お前は、ヒロインではなくビッチです!

もっけさん

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エルブンガルド魔法学園 中等部

領地運営を任されました

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 貴族の縮図とも言うべき学園で、友人であるキャロル・チャイルドが保守派の陣頭指揮を執りを白薔薇の会の完全崩壊を回避した。
 では、実際の政界ではどうなったか言うと、面白いものでチャイルド家を後押しするようにレイス家が支えている構図になっている。
 レイス家としても、保守的で比較的まともな思考を持った貴族をと考えた結果なのだろう。
 何より、次代を担う若者が友好関係を結んでいるところにも着目したようだ。
 字面通りオブシディアン家は没落した。
 国のトップとトップ2に睨まれれば、誰も寄ってこないだろう。
 更に付け加えるならば、私への慰謝料はリズベットもといベアトリズの分に対して相殺は行ったが、それ以外の罰金やら何やらで金を毟り取られて家計は火の車を通り越して風前の灯火の状態である。
 新たな保守派の筆頭貴族が見つかったこともあり、オブシディアン家を潰すことには何ら困らなないだろうと国の重鎮たちは判断した。
 結論から言うと、オブシディアン家は没落し貴族籍を剥奪、領地没収の上に罰金返済のために鉱山での労働を家族仲良く強いられることが決定した。
 大人でも逃げ出す場所に子供まで送り込むのかと非難を浴びそうな事ではあるが、彼等がやっていた事を考えれば斬首が一番望ましい刑だと言える。
 しかし、そんな奴らを斬首するだけ時間と人件費の無駄であると主張し、どうせなら最期まで国の為に働いて貰えば良いじゃないかと唆し鉱山送りにしたのは私である。
 オブシディアン家の財産を持ち逃げされないように、彼等に雇われていた従者達にも犯罪が無かったか調べれば、色々と出て来た。
 まさに犯罪が巣食う場所だった。
 事前に調べて一斉検挙したのが功を成したのか、火事場泥棒をされる前で良かった。
 オブシディアン家の資産は国が管理し、領地に関しては当面の間は国が直轄することになった。
 そこまでは割と普通の判決だろう。
 直轄するにあたり、王妃は私を呼びつけて「何事にも経験が必要だから」と宣い領地を丸ごと押し付けて来た。
 学園に通いながら領地を運営しろとかふざけんなよ、クソが! とは言葉にしなかった私は偉いと思う。
「わたくしに領地の運営は難しいですわ。そもそも知識がありません。学園にも通っておりますし、聖女という仕事もございます。とてもではありませんが、領地まで手が回りませんわ」
 それ以外にも商人や作家の顔を持っているのに、これ以上過労死するようなことはしたくないと断固拒否の姿勢を取った。
「先ほども申し上げた通り、何事にも経験でしてよ。あの領地は、亜人を奴隷として働かせるのが当たり前という風習があります。どこからか攫ってきては、重労働させたり時には慰め者にしたりしていると報告が上がってきました。その『どこからか』といえば、聡明な貴女なら分かるでしょう」
 成るほど、ユーフェリア教会とずぶずぶの関係だったと言うわけか。
 一度外国に奴隷として売り出し、気に入った者を買い戻す。
 法律に抵触していないと主張することは出来るだろう。
 その部分だけを見れば、オブシディアン家を罰することは出来ない。
 教会の膿を出し切っていない上に、売った先が解ればこちらも色々とやり易い。
 王妃は、それを見越した上で領地経営の提案をしてきたと考えても良いだろう。
「拝命承りました」
「そう言ってくれると信じてましたよ。シュバルツの手伝いをしていたとは言え、貴女にとっては初めてで戸惑うこともあるでしょう。補佐をつけます。安心なさい」
 王妃は、そう言うとナイスミドルな初老の男性を紹介した。
「彼は、ロジャ-・フェディーラ男爵。法衣貴族ではありますが、財務に関してとても優秀な方です。挨拶をなさって」
「リリアン様、ロジャ-・フェディーラとお申します。宜しくお願いします」
 王妃に促され、フェディーラは綺麗な挨拶をした。
「心強いですわね」
 この言葉は本心でもあるが、フェディーラは私につけた監視役とも言えるだろう。
 丸投げしようと思えば出来る。
 王妃もそれを見越して、この男を送り込んできたに違いない。
 しかし、私はそんなことはしない。
 王妃に借りを作れば、何を要求されるか分からないからだ。
 精々、この男を利用するだけ利用させて貰うとしよう。
「オブシディアン家の領地は、魔法武装国家ナリスと隣接していましたわね。これと言った特産物はありませんが、魔物が多発する場所の一つともあり、毎年魔物の間引きをするために予算を組むように上申していたとかなんとか。実際、この目で領地の状態を見ない事には立て直しをすることも出来ませんわ。引き受けた以上、全力で繁栄に取り組みます。しかし、学園に通っていること自体が足枷になってしまうので、飛び級して最終学歴まで取得してしまおうかとも思っているのですが宜しいでしょうか? 殿下も随分とマシになってきましたので、ここら辺で一度私の手から離れた方が良いと思います。彼のお守りは、ご友人達にお任せするのは如何でしょうか?」
 アルベルトのお守りをするよりも、領地経営をする方が楽しそうだということも一つだが、何よりアルベルトに合わせて勉強をするのが苦痛で仕方がない。
 私にとって復習でしかなく、新しい知識を身に着けるには物足りなかったのだ。
「携帯で指示を出すだけなら、離れていても出来るのではなくて?」
「現場を何も見ずに指示を出して、何か問題が思った時に何の対策も取れず被害が拡大させても良いと言うのであれば、わたくしはそうしますが?」
 そう切り返して答えると、王妃はそれも想定内と言わんばかりに笑う。
「リリアンならそう言うと思っていたわ。飛び級は許可し卒業しても構いませんが、一応学園に在籍している形はとっておきなさい。アレの奇行を諫められるのは、立場上は貴女しかいないのだから」
「分かりました。高等部までの課程は全て取得して、院生として席を残すことに致します。その間に、フェディーラ殿に元オブシディアン領の実情を報告書に纏めて提出して下さい。齟齬があるといけないので、こちらも別の者を手配し精査しますわ」
 その言葉にフェディーラの表情が曇ったが、いくら王妃の紹介とはいえ信用も信頼も築けてない相手の言葉を鵜呑みにするほど私は馬鹿ではない。
「お任せして宜しいですね?」
「畏まりました」
 小娘相手に不満はあるのだろうが、先ほどのように態度に出さなくなったのは、王妃が推薦するだけの人物だ。
「王妃様、フェディーラ殿と共に旧オブシディアン領について運営方針を固める準備を致しますので失礼しますわ。準備が整いましたら、改めて草案を提出させて頂きます」
「リリアン、頼りにしているわ」
「光栄に余るお言葉です」
 私はドレスの裾を軽く持ち上げ蛙スクワットで一礼して部屋を後にした。
 取り合えず、飛び級の手続きも出来ないのでパパンにこの事を報告しないと。
 私は、フェディーラを連れて父の書斎に突撃をした。
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