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幼少期

痩せたら美少女になったウンディーネ

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 結論から言うと、ウンディーネのダイエットには成功した。
 無駄なぜい肉は取れ、スレンダーな美少女へと変貌した。
 しかし、いかせん胸が小ぶりなのだ。
 ノームはウンディーネの存在を疎んでいた為、ダイエットの過程を見る事すらせず屋敷に住む従者の部屋を転々と移動していた。
 苦節1ヶ月で、ここまで劇的に痩せられたことが脅威である。
 糖分や脂質の高いものを抑えたダイエット食は、元々人の食事を基礎に考えていたのでダイエットに悩める女性に大うけしてくれた。
 また、運動方法もある程度痩せる間は水中歩行をさせた。
 足に負担がかかるのを軽減するためだ。
 後は、ぜい肉を筋肉に変更させるために前世の記憶で流行った何とかブートキャンプを試してみたらヒーヒー言いながら遣って退けた。
 誰でも死ぬ気でやれば大抵のことはこなせる事を実証してくれて、デブ猫からスレンダー猫へと変化したが目つきの悪さは相変わらずだった。
 食生活で肌質が改善されたが、老けて見えるのは肌の手入れが悪いからではと思い直し洗顔やスキンケアのイロハを叩きこんだ。
 水を司る精霊だけあって、親和性があったのだろう肌は見違えるほど美しくなった。
 ウンディーネから得られる水は、とっても美味しく何の用途に使っても上質なものを作り出してくれる。
「大分変ったけど、ノームの好みとは離れているなぁ」
「だから、嫌だったのに」
「でも、ノームに逃げられることは無くなったじゃん」
「そうだけど……」
「まあ、世間一般論で言えば綺麗だよ。ただ、ウンディーネに足りないのは『あざとさ』だと思う」
「あざとさ? 何それ」
 あざといと言われても、日本語固有の表現なのでどう説明したら良いものか。
「ウンディーネはプライドが高くて近寄りがたい雰囲気が出ているの。その纏う空気を柔らかくするだけで好感度は上がるよ」
「よく分らないけど、そういうものかしら」
「まあ、実際に見て貰った方が早いか。明日、王城に行く予定があるから見せてあげるよ。擬態しなければ、他の人には見えないからね。王城にいる時は、声を掛けられても返事出来ないからね」
「ふーん」
 興味があるのか、ないのかよく分からない返事を返され大丈夫かなと少し心配になった。


 翌日、王城へ行って王妃教育を受けている姿を見せた。
 ウンディーネは、家でいる時と王城にいる時の表情の差にドン引きしていた。
「これが、あざとさと言うの?」
とブツブツ呟いている。
 王子と一緒の講義は、能面のようにスンとしている私に不穏なものを感じ取ったのか距離を置いて観察している。
 帝王学や経営学、外交のための諸外国の歴史や言語を学ぶ間、私と王子の間にほぼ会話はない。
 紙にカリカリと授業内容を要点を絞ってメモを取る私に対し、アルベルトはメモさえ取らずただ聞いているだけである。
「殿下、ナリス国最大の輸出品は何になりますか?」
「知らん」
 欠伸をかみしめながら答えるアルベルトに対し、講師は私に同じ質問をしてきた。
「リリアン様、お分かりになりますかな?」
「通信魔法具ですわ。最近は、魔鉄道というものを開発したとか噂を聞いてますわ。もし、それが本当なら少し厄介ですわね」
「正解です。では、魔鉄道が厄介と思われるのですか?」
「魔法武装国家と名乗るだけあって、好戦的なお国柄ですわ。イーサント国の輸出品である鉱物が無ければ、ほぼ作れない代物ですもの。かの国に潤沢な資源がない為、もし戦争の準備を進めているとしたら我が国土を欲してもおかしくないのです。魔鉄道は、遠い場所をたった数時間で移動出来る大人数を運ぶ代物と聞き及んでいます。もし、それが戦争に使われたら物資や人材をたった数時間で移動させることが可能になるのですよ。我が国の機動力は、駿馬くらいですからね。到底太刀打ち出来ませんわ。空を飛べる道具を開発したら、それに対抗しうることが可能かもしれません」
 国中に物資を運ぶためにはレールを蜘蛛の巣のように張り巡らせる必要があるだろう。
 それこそ莫大なお金がかかるので、精々重要な場所に最低限の魔鉄道のレールを引くとは予想している。
 今は良好な関係を築いているが、いつ悪化するかも分からない現状は感化できない。
 文明の進化は、戦争するための道具を開発した産物で成り立っているようなものである。
 折角転生したのに、戦争とかごめんだ。
「素晴らしい!! 流石はリリアン様ですね。どこから情報を仕入れてくるのか不思議です」
 講師の賛辞に、私は張り付けた笑みを浮かべて沈黙する。
 全部、商売絡みで入ってくる産物である。
 そんな事を言おうものなら、アルベルトが盛大に叩いてくるだろう。
「その程度、俺でも答えられていた」
「知らないと仰られたのに、どの口が言うんですか。知ったかぶりするのは止めて、真面目に勉強をして下さい。殿下は凡人なのですから、メモをお取りになって予習復習するべきですよ」
と苦言を呈したら、思いっきり睨まれた。
 まあ、いつもの事だから良いんだけどね。
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