お前は、ヒロインではなくビッチです!

もっけさん

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幼少期

そんなに上手くいくわけがない

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 タイプライター導入を勧めているが、やはりアナログじゃないと無理って人がいる。
 新しいもの好き、珍しいもの好きには、タイプライターは堪らない代物らしい。
 アナログ派でもタイプライターよりも作業が早いなら文句はないので、現時点では黙認している。
 行く行くは、全て手書きはサインのみでタイプライターに切り替える予定である。
 キーボードの配列は、前世を真似て作ったので私とロベルトがブラインドタッチで打てている。
 それ以外は、遅いなりに頑張って取得を目指しているようだ。
 神言しんごんに関しては残念ながら作るのを諦めた。
 片仮名と平仮名は可能だが、漢字は不可能だ。
 パソコンが作れたら苦労しないのになぁ~なんて夢を見てました。
 書類整理にヒーヒー言いながら、不正の塊を持って現法王と打ち合わせの最中です。
「財務室を整理した時に、水増し請求したり人身売買や他種族の売買を交わした書類が残っています。これは、どういうことでしょうか? この国でも奴隷制度は認められていますが、奴隷にも人権はありますので最低限の保証はされます。この書類を見る限り、正規の奴隷商から買い取ったり売り払ったりしたわけではないですね」
 水増し請求に関しては、まだ許容範囲内だ。
 どこの会社でも大なり小なり、そういう不正が起きることはある。
 しかし、完全に法にも人道にも外れているものを聖職者がやったとなれば教会の信用は地に落ちる。
 前回の件もあるため、私が聖女で居続ける限りは不祥事が起こるのは避けたい。
 聖女降板が一番望ましいのだが、多分そうさせてくれないだろう。
 第二の人生を歩むにしてもネームバリューは売っておきたいし、クリーンなイメージをつけておきたい。
「教会も一枚岩ではありません。何らかの事情を抱えた貴族達の半数以上が上層部を占めています。私達のように成り上がりの者とでは、発言権が違うのです」
 教会内部でも派閥争いがあり、貴族かそうでないかでも派閥があるのか。
 クソ面倒臭いな。
「財務室では、法王様の息が掛かった者で倹約的な方を選んで就けて下さい。水増し請求してくる輩に対して、はっきりと突き返せる人であれば結構。杜撰な予算の組み方だったり、不透明な請求書に関して追及して文句を言ってくるようであれば、私に直接直訴しろと言えば黙るでしょう」
「本当に直訴してきたらどうするのですか?」
 不安気な法王に対し、私はニッコリと笑みを浮かべる。
「勿論、お相手致しますわ」
 心をボキボキにへし折って蹴り返すがな!
 問題は、不正規で入手した奴隷と売り払ってしまった奴隷についてだ。
 書類の束を机の上に置き、ふぅと溜息を吐く。
「さて、問題はこれです。不正入手してしまった奴隷たちに関してです。こちらは、まだやりようがあります。しかし、売り払ってしまった者に関しては頭が重いですわ」
 どういう経緯で売り払ったのか、売り払った相手は誰か、売り払ったお金はどうしたのか等の問題点が山ほどある。
「奴隷の売買に関して、関係者全員破門にした上で国の法律で裁いて貰うしかないでしょう」
「そうすれば、非人道的な行為をしたことが明るみになりますよ」
 法王は、苦虫を噛みつぶしたような顔で内々に処理をした方が良いのではと暗に言ってくる。
 わたしもことを荒立てたくないのは同じだが、万が一内々に処理をした後でスキャンダルとして発覚した時の方が教会は大打撃を負う。
 お布施も強制していないので、経営は厳しいと言えるだろう。
「非難を受けるのは覚悟の上ですわ。今のうちに、この件を何とかしないと後々厄介になりましてよ。国にも協力を得なければなりません。そちらに関しては、わたくしから渡りをつけます。貴方は、調べられるところまでこの件に関する情報を集めて下さい。関与した者が逃げないように、捕縛もお願いします」
「……分かりました。聖女様、宜しくお願いします」
「最善を尽くしますわ。わたくしは、一度実家に戻ります」
 不正契約書の束をA4サイズのショルダーバッグに詰めて席を立つ。
「御機嫌よう」
 軽く会釈をして部屋を出ると、いつの間に居たのかユリアが立っていた。
「お嬢様、この後に入っている予定は如何なさいますか?」
「教会関連は、全てキャンセルよ。ヘリオト商会に関するものはある?」
「メロディア工房から通信具零式のデモが出来たと連絡がありました。アルベルト様からお手紙が届いています」
「メロディア工房に寄ってから実家に戻るわ。殿下からの手紙を頂戴」
 歩きながら手を差し出すと、ユリアに窘められた。
「今渡したら歩きながら目を通すでしょう。ダメです。せめて馬車に乗ってからにして下さい」
「時間は有限よ。前任者の尻拭いが終わらない。時間がいくらあっても足りないわ!」
 ショルダーバッグの裾をギリギリと握りしめる私に、ユリアも苦笑いしている。
「そんな状況でも、商会の仕事やアルベルト様のことに関しては手を抜かないんですね」
「当たり前よ! 将来、わたくしの可愛い天使たちがお金に苦労せずに生活できる基盤を作るのが目的なんだから。聖女に関しては、アリーシャがいるし頃合いを見計らってトンズラするつよりよ」
 聖女で祀られてあげるのは、精々アルベルトとの婚約が終了するまでの間だけだ。
 商会を通じて他種族との交流も深め、平和とまでは行かなくても不可侵条約を結ぶのが私の仕事だ。
 魔族に関しても、知らないことばかりだ。
 『勝てば官軍、負ければ賊軍』という言葉がある。
 本当の歴史は闇に葬り去られている。
 魔王が世界を滅ぼそうとした理由も知りたい。
 魔族との繋がりが出来れば良いのだが、ぶっちゃけ彼らがどこにいるかは分からない。
 聖女巡礼って題して、世界各国を巡る旅に出て情報を集めようかしら。
 そんな事をツラツラ考えながら、ユリアが用意した馬車に乗り込みメロディア工房へと向かった。
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