【スキルコレクター】は異世界で平穏な日々を求める

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二章 氷雪の大地と少女

35 攻略前日

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 流石に酒場も兼用している冒険者ギルドではゆっくり出来ないと判断し、赤髪少女の挨拶だけを済ませてギルドを出た。

「おすすめのお店があるので、そこへ行きましょう!」

 そういってさり気なく赤髪少女はオレの手を引き、軽い早足で案内を行う。

「そう急がなくても構いませんよ」

 オレは苦笑い気味にそう言った。少女も自身の積極的な行動気が付いたのか、顔を赤く染め手を離す。

「す、すみません!」

 そういった風に、他愛もない話をしながら店へと向かった。

 到着した店は、お洒落な喫茶店のような場所だった。

――カランカランッ!

「いらっしゃいませ、お二人でよろしいですか」
「ええ」
「それではこちらの席へどうぞ」

 そう言って女性店員に窓際の席を案内される。
 メニュー表を渡すと、店員はウィンクをしながら余計な事を言った。

「デートでしたらあのお飲み物がおすすめですよ」

 そういって店員が見た先には、一つの大きめのジュースにストローを二本差し、一緒に飲み合うカップルの姿があった。

「あ、いや、その……」

 顔を真っ赤にしてしどろもどろになる赤髪少女に、少し苦笑いしつつも誤解を解くべく反論をした。

「私たちは恋仲ではありませんよ」

 すると店員は、予想が外れたという顔をする。

「これは失礼しました、それではどうぞごゆっくり」

 そういって仕事へと戻っていく店員。未だ赤髪少女は顔を赤らめていた。





 その後、それぞれが注文を行い飲み物が届いたところで少々の雑談へと移った。

「改めて、私はレーナと言います!」
「これはご丁寧に、私はエノクと言います」

 オレたちは簡単な自己紹介をお互いに済ませる。
 一段落すると、レーナは尊敬した眼差しを向けて来た。

「それにしてもエノクさん、私と同じ歳くらいなのにお強いんですね!」
「それはどうも、ありがとうございます」

 ここで下手に謙遜をしても、嫌味にしか聞こえないので軽く受け取っておく。
 だが、レーナは自虐的な影の差した笑みを浮かべる。

「それに比べて私は……力が無いばかりに妹を……」

 何やら事情有りげな様子だ。明らかに面倒事の匂いがする。

 だが、大切な人を助けられない苦しみは良く知っている。ここで見捨てるには、些か後味が悪い。
 事情だけでも聞く事にした。

「何か、事情があるんですか?」
「……はい」

 そういって、レーナはポツリポツリと語り始めた。

 彼女には、三つ下の妹が居るという。両親は早くに亡くなり、最近までは孤児院で生活出来ていたモノの、歳の都合上離れることを余儀なくされた。
 元々妹は病弱で、良く寝込んでいたようだが孤児院を出てからというモノ、体調はますます悪化し、治療費すら賄うのが難しくなって行った。
 アルバイトや冒険者活動を行い、何とか生活していたが、妹はとうとう難病に掛かってしまう。

 それを治すには、この迷宮都市にある『氷雪の大地』第五層にある白雪花が必要だった。
 幸いと言えば良いのか、例外にしてこの都市はEランク冒険者以上の者は『氷雪の大地』へ入る資格を得ることができる。
 だが、大抵の低ランク冒険者は一階に潜るのが精一杯で、身の丈に合わないほど下層に潜った者は死んでいく。

 冒険者の行動は全て自己責任だ、ギルドが注意することはあれ、咎められる筋合いは無い。

 レーナの立ち振舞や装備を見る限り、他の低ランク冒険者と同じに見える。見せて貰ったギルド証はEランクだったようだが、はてさて第五層まで到達できるかどうか。

 予想通りというべきか、レーナはオレにあるお願い・・・をして来た。

「どうか……迷宮へ潜るのをお手伝いしては頂けませんか!?」

 瞳に涙をため、必死の形相でオレへと乗り出して来る。それが事を、どれだけ重要なのかを表していた。

 オレは今すぐにでも月乃の元へ向かいたい。だが、レーナもそれほどまで妹を思っているのだろう。
 だから今こうしてオレにお願いをしている。

 オレは髪を手で弄くりながら悩んだ。
 ここで見捨ててしまえば、その分早く月乃の元へ辿り着ける。だが、それで月乃は喜ぶのだろうか。
 最後まで人を救う事を選び、死んでいった彼女が見捨てたオレを許す筈がない。

 必要なのは『氷雪の大地』の第五層にある。急げば一日でも行けない事はない。

「……ええ、分かりました。手伝いましょう」

 オレはそう捻り出していった。レーナの表情がパッと和らぐ。

「あ、ありがとうございます! ありがとうございます!」

 何度も頭を下げ、お礼を言う彼女。オレは思わずそれを見て、顔が綻んだ。





 その後、店を後にしもう一度ギルドへと向かう。
 まだレーナは他の街から来た冒険者の記録をしていなかったので、ついでにオレたちのパーティー登録もしてもらう事にする。

 対応する受付嬢は、先程の人と同じだ。

「……はい、記録が完了しました。そして、パーティー編成ですが、メンバーは?」
「私です」

 そう言ってオレがレーナの隣に立つ。一瞬受付嬢がビクリと体を震わせた気がした。

「エ、エノクさんでしたか……ですが、ランクが離れていらっしゃるのでは?」
「構いません」

 『偽表情ポーカーフェイス』の笑みで押し切る。レーナがオレのランクを知らなかったため、少し困惑気味だが別に良いだろう。

「ではパーティーリーダーですが、どちらがなさいますか?」
「エノクさんでお願いします!」

 レーナが大きな声でそう言った。それにオレは少し驚く。

「あれ、レーナさんがリーダーではないんですか?」
「え!? エノクさんの方が戦闘経験が豊富のようですし、そちらの方が良いかなって……」

 逆にレーナは驚いた様子で、不安げに上目遣いでこちらを見て来る。
 まあ、驚いただけで特に不満は無い。否定する理由は無かった。

「いえ、それで良いなら大丈夫ですよ」

 そう言ってパーティーリーダーへとなる。
 残りは迷宮探索へ必要な『許可証』というモノが無ければ、迷宮の探索は行えないらしい。

 どうやらダルメアノで入った迷宮は例外だったようだ。
 その手続きもつつがなく終わる。レーナのギルド証の変更に、少々時間を取った程度だ。

 迷宮探索は明日へと繰り越し、それぞれが準備を整え門へ集合との事になった。
 オレは街を観光しつつ、必要な物を買い揃え宿へと戻った。

 夕食は、オークの焼肉定食で非常に美味だったと書き記しておく。
 早々に床に付き、明日へ少し期待しながらオレの意識は消えていった。




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