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幼少期
馬鹿王子、感謝を覚える
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「お嬢様、次はどこへ行きますか?」
「珍しいものが見たい…です」
「珍しいものですね」
王都では取り扱ってない品が沢山ある。
私は魔法具や専門書を探したりするのが好きだ。
アルベルトは、専門書類は論外だろう。
そうすると、魔法具か?
魔力が無くても、魔石で動く物は沢山ある。
「ここから、少し歩いたところに噴水が御座います」
「噴水を見てどうする、のですか」
「ただの噴水ではありません。丁度、面白い物が見れますよ」
はぐれられても困るので、手を繋いで噴水まで歩く。
その間も、アルベルトはキョロキョロと辺りを見渡している。
完全にお上りさん状態だ。
噴水の真ん中には、ウンディーネの像が建てられている。
「綺麗な彫刻ではあるが、普通の噴水だぞ」
「お嬢様、言葉遣いが雑ですよ。まあ、見てて下さい」
懐中時計を見ながら、十秒前からカウントダウンを始める。
ゼロと言った瞬間、軽快な音楽と共にウンディーネ像がゆっくりと動き始める。
まるで音楽に合わせて、クルクルと回っている。
からくり時計の原理を組み合わせた噴水に、アルベルトは大きく口を開いて噴水を見つめていた。
曲が終わり、ウンディーネの動きも止まる。
「この噴水は、朝の八時から夜の八時まで一時間ごとに音楽と共に像が動くのですよ。曲も時間毎に変わります。待ち合わせの人気スポットの一つです」
因みに、噴水の制作時に夜八時の曲を『蛍の光』にするべきだと、大プッシュしてねじ込みました。
理由は、『リア充爆発しろ。はよ帰れ』という細やかな嫌がらせである。
「王都でも見たことないぞ…です」
「語尾にですを付ければ、敬語ではありません。マナー講師に適任な方がいらっしゃいます。勉強、しましょうね」
あのクソババアを召喚したくはないが、アルベルトの言葉遣いを正すためにも来て貰って早めに矯正した方が良いだろう。
性格に難ありだが、超一流のマナー講師であることには変わりない。
アルベルトの心がうっかりヘシ折られるかもしれないが、散々サボったツケが回ってきたと言いくるめれば他の授業に対して危機感を持つかもしれない。
「マナーの勉強はしているだ…でしょう」
「授業を毎回ボイコットしていた人が何を仰ってますか。大丈夫です。超一流の講師です。安心して下さい」
その身体と心の保証はしないがな!
笑みを浮かべて圧をかけると、押し黙った。
「お嬢様、噴水の仕掛けのような物がお好みでしたら魔法具を見るのも楽しいかもしれません。先ほどの曲に興味がおありでしたら、オルゴールなど如何でしょう?」
「オルゴールとは何…ですか?」
「機械仕掛けにより自動的に楽曲を演奏する楽器のことで御座います。生産出来るようになったのは、ここ最近なので王都にはまだ流通してないと思います。曲の種類はまだ少ないですが、国歌や聖歌はありますよ。ご案内致しましょうか?」
「ああ」
アルベルトがオルゴールに興味を抱いたのは少し驚いたが、何事にも体験だ。
私の商会に連れて行き、VIPルームにアルベルトを通して見本のオルゴールを持ってこさせる。
「質素な箱に見えるぞ」
「これは、ご自身で絵を描いたり彫ったりして世界でたった一つのオルゴールを作るものになります。絵が描かれていたり、凝った彫刻がされている物は贈答品になる事が多いのでお値段が張るのですよ。手作りオルゴールでも、お値段は金貨五枚は必要になります」
「こんな小さい箱がか!?」
「その中に、精巧な機械が入っているのです。実際に手に取って見て下さい」
見本のオルゴールを手に取り、蓋を開けると小さな小物が入れられるように設計されている。
箱の三分の一ほど占領している部分の上蓋を開くと、精密な機械が隙間なく埋められている。
「お嬢様、箱の裏にネジがありますので巻いてみて下さい」
「こうか?」
アルベルトは、私に言われた通りネジを巻き手を離すとユーフェリアの聖歌が流れた。
一小節だけではあるが、オルゴールの独特の音にアルベルトは聞き入っている。
「如何ですか?」
「悪くはない」
「それは、よう御座いました。機械はとても精密で精巧に作られております。部品一つ作るのに、相当な技術が必要になります。また、手作りのため大量生産出来ないのです。だから、原価だけでも金貨一枚は必要になります」
「原価とは何だ?」
「製品…この場合は、オルゴールです。オルゴールに掛かった費用のことを指します。この街で購入する場合、原価+制作費+手間賃が掛かってます。これを金貨五枚で購入したとして、王都で売ろうとした場合、王都までの移動に掛かった費用が上乗せされるため、更に値が張ります」
「王都では、まだ販売してないのだろう?」
「商会としては販売していません。お嬢様が王都で売るとしたら、この街と同じ値段で売っても儲けどころか、損してしまいます」
ここでオルゴールを見つけて、先見の目がある商人が買い付けて王都で販売している可能性はあるが、敢えて伝えないでおく。
言うと、説明が面倒臭いことになる。
「言われてみればそうだな。少しでも高い値段で売りたい」
「高すぎると売れませんので、程よく利益が出るところで売るのが手堅い商売の仕方ではあります。適正な価格で買い取り売るのが、一流の商人なのですよ」
「勉強になった。これを買いたいが、お金が足りない……」
財布を取り出し、お金を数えて終えたアルベルトは、シュンと肩を落としている。
「お嬢様、いくらお持ちですか?」
「銅貨三枚、青銅貨十枚、銀貨十二枚」
「では、いくら足りませんか?」
「金貨三枚・銀貨七枚・銅貨六枚だ」
「正解です。計算が早くなりましたね。そんな頑張り屋なお嬢様に、私からのプレゼントです。不足分は、私が出します。大事になさって下さい」
そう言うと、アルベルトの顔が明るくなった。
「お……」
「お?」
「……お前にしては、悪くない」
上から目線の謎の誉め言葉に、まだまだ教育が足りてないなと実感する。
「お嬢様、こういう時はありがとうと言うものですよ」
アルベルトは、目を泳がせて暫し沈黙の後に初めて私に『ありがとう』と言った。
「珍しいものが見たい…です」
「珍しいものですね」
王都では取り扱ってない品が沢山ある。
私は魔法具や専門書を探したりするのが好きだ。
アルベルトは、専門書類は論外だろう。
そうすると、魔法具か?
魔力が無くても、魔石で動く物は沢山ある。
「ここから、少し歩いたところに噴水が御座います」
「噴水を見てどうする、のですか」
「ただの噴水ではありません。丁度、面白い物が見れますよ」
はぐれられても困るので、手を繋いで噴水まで歩く。
その間も、アルベルトはキョロキョロと辺りを見渡している。
完全にお上りさん状態だ。
噴水の真ん中には、ウンディーネの像が建てられている。
「綺麗な彫刻ではあるが、普通の噴水だぞ」
「お嬢様、言葉遣いが雑ですよ。まあ、見てて下さい」
懐中時計を見ながら、十秒前からカウントダウンを始める。
ゼロと言った瞬間、軽快な音楽と共にウンディーネ像がゆっくりと動き始める。
まるで音楽に合わせて、クルクルと回っている。
からくり時計の原理を組み合わせた噴水に、アルベルトは大きく口を開いて噴水を見つめていた。
曲が終わり、ウンディーネの動きも止まる。
「この噴水は、朝の八時から夜の八時まで一時間ごとに音楽と共に像が動くのですよ。曲も時間毎に変わります。待ち合わせの人気スポットの一つです」
因みに、噴水の制作時に夜八時の曲を『蛍の光』にするべきだと、大プッシュしてねじ込みました。
理由は、『リア充爆発しろ。はよ帰れ』という細やかな嫌がらせである。
「王都でも見たことないぞ…です」
「語尾にですを付ければ、敬語ではありません。マナー講師に適任な方がいらっしゃいます。勉強、しましょうね」
あのクソババアを召喚したくはないが、アルベルトの言葉遣いを正すためにも来て貰って早めに矯正した方が良いだろう。
性格に難ありだが、超一流のマナー講師であることには変わりない。
アルベルトの心がうっかりヘシ折られるかもしれないが、散々サボったツケが回ってきたと言いくるめれば他の授業に対して危機感を持つかもしれない。
「マナーの勉強はしているだ…でしょう」
「授業を毎回ボイコットしていた人が何を仰ってますか。大丈夫です。超一流の講師です。安心して下さい」
その身体と心の保証はしないがな!
笑みを浮かべて圧をかけると、押し黙った。
「お嬢様、噴水の仕掛けのような物がお好みでしたら魔法具を見るのも楽しいかもしれません。先ほどの曲に興味がおありでしたら、オルゴールなど如何でしょう?」
「オルゴールとは何…ですか?」
「機械仕掛けにより自動的に楽曲を演奏する楽器のことで御座います。生産出来るようになったのは、ここ最近なので王都にはまだ流通してないと思います。曲の種類はまだ少ないですが、国歌や聖歌はありますよ。ご案内致しましょうか?」
「ああ」
アルベルトがオルゴールに興味を抱いたのは少し驚いたが、何事にも体験だ。
私の商会に連れて行き、VIPルームにアルベルトを通して見本のオルゴールを持ってこさせる。
「質素な箱に見えるぞ」
「これは、ご自身で絵を描いたり彫ったりして世界でたった一つのオルゴールを作るものになります。絵が描かれていたり、凝った彫刻がされている物は贈答品になる事が多いのでお値段が張るのですよ。手作りオルゴールでも、お値段は金貨五枚は必要になります」
「こんな小さい箱がか!?」
「その中に、精巧な機械が入っているのです。実際に手に取って見て下さい」
見本のオルゴールを手に取り、蓋を開けると小さな小物が入れられるように設計されている。
箱の三分の一ほど占領している部分の上蓋を開くと、精密な機械が隙間なく埋められている。
「お嬢様、箱の裏にネジがありますので巻いてみて下さい」
「こうか?」
アルベルトは、私に言われた通りネジを巻き手を離すとユーフェリアの聖歌が流れた。
一小節だけではあるが、オルゴールの独特の音にアルベルトは聞き入っている。
「如何ですか?」
「悪くはない」
「それは、よう御座いました。機械はとても精密で精巧に作られております。部品一つ作るのに、相当な技術が必要になります。また、手作りのため大量生産出来ないのです。だから、原価だけでも金貨一枚は必要になります」
「原価とは何だ?」
「製品…この場合は、オルゴールです。オルゴールに掛かった費用のことを指します。この街で購入する場合、原価+制作費+手間賃が掛かってます。これを金貨五枚で購入したとして、王都で売ろうとした場合、王都までの移動に掛かった費用が上乗せされるため、更に値が張ります」
「王都では、まだ販売してないのだろう?」
「商会としては販売していません。お嬢様が王都で売るとしたら、この街と同じ値段で売っても儲けどころか、損してしまいます」
ここでオルゴールを見つけて、先見の目がある商人が買い付けて王都で販売している可能性はあるが、敢えて伝えないでおく。
言うと、説明が面倒臭いことになる。
「言われてみればそうだな。少しでも高い値段で売りたい」
「高すぎると売れませんので、程よく利益が出るところで売るのが手堅い商売の仕方ではあります。適正な価格で買い取り売るのが、一流の商人なのですよ」
「勉強になった。これを買いたいが、お金が足りない……」
財布を取り出し、お金を数えて終えたアルベルトは、シュンと肩を落としている。
「お嬢様、いくらお持ちですか?」
「銅貨三枚、青銅貨十枚、銀貨十二枚」
「では、いくら足りませんか?」
「金貨三枚・銀貨七枚・銅貨六枚だ」
「正解です。計算が早くなりましたね。そんな頑張り屋なお嬢様に、私からのプレゼントです。不足分は、私が出します。大事になさって下さい」
そう言うと、アルベルトの顔が明るくなった。
「お……」
「お?」
「……お前にしては、悪くない」
上から目線の謎の誉め言葉に、まだまだ教育が足りてないなと実感する。
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