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幼少期
六歳になりました
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六歳の誕生日は、内輪だけのささやかなものにしようと言ったのだけど。
これは、全然ささやかではないと思う。
誕生日の当日、早朝から風呂に放り込まれて丸洗いされました。
文字のごとく、本当に頭からつま先まで丹念に洗われ自作の化粧水や乳液などを全身くまなく塗られ、お肌はぷるっぷるしてます。
お陰で一瓶空っぽになりました。
ラベンダーの香油でマッサージを受けて、髪を魔法で乾かし(自分でやった)アリーシャが衣裳部屋からドレス用意して着せられた。
普段はレースも少ない簡素なワンピースに近いドレスなのだが、今日はパーティーで主役ということもあり、イブニングドレスを着せれた。
パニエを履いてボリュームを出し肩がフワッと膨らむようになっている古典的なドレスだ。
淡い色は似合わないので、緑のグラデーションのドレスを着ている。
髪留めは、領の鉱山で取れたガーネットがあしらわれたものを着けている。
加工時に余った小さなガーネットをカットしてチョーカーを作って貰ったものを身に付けている。
化粧をしようとする侍女たちに口紅だけで十分だからと拝み倒して、赤い口紅を塗られた。
鏡を見て思ったのは、古典的なお嬢様という感じである。
「髪をくるくる巻かなくても良かったと思うんだけど」
「今の流行りです。流行を取り入れる必要があります!」
「口紅も赤じゃなくて、もっと落ち着いた色の方が…」
顔と言うか、目力が強いのだから優しい風合いの口紅の方が印象は和らぐだろうに。
「それも今の流行りです」
「流行りも大事だけど、自分に似合う化粧をした方が良いと思うだけど」
「大丈夫、似合ってます」
アリーシャの太鼓判に、私はうへぇとした顔になった。
容姿を自己評価すると、気の強そうな美少女である。
素でそう思わせるのだから、もう少し円やかさを服装などで醸し出して雰囲気だけでも可愛い美少女になりたかった。
「……ありがとう。内輪だけのパーティーなのに、何でこんなに気合が入っているの?」
「陛下達もお忍びで参加される予定なので、その為だと思いますよ」
「……成るほど、参考になったわ」
お忍びとはいえ、陛下達も参加するなら仰々しくもなるだろう。
あの傲慢王子の相手をすることになるのかと思うと気が重い。
ハァと大きなため息を吐いていたら、コンコンとノックの音が聞こえた。
「お嬢様、お仕度は終わりましたか?」
「終わったわ」
ガチャッとドアを開けると、燕尾服を綺麗に着こなしているガリオンが立っていた。
「お迎えに上がりました」
「……ガリオンが、ガリオンじゃない」
「ありがとう御座います、リリアン様」
ニーッコリと笑みを浮かべるガリオンに、私はサッと顔を逸らした。
「兄さん、馬子にも衣装ね」
アリーシャの言葉に、ブフッと噴き出してしまった。
私の思っていることをよくぞ言ってくれた!!
「アリーシャも人のことは言えないだろう。お嬢様の支度が済んだなら、ホールの手伝いをしてくれ。人が足りないんだ」
「分かったわ。お嬢様、御前を失礼致します」
ワンピースの裾をつまみ淑女の礼を取り、速足で去っていった。
「今日来ている人って、そんなに大人数なの?」
「はい、大公様の親類が来てますので百名前後になるかと」
「……どこが“ささやか”なのかしら」
「取引相手や大公家と交流のある貴族を含めたパーティーになれば、もっと多くなると思います」
確かにそう言われれば、百人程度で収まらないだろう。
パーティーも一日では終わらないから数回に分ける可能性もある。
「貴族って面倒ね。というか、その取ってつけた敬語が気持ち悪いわ」
「今日は、屋敷以外の方がいらっしゃいますので」
公私を分けろ・化け猫を被れと口酸っぱく言っていたが、本当に実行されると何だか気持ち悪い。
「お嬢様、そろそろお時間ですので参りましょう」
私が誕生日プレゼントに贈った懐中時計を見て、ガリオンが手を差し出した。
私は、その手を取りパーティー会場へと足を踏み出した。
これは、全然ささやかではないと思う。
誕生日の当日、早朝から風呂に放り込まれて丸洗いされました。
文字のごとく、本当に頭からつま先まで丹念に洗われ自作の化粧水や乳液などを全身くまなく塗られ、お肌はぷるっぷるしてます。
お陰で一瓶空っぽになりました。
ラベンダーの香油でマッサージを受けて、髪を魔法で乾かし(自分でやった)アリーシャが衣裳部屋からドレス用意して着せられた。
普段はレースも少ない簡素なワンピースに近いドレスなのだが、今日はパーティーで主役ということもあり、イブニングドレスを着せれた。
パニエを履いてボリュームを出し肩がフワッと膨らむようになっている古典的なドレスだ。
淡い色は似合わないので、緑のグラデーションのドレスを着ている。
髪留めは、領の鉱山で取れたガーネットがあしらわれたものを着けている。
加工時に余った小さなガーネットをカットしてチョーカーを作って貰ったものを身に付けている。
化粧をしようとする侍女たちに口紅だけで十分だからと拝み倒して、赤い口紅を塗られた。
鏡を見て思ったのは、古典的なお嬢様という感じである。
「髪をくるくる巻かなくても良かったと思うんだけど」
「今の流行りです。流行を取り入れる必要があります!」
「口紅も赤じゃなくて、もっと落ち着いた色の方が…」
顔と言うか、目力が強いのだから優しい風合いの口紅の方が印象は和らぐだろうに。
「それも今の流行りです」
「流行りも大事だけど、自分に似合う化粧をした方が良いと思うだけど」
「大丈夫、似合ってます」
アリーシャの太鼓判に、私はうへぇとした顔になった。
容姿を自己評価すると、気の強そうな美少女である。
素でそう思わせるのだから、もう少し円やかさを服装などで醸し出して雰囲気だけでも可愛い美少女になりたかった。
「……ありがとう。内輪だけのパーティーなのに、何でこんなに気合が入っているの?」
「陛下達もお忍びで参加される予定なので、その為だと思いますよ」
「……成るほど、参考になったわ」
お忍びとはいえ、陛下達も参加するなら仰々しくもなるだろう。
あの傲慢王子の相手をすることになるのかと思うと気が重い。
ハァと大きなため息を吐いていたら、コンコンとノックの音が聞こえた。
「お嬢様、お仕度は終わりましたか?」
「終わったわ」
ガチャッとドアを開けると、燕尾服を綺麗に着こなしているガリオンが立っていた。
「お迎えに上がりました」
「……ガリオンが、ガリオンじゃない」
「ありがとう御座います、リリアン様」
ニーッコリと笑みを浮かべるガリオンに、私はサッと顔を逸らした。
「兄さん、馬子にも衣装ね」
アリーシャの言葉に、ブフッと噴き出してしまった。
私の思っていることをよくぞ言ってくれた!!
「アリーシャも人のことは言えないだろう。お嬢様の支度が済んだなら、ホールの手伝いをしてくれ。人が足りないんだ」
「分かったわ。お嬢様、御前を失礼致します」
ワンピースの裾をつまみ淑女の礼を取り、速足で去っていった。
「今日来ている人って、そんなに大人数なの?」
「はい、大公様の親類が来てますので百名前後になるかと」
「……どこが“ささやか”なのかしら」
「取引相手や大公家と交流のある貴族を含めたパーティーになれば、もっと多くなると思います」
確かにそう言われれば、百人程度で収まらないだろう。
パーティーも一日では終わらないから数回に分ける可能性もある。
「貴族って面倒ね。というか、その取ってつけた敬語が気持ち悪いわ」
「今日は、屋敷以外の方がいらっしゃいますので」
公私を分けろ・化け猫を被れと口酸っぱく言っていたが、本当に実行されると何だか気持ち悪い。
「お嬢様、そろそろお時間ですので参りましょう」
私が誕生日プレゼントに贈った懐中時計を見て、ガリオンが手を差し出した。
私は、その手を取りパーティー会場へと足を踏み出した。
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