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一章 始まりの街
33 旅立ち
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東の草原へ着くと、MAPで周囲に人がいない事を確認する。流石に今からやる事を見られるのは些か拙い。
どうやら居ないようなので、存分に魔法訓練を行う事にした。
先ず最初に覚えるべきは、『詠唱破棄』と『無詠唱』だろう。
『詠唱破棄』の獲得条件には、『詠唱を一部省略し魔法を完成させる』と書いてある。
『絶対凍土』のような高難易度のモノではなく、簡単なスペルで実験してみる事にした。
「『流れ行く水―敵を穿て』“水流弾”」
グレドーナとの戦いでも活躍してくれた凡庸性の高いスペル。それを空へ向けて放った。
詠唱とは、魔力を魔法に変換するための補助を行っている。詠唱を省略するということは、それだけ補助が減るという事だ。
『水流弾』は、通常より不安定ながらも空へと飛び、散っていった。
【スペル『水流弾』Ⅱ→ⅢUP!】
【『詠唱破棄』Ⅰを獲得】
獲得条件が緩和されている故か、魔法が不安定ながらも発動させた事でスキルを獲得出来た。
今度はスキルの補正も利用しつつ、魔法を発動させ反復練習を行う。何事も数を熟せば、身に付くものだ。
スペルや魔法スキルの上昇にも繋がるため、一石二鳥どころか一石三鳥といったところか。
魔力の動きを良く覚えながら、反復練習を繰り返し行っていく。
【『魔力感知』Ⅲ→ⅣUP!】
【『詠唱破棄』Ⅰ→ⅢUP!】
【スペル『水流弾』Ⅲ→ⅣUP!】
【『風魔法』Ⅲ→ⅣUP!】
【スペル『風刃撃』Ⅱ→ⅢUP!】
時折スペルを変えつつ、『詠唱破棄』の練習を行う。
周りの地形を荒らさないためにも、上へ打つことが多かったのだが、『水流弾』の水が掛かり濡れてしまったので今はコートを脱いでいる。
下には防具は修理に出してしまっているので、黒いインナーだけだ。
周囲にはそれほど強いモンスターもいない事だし、大丈夫だろう。
さて、『詠唱破棄』も中々に様になり、魔法の不安定さも無くなった。これで次のステップである『無詠唱』に進めるだろう。
『魔力操作』を『集中』を使って緻密に操る。一つ一つ丁寧に魔力を操っていき、手を翳すと『水流弾』を出現させた。
【『無詠唱』Ⅰを獲得】
「よしッ」
オレはそう言って小さくガッツポーズをとる。これで戦闘でより使い勝手が良くなった。
残るは『無詠唱』の練習と新たな魔法の習得を残すのみ。
オレは早速特訓を始めた。
とはいえ、『無詠唱』を獲得しているとて新たなスペルを行使する際は詠唱を唱えねばならない。
そうしなければ、不完全な状態での魔法を使い続け変な癖が付いてしまうからだ。
サクサクと新たな魔法やスペルを獲得して行く。
【『植物魔法』Ⅲ→ⅣUP!】
【スペル『植物成長』Ⅰを獲得】
【『雷魔法』Ⅰを獲得】
【スペル『放電』Ⅰを獲得】
【『光魔法』Ⅰを獲得】
【スペル『発光球』Ⅰを獲得】
【『無詠唱』Ⅰ→ⅡUP!】
・
・ ・
・ ・ ・
空を見上げれば、赤く染まり日は沈もうとしている。
今日で大分魔法を充実させる事ができた。スキルレベルは総じて低いが、数は充実したのではないだろうか?
明日も時間はある。着々と増やしていけば良いだろう。
オレは街へと戻った。
◇◆◇◆◇
そして、あれから約束の三日が過ぎる。あの後、草原で魔法の練習を行ったり、ギルドで情報を集めたりなどをした。
それと、知り合いにダルメアノを離れるに当たってお別れの挨拶をしたのだが、シルアーナとアルメナ、宿屋の少女には行かないでと言われた。
前の二人はともかく、宿屋の少女は確実にチップ目当てだろう。チップを知って以来、何かと渡していたので良い小遣いをくれる相手程度に思っていたのかもしれない。
まあ、何はともあれ、今日は防具と武器の受け取り日だ。現在、アルマシオンの応接間でアルバートが防具を持ってくるのを待っている。
心して待っていると、扉がガチャリと開いた。
「お待たせしました、エノク様」
そう言って詫びるアルバートの手には、一着のレザーアーマーがあった。
黒と深い赤色に彩られ、防御面積も『黒狼のレザーアーマー』の時より広がっている。
グレドーナのあの固かった毛皮を思い浮かべる限り、より性能が上がっている事だろう。
手には固定するようの中指と親指、小指に嵌める指輪型の物と、ブレスレット型の手首に嵌める物があり、手の甲でガードも出来るようになっている。
中々に良いデザインだ。
「こちらが、我々が全力で作り上げた品。『黒灼熱の革衣』に御座います」
そう言って、アルバートから手渡された。オレの目は、興味で光輝いている。
「ありがとうございます!」
少し興奮気味にそう礼を言うと、直ぐさま解析を行う。
『黒灼熱の革衣』
黒狼のレザーアーマーに朱く燃え盛る毛皮を一流の職人が合わせて作った力作。防御力は国宝に匹敵し、秘めた特殊能力を持つ。
効果:STR+15 VIT+70 AGI+20 燃え盛る炎
オレがじっくりと解析を行っていると、アルバートが『黒灼熱の革衣』の説明を始めた。
「この『黒灼熱の革衣』は特殊能力が備わっており、魔力を通すと炎を纏います。自身に被害は無いので安心してください」
「それは……凄いですね」
この『黒灼熱の革衣』は本当に凄い。ステータスの補正値もあるが、何より特殊能力があるなど稀だ。
説明文にも、国宝に匹敵すると書かれている。
本当にアルバートは良い仕事をしてくれた。心の底からそう思った。
「そして、余った毛皮の料金ですが、白金貨八枚になります」
「えッ!?」
思わぬ高額に、素っ頓狂な声が出た。
「……いくら何でも高過ぎません?」
「いえ、通常価格ですよ。Sランク冒険者が狩るモンスターの素材など到底手に入る物ではありませんし、その防具に使った量も少なかったので」
アルバートはそう冷静に返した。
そして、一つ咳払いをするとまた話を切り出した。
「そして、防具に掛かった費用ですが白金貨五枚になります」
オレは頭を抱えた。
防具制作を頼んだ筈が、素材の余りの方が高くなるとは。
嬉しいと素直に喜ぶべきか、悩みどころだ。
その後、白金貨八枚から五枚を差し引いて三枚渡され、店を出る。ちなみに防具は着用済みだ。
その足でカザドの店へ向かう。
店へ着くと、珍しくカザドがカウンターへ立っていた。
「おう、来たか」
「珍しいな」
オレは思わずそう言った。カザドは苦笑いすると、微妙な顔をしてこう言った。
「まあな」
それだけ言うと、カザドは奥から武器を取ってくる。
「これが依頼の品だ。流石の俺でも難しかったぜ」
そこには、一本の黒い片手剣と白と黒が混在している短槍があった。
「自慢の品だ、受け取ってくんな!」
そういって押し付けるように、それらの武器を渡して来た。
ずっしりとした感触と共に、オレは渡された武器の解析を行う。
『漆黒ノ硬剣』
非常に硬い剣。魔力を通し易く、魔力を込めるほど硬度が上がる。ただし非常に重い。
効果:STR+45 VIT+35 硬化
『混沌ノ投槍』
使い込まれた武器を材料として新たに作られた武器。頑丈で貫きやすい。投げても戻って来るという特殊能力を保持する。
効果:STR+20 AGI+15 回帰
非常に強力な武器へと変貌していることに、少し驚く。
オレは『混沌ノ投槍』を鞄へと仕舞う振りをして、ストレージに収納する。
カザドにはこの鞄が魔法鞄という嘘は伝え済みだ。
そしてオレは残った『漆黒ノ硬剣』を、店の中で当たらないよう軽く素振りをする。
――ブンッ!
重い音と共に、硬剣が振り抜かれる。
重いが、振れない程ではない。それに頑丈そうだ。これなら《無我ノ極地》にも耐えてくれるだろう。
「良い剣だ」
オレはそう呟いた。それを聞いたカザドが、嬉しそうな顔をする。
「それでカザド、これらの代金は?」
「必要ねぇ、そう言ってくれただけで俺は十分よ」
カザドはそう満足そうに言う。だが、それではオレが納得行かない。
これほどの武器を用意してくれたんだ。然るべき代金は支払いたい。
「だが、それじゃあオレが納得行かないぞ」
「いや、良いんだ。本当に代金は要らねぇ。その変わり――」
カザドは何か決意したような顔になると、オレへ向かって言った。
「武器が必要になったら俺の所へ来い。最高の武器を作ってやる」
オレは不意を付かれたような顔になるが、その言葉の意味を理解すると、声に出して笑った。
「あははっ」
「な、何がおかしい!?」
カザドは慌てたように言ってくるが、オレはそれに冷静に返した。
「カザドの腕には信頼している。武器が必要になればお前のところへ行くさ。それに、専属鍛冶師を蔑ろにする訳には行かないだろ?」
カザドはその言葉を聞くと、急に照れたような様子を見せるが、照れ隠し故か豪快に笑う。
「そうか、そうだったな……俺はお前の専属鍛冶師だ。これからもよろしく頼むぜ」
「ああ、勿論だ」
そう言って共に笑う。
結局代金はオレが金貨十五枚払う事で落ち着いた。迷宮でたくさん稼いだ身としては、これくらい苦でもない。
門へ着くと、ダルメアノの街を振り返る。活気に溢れた良い街だ。
オレの現在の装備は、鎖帷子に『黒灼熱の革衣』。指に『朱玉の指輪』が嵌められ、腰には投擲用の針と魔法薬の入った試験管が少々。
両脇にある帯剣ベルトには『蒼碧之断刀』と『紅赫之貫刀』が差してある。
他にも、ストレージには毒薬や先程カザドから受け取った『漆黒ノ硬剣』や『混沌ノ投槍』が入っている。
宿も引き払い、準備は万端。別れの挨拶も済ませた。
「――ありがとう」
オレは街へそう呟くと、異世界に訪れて初めての街を後にした。
次の目的地は王都。新たに出来た目標を胸に、オレはダルメアノの街を発った。
どうやら居ないようなので、存分に魔法訓練を行う事にした。
先ず最初に覚えるべきは、『詠唱破棄』と『無詠唱』だろう。
『詠唱破棄』の獲得条件には、『詠唱を一部省略し魔法を完成させる』と書いてある。
『絶対凍土』のような高難易度のモノではなく、簡単なスペルで実験してみる事にした。
「『流れ行く水―敵を穿て』“水流弾”」
グレドーナとの戦いでも活躍してくれた凡庸性の高いスペル。それを空へ向けて放った。
詠唱とは、魔力を魔法に変換するための補助を行っている。詠唱を省略するということは、それだけ補助が減るという事だ。
『水流弾』は、通常より不安定ながらも空へと飛び、散っていった。
【スペル『水流弾』Ⅱ→ⅢUP!】
【『詠唱破棄』Ⅰを獲得】
獲得条件が緩和されている故か、魔法が不安定ながらも発動させた事でスキルを獲得出来た。
今度はスキルの補正も利用しつつ、魔法を発動させ反復練習を行う。何事も数を熟せば、身に付くものだ。
スペルや魔法スキルの上昇にも繋がるため、一石二鳥どころか一石三鳥といったところか。
魔力の動きを良く覚えながら、反復練習を繰り返し行っていく。
【『魔力感知』Ⅲ→ⅣUP!】
【『詠唱破棄』Ⅰ→ⅢUP!】
【スペル『水流弾』Ⅲ→ⅣUP!】
【『風魔法』Ⅲ→ⅣUP!】
【スペル『風刃撃』Ⅱ→ⅢUP!】
時折スペルを変えつつ、『詠唱破棄』の練習を行う。
周りの地形を荒らさないためにも、上へ打つことが多かったのだが、『水流弾』の水が掛かり濡れてしまったので今はコートを脱いでいる。
下には防具は修理に出してしまっているので、黒いインナーだけだ。
周囲にはそれほど強いモンスターもいない事だし、大丈夫だろう。
さて、『詠唱破棄』も中々に様になり、魔法の不安定さも無くなった。これで次のステップである『無詠唱』に進めるだろう。
『魔力操作』を『集中』を使って緻密に操る。一つ一つ丁寧に魔力を操っていき、手を翳すと『水流弾』を出現させた。
【『無詠唱』Ⅰを獲得】
「よしッ」
オレはそう言って小さくガッツポーズをとる。これで戦闘でより使い勝手が良くなった。
残るは『無詠唱』の練習と新たな魔法の習得を残すのみ。
オレは早速特訓を始めた。
とはいえ、『無詠唱』を獲得しているとて新たなスペルを行使する際は詠唱を唱えねばならない。
そうしなければ、不完全な状態での魔法を使い続け変な癖が付いてしまうからだ。
サクサクと新たな魔法やスペルを獲得して行く。
【『植物魔法』Ⅲ→ⅣUP!】
【スペル『植物成長』Ⅰを獲得】
【『雷魔法』Ⅰを獲得】
【スペル『放電』Ⅰを獲得】
【『光魔法』Ⅰを獲得】
【スペル『発光球』Ⅰを獲得】
【『無詠唱』Ⅰ→ⅡUP!】
・
・ ・
・ ・ ・
空を見上げれば、赤く染まり日は沈もうとしている。
今日で大分魔法を充実させる事ができた。スキルレベルは総じて低いが、数は充実したのではないだろうか?
明日も時間はある。着々と増やしていけば良いだろう。
オレは街へと戻った。
◇◆◇◆◇
そして、あれから約束の三日が過ぎる。あの後、草原で魔法の練習を行ったり、ギルドで情報を集めたりなどをした。
それと、知り合いにダルメアノを離れるに当たってお別れの挨拶をしたのだが、シルアーナとアルメナ、宿屋の少女には行かないでと言われた。
前の二人はともかく、宿屋の少女は確実にチップ目当てだろう。チップを知って以来、何かと渡していたので良い小遣いをくれる相手程度に思っていたのかもしれない。
まあ、何はともあれ、今日は防具と武器の受け取り日だ。現在、アルマシオンの応接間でアルバートが防具を持ってくるのを待っている。
心して待っていると、扉がガチャリと開いた。
「お待たせしました、エノク様」
そう言って詫びるアルバートの手には、一着のレザーアーマーがあった。
黒と深い赤色に彩られ、防御面積も『黒狼のレザーアーマー』の時より広がっている。
グレドーナのあの固かった毛皮を思い浮かべる限り、より性能が上がっている事だろう。
手には固定するようの中指と親指、小指に嵌める指輪型の物と、ブレスレット型の手首に嵌める物があり、手の甲でガードも出来るようになっている。
中々に良いデザインだ。
「こちらが、我々が全力で作り上げた品。『黒灼熱の革衣』に御座います」
そう言って、アルバートから手渡された。オレの目は、興味で光輝いている。
「ありがとうございます!」
少し興奮気味にそう礼を言うと、直ぐさま解析を行う。
『黒灼熱の革衣』
黒狼のレザーアーマーに朱く燃え盛る毛皮を一流の職人が合わせて作った力作。防御力は国宝に匹敵し、秘めた特殊能力を持つ。
効果:STR+15 VIT+70 AGI+20 燃え盛る炎
オレがじっくりと解析を行っていると、アルバートが『黒灼熱の革衣』の説明を始めた。
「この『黒灼熱の革衣』は特殊能力が備わっており、魔力を通すと炎を纏います。自身に被害は無いので安心してください」
「それは……凄いですね」
この『黒灼熱の革衣』は本当に凄い。ステータスの補正値もあるが、何より特殊能力があるなど稀だ。
説明文にも、国宝に匹敵すると書かれている。
本当にアルバートは良い仕事をしてくれた。心の底からそう思った。
「そして、余った毛皮の料金ですが、白金貨八枚になります」
「えッ!?」
思わぬ高額に、素っ頓狂な声が出た。
「……いくら何でも高過ぎません?」
「いえ、通常価格ですよ。Sランク冒険者が狩るモンスターの素材など到底手に入る物ではありませんし、その防具に使った量も少なかったので」
アルバートはそう冷静に返した。
そして、一つ咳払いをするとまた話を切り出した。
「そして、防具に掛かった費用ですが白金貨五枚になります」
オレは頭を抱えた。
防具制作を頼んだ筈が、素材の余りの方が高くなるとは。
嬉しいと素直に喜ぶべきか、悩みどころだ。
その後、白金貨八枚から五枚を差し引いて三枚渡され、店を出る。ちなみに防具は着用済みだ。
その足でカザドの店へ向かう。
店へ着くと、珍しくカザドがカウンターへ立っていた。
「おう、来たか」
「珍しいな」
オレは思わずそう言った。カザドは苦笑いすると、微妙な顔をしてこう言った。
「まあな」
それだけ言うと、カザドは奥から武器を取ってくる。
「これが依頼の品だ。流石の俺でも難しかったぜ」
そこには、一本の黒い片手剣と白と黒が混在している短槍があった。
「自慢の品だ、受け取ってくんな!」
そういって押し付けるように、それらの武器を渡して来た。
ずっしりとした感触と共に、オレは渡された武器の解析を行う。
『漆黒ノ硬剣』
非常に硬い剣。魔力を通し易く、魔力を込めるほど硬度が上がる。ただし非常に重い。
効果:STR+45 VIT+35 硬化
『混沌ノ投槍』
使い込まれた武器を材料として新たに作られた武器。頑丈で貫きやすい。投げても戻って来るという特殊能力を保持する。
効果:STR+20 AGI+15 回帰
非常に強力な武器へと変貌していることに、少し驚く。
オレは『混沌ノ投槍』を鞄へと仕舞う振りをして、ストレージに収納する。
カザドにはこの鞄が魔法鞄という嘘は伝え済みだ。
そしてオレは残った『漆黒ノ硬剣』を、店の中で当たらないよう軽く素振りをする。
――ブンッ!
重い音と共に、硬剣が振り抜かれる。
重いが、振れない程ではない。それに頑丈そうだ。これなら《無我ノ極地》にも耐えてくれるだろう。
「良い剣だ」
オレはそう呟いた。それを聞いたカザドが、嬉しそうな顔をする。
「それでカザド、これらの代金は?」
「必要ねぇ、そう言ってくれただけで俺は十分よ」
カザドはそう満足そうに言う。だが、それではオレが納得行かない。
これほどの武器を用意してくれたんだ。然るべき代金は支払いたい。
「だが、それじゃあオレが納得行かないぞ」
「いや、良いんだ。本当に代金は要らねぇ。その変わり――」
カザドは何か決意したような顔になると、オレへ向かって言った。
「武器が必要になったら俺の所へ来い。最高の武器を作ってやる」
オレは不意を付かれたような顔になるが、その言葉の意味を理解すると、声に出して笑った。
「あははっ」
「な、何がおかしい!?」
カザドは慌てたように言ってくるが、オレはそれに冷静に返した。
「カザドの腕には信頼している。武器が必要になればお前のところへ行くさ。それに、専属鍛冶師を蔑ろにする訳には行かないだろ?」
カザドはその言葉を聞くと、急に照れたような様子を見せるが、照れ隠し故か豪快に笑う。
「そうか、そうだったな……俺はお前の専属鍛冶師だ。これからもよろしく頼むぜ」
「ああ、勿論だ」
そう言って共に笑う。
結局代金はオレが金貨十五枚払う事で落ち着いた。迷宮でたくさん稼いだ身としては、これくらい苦でもない。
門へ着くと、ダルメアノの街を振り返る。活気に溢れた良い街だ。
オレの現在の装備は、鎖帷子に『黒灼熱の革衣』。指に『朱玉の指輪』が嵌められ、腰には投擲用の針と魔法薬の入った試験管が少々。
両脇にある帯剣ベルトには『蒼碧之断刀』と『紅赫之貫刀』が差してある。
他にも、ストレージには毒薬や先程カザドから受け取った『漆黒ノ硬剣』や『混沌ノ投槍』が入っている。
宿も引き払い、準備は万端。別れの挨拶も済ませた。
「――ありがとう」
オレは街へそう呟くと、異世界に訪れて初めての街を後にした。
次の目的地は王都。新たに出来た目標を胸に、オレはダルメアノの街を発った。
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