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二章 氷雪の大地と少女
34 一悶着
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ダルメアノの街から見て、北に王都はあるらしい。途中、迷宮都市があるが長居はしていられないだろう。
迷宮都市という言葉に、後ろ髪を引かれる思いだが、今回は見送らねばならないだろう。また、時間のあるときに行きたいモノだ。
そうこうしている内に、その迷宮都市とやらが見えて来た。
大きな白い城壁に囲まれ、守りは固く堅牢そうだ。
門に行列が出来ていたので、その最後尾へと並ぶ。
「おいテメェ、邪魔だ。退け!」
並んで待つこと暫し、列の中盤に差し掛かった辺りで、後ろから争う声が聞こえてきた。
「嫌よ、私が先に並んで居たじゃない!」
振り返ると、そこには金髪で柄の悪そうな冒険者風の男と、赤髪の気の強そうなオレと同じ年齢くらいの少女が張り合っていた。
どうやら列の順番で問題になったらしい。
しかし、傍から見る限り善悪は明らかだ。先に並んでいた赤髪少女を男は無理やり抜かそうとしているらしい。
赤髪少女も腰に剣を帯剣している事から、恐らくは冒険者なのだろう。
だが、それも相手が悪かった。
赤髪少女の装備は、初心者も同然。対して男の装備はCランク冒険者相当と行ったところか。
この粗行にしては、そこそこな腕を持っているようだ。
このトラブルを、門兵は見て見ぬふりをするらしい。職務放棄も良いとこだ。
周囲の人々も、流石に冒険者同士の諍いには関与したくないと距離を置いている。ヒソヒソと言うだけだった。
「仕方ない……」
オレはそう言うと、その争い現場へと向かう。
ここで見捨てても、後味が悪い。それに、月乃にも幻滅されてしまう。
「ぅん?お前、よく見れば良い顔してるじゃねえか。俺が少し遊んでやるよ!」
「やめッ!放して!!」
腕を掴まれた少女は、振り解こうと暴れるが、ステータスの差もあり男からは逃れられない。
「そこまでです」
オレはそう言って、腕を掴んでいた男の腕を掴んだ。
「ぁあ!何だテメェ!?」
男は急に介入して来たオレを睨むが、問答無用でオレは手に力を込めた。
「あだだ!な、何しやがる!?」
慌てて赤髪少女から離れる男。オレも男の腕を放した。
「これ以上は冗談では済みませんよ」
「うるせぇ!コケにしやがって……身の程を思い知らせてやる!」
忠告するオレを無視し、男は腰の剣を抜剣した。
今のオレは、フードを目深く被り、コートに隠れ防具や武器は見えていない。
ただの旅人に見えて油断しているのだろう。
「ひッ!」
赤髪少女から短い悲鳴が漏れた。その顔は、若干の恐怖に染まっている。
それを見た男は、顔に醜悪な笑みを浮かべた。
「ヘヘッ、最初から謝って置けば良かったんだ。こっちはCランク冒険者様だぞ!もう遅えがな!」
そう言って男は、鈍色に光る剣をオレへと振り翳した。
「てやッ!」
次の瞬間に訪れる残劇を想像したのか、身構えて目を強く瞑る。
だが、それは訪れなかった。
オレは繰り出された剣を、人差し指と中指で挟み込むように受け止める。
【『白刃取り』Ⅰを獲得】
「なッ!?」
流石にCランク冒険者というところか。
直ぐさま距離を取ると、二、三撃繰り出してくる。それを周りに被害が出ないよう、紙一重で避けていく。
「くそッ!ならこれで!」
男はバックステップでもう一度距離を取ると、構えを取る。
そこに『魔力感知』が反応した。
「喰らいやがれ!《スラッ――」
片手剣アーツ《スラッシュ》を発動させようとしたが、オレが寸でのところで近付き、『蹴術』を用いて男の剣を蹴り上げる。
「つッ!?」
「動くな」
手刀で男の首に向け、語気を強くしてそう言った。先程の蹴りでハラリとローブが脱げ、乱れたコートの中の衣装が見える。
それを見た男の目が変わった。顔は青ざめ、ガクガクと震え出した。
確かに今のオレは、高ランク冒険者のような装備。ランクも彼より上。力量差を知り、自分の侵した過ちに気付いたのだ。
「す、すすすすんませんでしたぁあああああ!!」
男は土下座して謝ってくる。
オレは追い払うように手を振ると、男は飛び上がり飛ばされた剣を掴んで逃げて行った。
「おお……!」
「何じゃありゃ?凄いな!」
「強いし顔もイケメンじゃない!」
周りの野次馬が口々に、こちらを遠巻きに見て言っているが無視だ無視。
元の列に戻ろうと引き返すと、後ろから手を掴まれた。
「あ、あの……」
赤髪少女が、言いづらそうに言ってくる。
「何でしょうか?」
「あ、ありがとうございました!」
オレが聞くと、頬を赤らめ盛大にお辞儀をしてお礼を言った。
とはいえ、オレはそういったモノを望んでいたわけではない。自己満足に過ぎないからだ。
「いえ、怪我が無いようで良かったです」
それだけ言うと、スルリと赤髪少女の手から抜け列へと戻って行った。
その時、名残り惜しそうにこちらを少女は見ていた。
元の並んでいた場所へ戻ると、後ろの老婆がオレの順番を取って置いてくれた。老婆の後ろに居る者は、面白くなさそうにこちらを見ているが、ここはご厚意に甘えさせて頂こう。
先程のあの場に戻るには、些か示しが付かない。
やはり門兵はこちらの騒動に気付いていたが、関与してくることは無かった。
抜剣すらされていたし、命の危険すらあっとというのに、この街の衛兵はどうなっているのやら。
少し苛立つが、自分に余計な真似をして来なければ別に良いかと意識を切り替えた。
そうして、オレの順番が回って来た。
「身分証を提出しろ」
高圧的な言い方に、対応は面倒臭いと判断したので、冒険者証を提出すると同時に銀貨一枚をこっそりと渡した。
すると門兵は分かりやすいくらいに顔を緩め、手を揉みながら検問らしいする事をする事は無く、門を通した。
「び、Bランク冒険者様で御座いましたか!ではどうぞお通り下さい!」
欲に忠実な者ほど扱い易いとは、まさにこの事だろう。
街へ入ると、冒険者の風貌の者が多く居た。
そして、ダルメアノの街には居なかった獣人と呼ばれる存在――獣の耳や尻尾が生えた人も多く居る。
ファンタジー感が凄いとしか言いようが無い。しかし残念ながら、オレの求めるエルフの姿は居なかった。
やはりエルフがいることは稀なのだろう。
一先ず、今日はこの街で一日明かすことにする。宿を取った後に、冒険者ギルドにでも向かうべきだろう。
冒険者についての冊子には、新しい街へ着くと、その街の冒険者ギルドに挨拶に行くのが暗黙の了解らしい。
「いらっしゃいませ!」
宿へ着くと、元気の良い看板娘にそう言われた。
「何泊致しますか?」
「一泊でお願いします。夕食と朝食付きでもよろしいですか?」
「大丈夫ですよ!計銀貨一枚です」
オレは懐から銀貨一枚を取り出す。
ここは金額でも分かる通り、そこそこ質の高い宿だ。部屋にも期待できるだろう。
鍵を受け取り、部屋へと入る。
広めの間取りに、柔らかそうなベッド。簡素ながらソファーも置かれている。
これならばじっくりと疲れを取ることができそうだ。
とはいえ、今から冒険者ギルドへ向かわねば。MAPを確認しつつ、冒険者ギルドへ向かう。
途中、昼飯がてら街の露店で買い食いをした。どうやら迷宮のドロップアイテムからモンスターの肉が穫れる事が多いらしく、豪快に調理されたモンスターの肉は新鮮だった。
何やかんやで冒険者ギルドへ着くと、ダルメアノの街よりも巨大な建物だった。
中へ入ると、依頼などが多い。流石迷宮都市というだけあって、迷宮関連の依頼が多いようだった。
一先ず受け付けへと向かう。
「ようこそ冒険者ギルドへ!本日は何の御用ですか?」
「他の街から来たので挨拶をしに」
そういって笑みを見せる。
受付嬢は納得をすると、こう言った。
「そうでしたか、それでは記録するためギルド証を提出してください」
オレは言われた通り、ギルド証を取り出した。それを見た受付嬢の顔が驚愕で染まる。
ギルド証とオレの顔を何度も往復して見た。
「Bランク冒険者だったんですか!?」
そういって驚きのあまり叫んだ。その行いに、オレは思わず眉を顰める。
ギルド内から何だ何だと視線が集まって来た。
「個人のランクを勝手に叫ぶのは、止めて頂きたいのですが?」
受付嬢は自身のやってしまった言動に気が付いたのか、顔を青ざめ慌てて謝った。
「も、申し訳ありません。信じられなくて驚いてしまって……」
その言葉も失礼に当たるのだが、オレは深く溜め息を付いた。
受付嬢が深々とお辞儀をし、肩を震わせている。
「……以後、気を付けてください」
「大変、申し訳ありませんでした……」
受付嬢はもう一度謝罪をすると、オレのギルド証を持ちカウンターの奥へと向かう。
恐らく今街に滞在する冒険者の名簿を付け足しに行ったのだろう。
待つこと少し、受付嬢が奥からやって来る。
「本当に先程は申し訳ありませんでした」
「いえ、過ぎた事なのでもう構いません。それに余りこの街には滞在しない予定ですので。出て行く際はギルドに報告した方がいいですか?」
「出来れば、お願いします」
「分かりました」
オレはそれだけ聞くと、カウンターを離れた。依頼の貼られている掲示板やらを大雑把に眺めて行く。
やはり、この街の名物ともいえる迷宮の依頼が多かった。この街の迷宮の名は『氷雪の大地』、名の通り雪と氷に覆われたフィールドがメインとなっている。
『氷雪の大地』は街のすぐ側にあり、街の起源は腕に自信のある冒険者たちが作り上げた村から始まったようだ。
そのため、この街を治める領主も元冒険者だという。
興味が惹かれない訳でもないが、それをグッと抑えギルドを出ようとする。そこに、門付近で会った赤髪少女と偶然遭遇した。
「あ!」
「これはどうも」
軽い会釈だけをしてその場を去ろうとする。すると少女に腕を掴まれた。
「いやいやいや、ここで会ったのも何かの縁です! 先程のお礼をさせて下さい!」
そういってギルドのど真ん中で引き止められる。先程Bランクとバラされた以上の視線が飛んできた。
これでは先程受付嬢を注意した意味がない。
「本当に大丈夫なのですが」
「いえ、是非!」
赤髪少女がキラキラとした視線を向けてくる。彼女の中ではどうやら決定事項らしい。
頭を抱えたい気分だが、ここは甘んじて受け入れる事にした。
「……それではお茶を一杯奢って頂けませんか?」
「喜んで!」
それを聞いた赤髪少女は、何故か嬉しそうだった。
迷宮都市という言葉に、後ろ髪を引かれる思いだが、今回は見送らねばならないだろう。また、時間のあるときに行きたいモノだ。
そうこうしている内に、その迷宮都市とやらが見えて来た。
大きな白い城壁に囲まれ、守りは固く堅牢そうだ。
門に行列が出来ていたので、その最後尾へと並ぶ。
「おいテメェ、邪魔だ。退け!」
並んで待つこと暫し、列の中盤に差し掛かった辺りで、後ろから争う声が聞こえてきた。
「嫌よ、私が先に並んで居たじゃない!」
振り返ると、そこには金髪で柄の悪そうな冒険者風の男と、赤髪の気の強そうなオレと同じ年齢くらいの少女が張り合っていた。
どうやら列の順番で問題になったらしい。
しかし、傍から見る限り善悪は明らかだ。先に並んでいた赤髪少女を男は無理やり抜かそうとしているらしい。
赤髪少女も腰に剣を帯剣している事から、恐らくは冒険者なのだろう。
だが、それも相手が悪かった。
赤髪少女の装備は、初心者も同然。対して男の装備はCランク冒険者相当と行ったところか。
この粗行にしては、そこそこな腕を持っているようだ。
このトラブルを、門兵は見て見ぬふりをするらしい。職務放棄も良いとこだ。
周囲の人々も、流石に冒険者同士の諍いには関与したくないと距離を置いている。ヒソヒソと言うだけだった。
「仕方ない……」
オレはそう言うと、その争い現場へと向かう。
ここで見捨てても、後味が悪い。それに、月乃にも幻滅されてしまう。
「ぅん?お前、よく見れば良い顔してるじゃねえか。俺が少し遊んでやるよ!」
「やめッ!放して!!」
腕を掴まれた少女は、振り解こうと暴れるが、ステータスの差もあり男からは逃れられない。
「そこまでです」
オレはそう言って、腕を掴んでいた男の腕を掴んだ。
「ぁあ!何だテメェ!?」
男は急に介入して来たオレを睨むが、問答無用でオレは手に力を込めた。
「あだだ!な、何しやがる!?」
慌てて赤髪少女から離れる男。オレも男の腕を放した。
「これ以上は冗談では済みませんよ」
「うるせぇ!コケにしやがって……身の程を思い知らせてやる!」
忠告するオレを無視し、男は腰の剣を抜剣した。
今のオレは、フードを目深く被り、コートに隠れ防具や武器は見えていない。
ただの旅人に見えて油断しているのだろう。
「ひッ!」
赤髪少女から短い悲鳴が漏れた。その顔は、若干の恐怖に染まっている。
それを見た男は、顔に醜悪な笑みを浮かべた。
「ヘヘッ、最初から謝って置けば良かったんだ。こっちはCランク冒険者様だぞ!もう遅えがな!」
そう言って男は、鈍色に光る剣をオレへと振り翳した。
「てやッ!」
次の瞬間に訪れる残劇を想像したのか、身構えて目を強く瞑る。
だが、それは訪れなかった。
オレは繰り出された剣を、人差し指と中指で挟み込むように受け止める。
【『白刃取り』Ⅰを獲得】
「なッ!?」
流石にCランク冒険者というところか。
直ぐさま距離を取ると、二、三撃繰り出してくる。それを周りに被害が出ないよう、紙一重で避けていく。
「くそッ!ならこれで!」
男はバックステップでもう一度距離を取ると、構えを取る。
そこに『魔力感知』が反応した。
「喰らいやがれ!《スラッ――」
片手剣アーツ《スラッシュ》を発動させようとしたが、オレが寸でのところで近付き、『蹴術』を用いて男の剣を蹴り上げる。
「つッ!?」
「動くな」
手刀で男の首に向け、語気を強くしてそう言った。先程の蹴りでハラリとローブが脱げ、乱れたコートの中の衣装が見える。
それを見た男の目が変わった。顔は青ざめ、ガクガクと震え出した。
確かに今のオレは、高ランク冒険者のような装備。ランクも彼より上。力量差を知り、自分の侵した過ちに気付いたのだ。
「す、すすすすんませんでしたぁあああああ!!」
男は土下座して謝ってくる。
オレは追い払うように手を振ると、男は飛び上がり飛ばされた剣を掴んで逃げて行った。
「おお……!」
「何じゃありゃ?凄いな!」
「強いし顔もイケメンじゃない!」
周りの野次馬が口々に、こちらを遠巻きに見て言っているが無視だ無視。
元の列に戻ろうと引き返すと、後ろから手を掴まれた。
「あ、あの……」
赤髪少女が、言いづらそうに言ってくる。
「何でしょうか?」
「あ、ありがとうございました!」
オレが聞くと、頬を赤らめ盛大にお辞儀をしてお礼を言った。
とはいえ、オレはそういったモノを望んでいたわけではない。自己満足に過ぎないからだ。
「いえ、怪我が無いようで良かったです」
それだけ言うと、スルリと赤髪少女の手から抜け列へと戻って行った。
その時、名残り惜しそうにこちらを少女は見ていた。
元の並んでいた場所へ戻ると、後ろの老婆がオレの順番を取って置いてくれた。老婆の後ろに居る者は、面白くなさそうにこちらを見ているが、ここはご厚意に甘えさせて頂こう。
先程のあの場に戻るには、些か示しが付かない。
やはり門兵はこちらの騒動に気付いていたが、関与してくることは無かった。
抜剣すらされていたし、命の危険すらあっとというのに、この街の衛兵はどうなっているのやら。
少し苛立つが、自分に余計な真似をして来なければ別に良いかと意識を切り替えた。
そうして、オレの順番が回って来た。
「身分証を提出しろ」
高圧的な言い方に、対応は面倒臭いと判断したので、冒険者証を提出すると同時に銀貨一枚をこっそりと渡した。
すると門兵は分かりやすいくらいに顔を緩め、手を揉みながら検問らしいする事をする事は無く、門を通した。
「び、Bランク冒険者様で御座いましたか!ではどうぞお通り下さい!」
欲に忠実な者ほど扱い易いとは、まさにこの事だろう。
街へ入ると、冒険者の風貌の者が多く居た。
そして、ダルメアノの街には居なかった獣人と呼ばれる存在――獣の耳や尻尾が生えた人も多く居る。
ファンタジー感が凄いとしか言いようが無い。しかし残念ながら、オレの求めるエルフの姿は居なかった。
やはりエルフがいることは稀なのだろう。
一先ず、今日はこの街で一日明かすことにする。宿を取った後に、冒険者ギルドにでも向かうべきだろう。
冒険者についての冊子には、新しい街へ着くと、その街の冒険者ギルドに挨拶に行くのが暗黙の了解らしい。
「いらっしゃいませ!」
宿へ着くと、元気の良い看板娘にそう言われた。
「何泊致しますか?」
「一泊でお願いします。夕食と朝食付きでもよろしいですか?」
「大丈夫ですよ!計銀貨一枚です」
オレは懐から銀貨一枚を取り出す。
ここは金額でも分かる通り、そこそこ質の高い宿だ。部屋にも期待できるだろう。
鍵を受け取り、部屋へと入る。
広めの間取りに、柔らかそうなベッド。簡素ながらソファーも置かれている。
これならばじっくりと疲れを取ることができそうだ。
とはいえ、今から冒険者ギルドへ向かわねば。MAPを確認しつつ、冒険者ギルドへ向かう。
途中、昼飯がてら街の露店で買い食いをした。どうやら迷宮のドロップアイテムからモンスターの肉が穫れる事が多いらしく、豪快に調理されたモンスターの肉は新鮮だった。
何やかんやで冒険者ギルドへ着くと、ダルメアノの街よりも巨大な建物だった。
中へ入ると、依頼などが多い。流石迷宮都市というだけあって、迷宮関連の依頼が多いようだった。
一先ず受け付けへと向かう。
「ようこそ冒険者ギルドへ!本日は何の御用ですか?」
「他の街から来たので挨拶をしに」
そういって笑みを見せる。
受付嬢は納得をすると、こう言った。
「そうでしたか、それでは記録するためギルド証を提出してください」
オレは言われた通り、ギルド証を取り出した。それを見た受付嬢の顔が驚愕で染まる。
ギルド証とオレの顔を何度も往復して見た。
「Bランク冒険者だったんですか!?」
そういって驚きのあまり叫んだ。その行いに、オレは思わず眉を顰める。
ギルド内から何だ何だと視線が集まって来た。
「個人のランクを勝手に叫ぶのは、止めて頂きたいのですが?」
受付嬢は自身のやってしまった言動に気が付いたのか、顔を青ざめ慌てて謝った。
「も、申し訳ありません。信じられなくて驚いてしまって……」
その言葉も失礼に当たるのだが、オレは深く溜め息を付いた。
受付嬢が深々とお辞儀をし、肩を震わせている。
「……以後、気を付けてください」
「大変、申し訳ありませんでした……」
受付嬢はもう一度謝罪をすると、オレのギルド証を持ちカウンターの奥へと向かう。
恐らく今街に滞在する冒険者の名簿を付け足しに行ったのだろう。
待つこと少し、受付嬢が奥からやって来る。
「本当に先程は申し訳ありませんでした」
「いえ、過ぎた事なのでもう構いません。それに余りこの街には滞在しない予定ですので。出て行く際はギルドに報告した方がいいですか?」
「出来れば、お願いします」
「分かりました」
オレはそれだけ聞くと、カウンターを離れた。依頼の貼られている掲示板やらを大雑把に眺めて行く。
やはり、この街の名物ともいえる迷宮の依頼が多かった。この街の迷宮の名は『氷雪の大地』、名の通り雪と氷に覆われたフィールドがメインとなっている。
『氷雪の大地』は街のすぐ側にあり、街の起源は腕に自信のある冒険者たちが作り上げた村から始まったようだ。
そのため、この街を治める領主も元冒険者だという。
興味が惹かれない訳でもないが、それをグッと抑えギルドを出ようとする。そこに、門付近で会った赤髪少女と偶然遭遇した。
「あ!」
「これはどうも」
軽い会釈だけをしてその場を去ろうとする。すると少女に腕を掴まれた。
「いやいやいや、ここで会ったのも何かの縁です! 先程のお礼をさせて下さい!」
そういってギルドのど真ん中で引き止められる。先程Bランクとバラされた以上の視線が飛んできた。
これでは先程受付嬢を注意した意味がない。
「本当に大丈夫なのですが」
「いえ、是非!」
赤髪少女がキラキラとした視線を向けてくる。彼女の中ではどうやら決定事項らしい。
頭を抱えたい気分だが、ここは甘んじて受け入れる事にした。
「……それではお茶を一杯奢って頂けませんか?」
「喜んで!」
それを聞いた赤髪少女は、何故か嬉しそうだった。
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