈な金属。魔力も通りが良く、ミスリルと並び立つほど。伝説級の金属。

「うわぁ……」

 引き気味な声が出るほど、見事なまでのチートと言うに限る。
 この二刀、蒼刀は切断に特化し、紅刀は貫通に特化している。どちらもその部類であれば、最高峰に位置する物だろう。

 これからのメインウェポンになりそうだ。

 そして、残るは『アダマンタイ塊』。伝説級の鉱石故に、出したくても出せない。
 カザドに頼んで武器に加工してもらうにも、オレはあまり重量武器は好まなんだ。

 全く持って、使い道が皆無と言える。この鉱石には可哀想だが、暫くはストレージの肥やしになってもらう他無いだろう。

 オレは、二つの短刀とこの『アダマンタイト塊』をストレージへと収納した。

 さて、これで残るは望む情報の開示と、レベル30到達報酬だ。だが、今は到達報酬は後回しでも良いだろう。情報を得る方が先決だ。

 オレとしては、これほどに危険な目に合わせた『運命神』とやらの情報を得たいのだが、そうすぐに決めていいものか。

 指先で黒面をなぞる。この面を渡してくれた、あの少女も運命神へ逆らってみせよなどと言っていた。

 それは試練をクリアする事なのだろうか?悶々と頭の中で疑問が交錯する。

 あの少女の言葉を思い出していく内、とある言葉を思い出した。

『お主が愛した人物もまた――』

 オレが愛した人物――悔やんでも悔みきれない別れをしてしまった彼女・・。オレが転生して、こちらの世界に来ているのだ。

 彼女・・は来れないという道理はない。もし、彼女・・が今この世界に――オリージネにいるとしたら?

 どんどん動悸が早くなり、呼吸も浅くなっている。それに反比例するように、思考は加速して行った。

 今もしモンスターに襲われているとしたら?今戦場で死にかけているとしたら?
 そんな不安が頭を過る。

 オレの中で、もう質問は決まっていた。この質問は、もしかしたら無駄になるかも知れない。それでもオレは構わなかった。

 前世であれほど後悔したんだ。今度こそ、今度こそは後悔の無いように生きる。
 オレはこの世界に降り立ったとき、そう決めたんだ。

 質問欄へと意識を集中させる。空中にキーボードのウィンドウが浮かび上がった。
 彼女・・の名前を打ち込んでいく。

 そして、決定を押すと同時に打ち込んだ文字へ願いを込めるように、オレはこう呟いた。

「彼女の、雪森月乃ゆきもりつきのの情報を開示してくれ……」

 彼女――雪森月乃が無事であるようにと。
 そして、情報が開示される。




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