82 / 181
幼少期
教会の財政を確認する前に整理が必要になってしまった
しおりを挟む
ユーフェリアの財務室は、腐海の森だった。
難易度を下げて四桁の計算をさせたが、何時まで経っても答えが返ってこないので、四則演算を一週間以内に覚えて貰うことにした。
財務にいる席を置いている神官や巫女だけでなく、ゆくゆくは教会に仕える者全てを対象にすると宣言した。
一週間後に成果が出せない者は配置換えすると発表したら、これまで財務部で働いていた者からクレームが来た。
「今の体制のままでも、やってこれました。いくら聖女様でも横暴が過ぎます」
「どなたかしら? わたくし、意見して良いとは申し上げておりませんでしてよ」
「それは……」
「まず、お名前を教えて下さらない?」
「ショーン・シェリーです」
「ありがとう御座います。ショーン殿、わたくしは無能が大嫌いなのです。この散乱した書類の中から大切な契約書や帳簿を見つけられるのですか? 探す労力の方が、大変だという事くらい分かってますでしょう。それとも、書類を偽造するおつもりで? このまま働きたいなら、わたくしが教える四則演算を覚えて頂かなくてはなりません。強制ではありませんが、優秀な人材と入れ替えるのはトップとして至極まともな考えですわ」
私に噛みついた神官の顔は覚えた。
一週間後に残っていられるかは、ショーンの努力次第だろう。
「法王様、計算の指南役はアングロサクソン家から派遣致しますわ。平等に勉強が出来るように時間を調整をお願いしますわ。わたくしは、出来るだけこの書類の山を片付けます」
精霊を通して計算ができる者とソロバン・帳簿用の紙を持ってくるようにお願いした。
派遣された人に関しては、四則演算が出来るようになった人数分だけ大銀貨一枚支給する旨も付け加えると意外と乗ってくれる人が多くて助かった。
直ぐに動けるのが五人なので、本部までご足労願った。
その間、私は空き箱を用意して貰い分別を行った。
まずは必要か不要かの二択で行う。
不要なものの中から、契約書や必要な書類が紛れてないか確認して処分させる。
必要なものから、契約書だけ抜き出して別の箱に入れる。
「貴方は、契約書を古い順番から重ねて一年毎に分けてこの箱に入れて頂戴」
「この仕切りは何でしょうか?」
「出っ張っているところに神聖年号を書くの。箱の表面に『契約書何年~何年分』と書いておけば探すのに苦労しないでしょう」
「成るほど。確かに分かりやすいし、探しやすいです」
仕分け作業で丸一日潰れた。
我が家の従事者たちが、書類の束を持って教会の門を叩いたと連絡が来たので出迎えに行った。
「ユリア、貴女も来ていたのね」
「旦那様より暴走しないかも兼ねてのみは……お手伝いです」
お前、今見張りって言いそうになったよな?
ジト目でユリアを見ると、目を泳がせている。
「それより、帳簿用紙をありったけ持ってきましたが何をなさるんですか?」
「ああ、教会の財務を覗かせて貰ったらグチャグチャだったからテコ入れしようと思って」
そう答えると、ユリアの目が死んだ魚のように変貌した。
「私、帰って良いですか?」
「駄目よ。来たなら手伝いなさい。財務に携わっていた者達に、四則演算を覚えさせた人数分だけ大銀貨一枚特別給付されるわよ。ここで働いている間も給金は発生するし、稼ぐチャンスだと思うのだけど」
「やります!」
相変わらず現金な奴だ。
「帳簿用紙は、そこの机の上に置いておいて頂戴。足りなくなる前に連絡を入れるわ。貴方達は一週間、教会で泊って彼らに付きっ切りで教えてあげて。6桁の計算が出来るようになったら者から、戻ってきて良いわ」
「聖女様は、その間はどうなさるのですか?」
「わたくし? わたくしは、この部屋に泊まり込んで書類を片付けるわ。ソファーもあるし」
私の答えにアングロサクソン家の従事者以外は、大層驚いている。
「いけません。身体に触ります」
「ちゃんと寝るわよ。見張りは付けてくれれば良いから。さっさと、ここを片付けないと収支が分からないじゃない。それに変な契約とか交わしていたりしたら、わたくしに迷惑がかかるのよ。分かったら、さっさと出て行きなさい。仕事の邪魔よ」
財務室に居た人間を全員追い出して、精霊に入って来れない様に見張りを頼んだ。
「さあ、チート無双の時間よ」
索敵魔法の応用で対象物を契約書のみに絞ると、情報量が半端なかった。
流れてくる情報に頭に鈍痛が走るが、我慢して書類の山から契約書のみをより分けた。
「ノーム、これくらいの箱を作って欲しいんだけど」
「呼んだか? その程度なら下級精霊でも作れるだろう」
「下級精霊達には、他にやって貰いたいことがあるからノームに頼んでいるの。仕切り板も作れる? こんな感じで薄い板」
「出来るぞ。強度はどうする?」
「軽くて硬いやつでお願い。出っ張りの部分は年号を入れてくれる?」
「了解した」
私は、精霊達に手伝って貰いながら書類整理を片っ端から行った。
難易度を下げて四桁の計算をさせたが、何時まで経っても答えが返ってこないので、四則演算を一週間以内に覚えて貰うことにした。
財務にいる席を置いている神官や巫女だけでなく、ゆくゆくは教会に仕える者全てを対象にすると宣言した。
一週間後に成果が出せない者は配置換えすると発表したら、これまで財務部で働いていた者からクレームが来た。
「今の体制のままでも、やってこれました。いくら聖女様でも横暴が過ぎます」
「どなたかしら? わたくし、意見して良いとは申し上げておりませんでしてよ」
「それは……」
「まず、お名前を教えて下さらない?」
「ショーン・シェリーです」
「ありがとう御座います。ショーン殿、わたくしは無能が大嫌いなのです。この散乱した書類の中から大切な契約書や帳簿を見つけられるのですか? 探す労力の方が、大変だという事くらい分かってますでしょう。それとも、書類を偽造するおつもりで? このまま働きたいなら、わたくしが教える四則演算を覚えて頂かなくてはなりません。強制ではありませんが、優秀な人材と入れ替えるのはトップとして至極まともな考えですわ」
私に噛みついた神官の顔は覚えた。
一週間後に残っていられるかは、ショーンの努力次第だろう。
「法王様、計算の指南役はアングロサクソン家から派遣致しますわ。平等に勉強が出来るように時間を調整をお願いしますわ。わたくしは、出来るだけこの書類の山を片付けます」
精霊を通して計算ができる者とソロバン・帳簿用の紙を持ってくるようにお願いした。
派遣された人に関しては、四則演算が出来るようになった人数分だけ大銀貨一枚支給する旨も付け加えると意外と乗ってくれる人が多くて助かった。
直ぐに動けるのが五人なので、本部までご足労願った。
その間、私は空き箱を用意して貰い分別を行った。
まずは必要か不要かの二択で行う。
不要なものの中から、契約書や必要な書類が紛れてないか確認して処分させる。
必要なものから、契約書だけ抜き出して別の箱に入れる。
「貴方は、契約書を古い順番から重ねて一年毎に分けてこの箱に入れて頂戴」
「この仕切りは何でしょうか?」
「出っ張っているところに神聖年号を書くの。箱の表面に『契約書何年~何年分』と書いておけば探すのに苦労しないでしょう」
「成るほど。確かに分かりやすいし、探しやすいです」
仕分け作業で丸一日潰れた。
我が家の従事者たちが、書類の束を持って教会の門を叩いたと連絡が来たので出迎えに行った。
「ユリア、貴女も来ていたのね」
「旦那様より暴走しないかも兼ねてのみは……お手伝いです」
お前、今見張りって言いそうになったよな?
ジト目でユリアを見ると、目を泳がせている。
「それより、帳簿用紙をありったけ持ってきましたが何をなさるんですか?」
「ああ、教会の財務を覗かせて貰ったらグチャグチャだったからテコ入れしようと思って」
そう答えると、ユリアの目が死んだ魚のように変貌した。
「私、帰って良いですか?」
「駄目よ。来たなら手伝いなさい。財務に携わっていた者達に、四則演算を覚えさせた人数分だけ大銀貨一枚特別給付されるわよ。ここで働いている間も給金は発生するし、稼ぐチャンスだと思うのだけど」
「やります!」
相変わらず現金な奴だ。
「帳簿用紙は、そこの机の上に置いておいて頂戴。足りなくなる前に連絡を入れるわ。貴方達は一週間、教会で泊って彼らに付きっ切りで教えてあげて。6桁の計算が出来るようになったら者から、戻ってきて良いわ」
「聖女様は、その間はどうなさるのですか?」
「わたくし? わたくしは、この部屋に泊まり込んで書類を片付けるわ。ソファーもあるし」
私の答えにアングロサクソン家の従事者以外は、大層驚いている。
「いけません。身体に触ります」
「ちゃんと寝るわよ。見張りは付けてくれれば良いから。さっさと、ここを片付けないと収支が分からないじゃない。それに変な契約とか交わしていたりしたら、わたくしに迷惑がかかるのよ。分かったら、さっさと出て行きなさい。仕事の邪魔よ」
財務室に居た人間を全員追い出して、精霊に入って来れない様に見張りを頼んだ。
「さあ、チート無双の時間よ」
索敵魔法の応用で対象物を契約書のみに絞ると、情報量が半端なかった。
流れてくる情報に頭に鈍痛が走るが、我慢して書類の山から契約書のみをより分けた。
「ノーム、これくらいの箱を作って欲しいんだけど」
「呼んだか? その程度なら下級精霊でも作れるだろう」
「下級精霊達には、他にやって貰いたいことがあるからノームに頼んでいるの。仕切り板も作れる? こんな感じで薄い板」
「出来るぞ。強度はどうする?」
「軽くて硬いやつでお願い。出っ張りの部分は年号を入れてくれる?」
「了解した」
私は、精霊達に手伝って貰いながら書類整理を片っ端から行った。
1
あなたにおすすめの小説
婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが
マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって?
まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ?
※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。
※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【完結】16わたしも愛人を作ります。
華蓮
恋愛
公爵令嬢のマリカは、皇太子であるアイランに冷たくされていた。側妃を持ち、子供も側妃と持つと、、
惨めで生きているのが疲れたマリカ。
第二王子のカイランがお見舞いに来てくれた、、、、
【完結】結婚して12年一度も会った事ありませんけど? それでも旦那様は全てが欲しいそうです
との
恋愛
結婚して12年目のシエナは白い結婚継続中。
白い結婚を理由に離婚したら、全てを失うシエナは漸く離婚に向けて動けるチャンスを見つけ・・
沈黙を続けていたルカが、
「新しく商会を作って、その先は?」
ーーーーーー
題名 少し改変しました
【完結】お飾りではなかった王妃の実力
鏑木 うりこ
恋愛
王妃アイリーンは国王エルファードに離婚を告げられる。
「お前のような醜い女はいらん!今すぐに出て行け!」
しかしアイリーンは追い出していい人物ではなかった。アイリーンが去った国と迎え入れた国の明暗。
完結致しました(2022/06/28完結表記)
GWだから見切り発車した作品ですが、完結まで辿り着きました。
★お礼★
たくさんのご感想、お気に入り登録、しおり等ありがとうございます!
中々、感想にお返事を書くことが出来なくてとても心苦しく思っています(;´Д`)全部読ませていただいており、とても嬉しいです!!内容に反映したりしなかったりあると思います。ありがとうございます~!
断罪前に“悪役"令嬢は、姿を消した。
パリパリかぷちーの
恋愛
高貴な公爵令嬢ティアラ。
将来の王妃候補とされてきたが、ある日、学園で「悪役令嬢」と呼ばれるようになり、理不尽な噂に追いつめられる。
平民出身のヒロインに嫉妬して、陥れようとしている。
根も葉もない悪評が広まる中、ティアラは学園から姿を消してしまう。
その突然の失踪に、大騒ぎ。
彼女にも愛する人がいた
まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。
「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」
そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。
餓死だと? この王宮で?
彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。
俺の背中を嫌な汗が流れた。
では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…?
そんな馬鹿な…。信じられなかった。
だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。
「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。
彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。
俺はその報告に愕然とした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる