お前は、ヒロインではなくビッチです!

もっけさん

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幼少期

研究者の勧誘をしてみた

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 家庭教師をして貰って思ったことは、テプレノン男爵は知識欲の塊で研究者肌だということだ。
 私が新しいことをしていたら、いつの間にか横にいて説明を求められる。
「テプレノン先生、私の教師ではなくアングロサクソン家のお抱え研究者になりませんか?」
と持ち掛けてみた。
 最近は、私に対しておどおどした様子もなくなり多少打ち解けた感じがする。
「研究者ですか?」
「はい! 先生ほど優秀なら色んなところからお声がかかると思うので囲おうと思いました」
 ズバッと本音を言ったら、ずれてもいないメガネを掛けなおしている。
「変わった方だとは思っていましたが、本気で仰っているんですか?」
「本気です! 私の思い描いたものを先生がアドバイスしてくれるので、製品として世に出せるんです。それに、先生は教えるより学ぶ方が好きなんだと思いました」
「……よく見てますね」
「私が色々アイディア出している時に、これは何かと聞いてくるじゃないんですか。簡単な説明だけで、大体把握してアドバイスまでくれるので助かってます。教師という仕事も十分立派ですが、先生は研究者が向いているんじゃないかと思うんです。一緒に商品開発しませんか? 特許や著作権の制度もあるので、今より稼げます」
 ドヤァという顔で言ってのけたら、テプレノン男爵は困ったような顔をした。
「お誘いは嬉しいですが、この見た目なので遠慮し……」
「遠慮は不要ですわ! ただ瞳の色が違うだけではありませんの。そんな些細な事、この屋敷で気にする人はおりません。是非とも研究者に……」
 書類とペンを持ってにじり寄る私の後頭部をスパーンッという音と共に衝撃が走った。
「どこの悪徳貴族だよ。先生、乗り気じゃないだろう。断られているんだから諦めろ」
 ガリオンが、直径三十センチのハリセンを片手に面倒臭そうに言った。
「ちょっと! いきなり何するのよ。痛いじゃない。しかも思いっきり叩いたわね!! 勧誘の邪魔しないでよ」
「ハァハァ言いながら、契約書とペンを手に契約をさせようとするアホなあるじを止めただけだが」
「そんな変態なことしてないわよ! 先生にとって有益な話だと思って持ち掛けているの」
「リリーの言う通り有益な話だと思うけど、先生の意思を無視したらダメだよ」
「アリーシャまでそんなこと言うの。酷いわ」
 シクシクとウソ泣きをしていたら、またしてもハリセンで頭をしばかれた。
「ガリオン、あんたあるじに対する態度じゃないでしょう!」
「今は授業中なので学友ですよー。先生もハッキリ嫌なら断らないと、良いように解釈して契約結ばせようとしますよ」
 ガリオンは、ビシッとハリセンを私に向けて失礼なことを宣った。
 それに対し、アリーシャもうんうんと頷いている。
「二人共酷くない? じゃあ、家庭教師しつつ研究者という事で……」
「悪化しているじゃねーかよ!」
「ふぎゃっ!」
 容赦なくハリセンで頭を叩くのは止めて欲しい。
 アホな頭が、これ以上アホになったらどうしてくれる。
 恨みがましい目でガリオンを睨んでいると、そのやり取りを見ていたテプレノン男爵がクスクスと笑みを零していた。
「ふふ…本当に仲がよろしいのですね」
「まあね! 私の親友たちだもの」
 ふふんっと胸を張って答える私に、テプレノン男爵は少し遠い目をして私たちを見ていた。
「少し羨ましいですね」
「研究者になれば、必然的に人と接する機会も増えますし、お抱えの職人は凝り性なので気が合う人が出来ると思いますよ。是非、研究者に!」
 ビラッと契約書とペンを見せると、テプレノン男爵は首を横に振った。
「家庭教師をしながら研究者をするのは難しいので遠慮させて頂きます」
 キッパリ断られてしまった。
 だが、これで諦める私ではない!
「じゃあ、学園に入れば家庭教師もお役御免になるので是非うちの研究者になって下さいね! あっ! 後、良いアイディアが浮かんだら相談に乗って下さい。相談料は払いますので」
「良いですよ。役に立つかは分かりませんが」
 仕方がないなと苦笑されたが、将来の研究者候補を手に入れることが出来た。
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