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エルブンガルド魔法学園 中等部
エンバス兄妹の受難3
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ガリオンと役割を交代したアリーシャは、早速アルベルトにくっ付いて回ることにした。
席もクラスメイトにお願いして変わって貰い隣の席で監視する。
休憩時間に席を立とうものなら、すかさず追いかけて後について行く。
そうすると必然的にコレットとの接触が増えた。
「アル様、ランチしませんか? 私、頑張ってお弁当作って来たんです」
お弁当という聞きなれない言葉に疑問符が頭の上を飛び交っていたが、コレットの仕草で直ぐに分かる。
差し出された箱を見る限り農夫たちが昼食の為に持ち歩く携帯食ではないか。
「アルベルト様、現在ヘリオト商会が学食用にレシピを提供しております。確か、本日から新レシピを食べられますが如何なさいますか?」
シレッと嘘を吹き込むとアルベルトは信じたのか、学食にすると言い出した。
まさかお弁当を断られるとは思ってもみなかったのだろう。
コレットは、ビシッと石のように固まっている。
「アルベルト様、早く行きませんと売り切れてしまいます」
「そうだな」
アルベルトは、コレットに目もくれず食堂へと歩き出している。
コレットとアルベルトは禁断の恋を育んでいると噂されているが、今のやり取りを見る限りではそんな様子は欠片も見当たらない。
浮気写真はガッツリ押さえてあるので言い逃れは出来ないのだが、アリーシャが抑止力となりアルベルトが態とコレットとの距離を置いたのか判断するには材料が足りない。
賑わう食堂で昼食を取り、小休憩毎にも目を光らせる。
ガリオンは、休憩毎にコレットの浮気現場を探りに出かけているようでアルベルトの機嫌は上々だ。
問題は、放課後だ。
案の定と言うべきか、コレットが教室に突撃してきた。
「アル様、一緒に宿題しましょう!」
アリーシャが傍にいるのを見て、凄い顔になっている。
嫉妬に狂った女そのもので、鬼の形相でアリーシャを睨んでいる。
「そうだな。お前は、来なくて良いぞ」
アルベルトが、アリーシャに向かってそう言うとコレットはガッツポーズをしている。
他にも見てくれの良い女子は五万といるのに、何であんなお花畑なパッパラパーを選んだのか不思議でならない。
「分かりました。しかし、どうしましょう。リリアン様より、殿下の勉学の進捗度合いによって差し入れをするようにと伺っております。一緒に勉強が出来ないのであれば、確認のしようもありませんね。残念です」
残念そうな顔を作って溜息を吐き去ろうとすると、アルベルトが肩を掴んで聞いてきた。
「差し入れとはなんだ?」
「ヘリオト商会の商品です。来月号のカタログが、実は私の手元にあります。お嬢様が、アルベルト様が品行方正に頑張って勉強なさっているならご褒美として差し入れしても良いという権限を頂きました。ですが、進捗の確認もままならない上に、変なご令嬢とのゴシップが学園中に浸透しているので差し入れどころではありませんね。残念です」
教科書の間に挟んだカタログの端をチラ見せすると、アルベルトはコロッと態度を変えて来た。
「コレットとは、友人関係でやましいことはしていない! 変な勘ぐりはするな」
焦ったように抗議するアルベルトに対し、コレットはショックを受けている。
あれだけ馬鹿ップルを周囲に見せつけていたのに、物でコロッと掌を変えるアルベルトの屑っぷりにショックが大きかったのだろうか。
「兄を排除してまで、そのご令嬢と一緒にいたいんですよね?」
「していない!」
「態々、青薔薇の会で王族しか使えないサロンを使って兄を排除していたじゃありませんか」
「あれは、あいつが一々俺のすることにケチをつけてくるからだ」
癇癪を起したように喚くアルベルトに、追い詰めるのはここまでにしておこうとアリーシャは追及の手を緩めた。
追い詰め過ぎてこれ以上の醜態を曝されても困る。
「兄は、扱く全うな事を申し上げたまでです。リリアン様は、アルベルト様に異性の友人がいらっしゃっても咎めるようなことはなさいません。しかし、度が過ぎた行動を取れば浮気と誤解されてしまうことをお忘れなく。その方とどうしても一緒に勉強したいと仰るのであれば、リリアン様の側近である私か兄を傍に置いて下さいませ。私達兄妹は、アルベルト様のサポート役として態々魔法科に転入したのです」
笑みを浮かべて殺気交じりの圧力をかけると、コレットは小さな悲鳴を上げて震え、アルベルトは若干顔を引きつらせて頭を縦に振っている。
「では、私もご一緒して宜しいですか?」
「あ、ああ……」
畳みかけるように放課後の勉強会に同伴する許可を捥ぎ取り、何とか第一の難関はクリア出来たと言えるだろう。
アルベルトからの言質は取った。
差し入れについては、後で経費で落とせないかリリアンと交渉することになるだろう。
現時点でアルベルトに差し入れするとすれば、鉄拳制裁くらいでヘリオト商会の商品が彼の手元に届くのは随分と後になりそうだ。
席もクラスメイトにお願いして変わって貰い隣の席で監視する。
休憩時間に席を立とうものなら、すかさず追いかけて後について行く。
そうすると必然的にコレットとの接触が増えた。
「アル様、ランチしませんか? 私、頑張ってお弁当作って来たんです」
お弁当という聞きなれない言葉に疑問符が頭の上を飛び交っていたが、コレットの仕草で直ぐに分かる。
差し出された箱を見る限り農夫たちが昼食の為に持ち歩く携帯食ではないか。
「アルベルト様、現在ヘリオト商会が学食用にレシピを提供しております。確か、本日から新レシピを食べられますが如何なさいますか?」
シレッと嘘を吹き込むとアルベルトは信じたのか、学食にすると言い出した。
まさかお弁当を断られるとは思ってもみなかったのだろう。
コレットは、ビシッと石のように固まっている。
「アルベルト様、早く行きませんと売り切れてしまいます」
「そうだな」
アルベルトは、コレットに目もくれず食堂へと歩き出している。
コレットとアルベルトは禁断の恋を育んでいると噂されているが、今のやり取りを見る限りではそんな様子は欠片も見当たらない。
浮気写真はガッツリ押さえてあるので言い逃れは出来ないのだが、アリーシャが抑止力となりアルベルトが態とコレットとの距離を置いたのか判断するには材料が足りない。
賑わう食堂で昼食を取り、小休憩毎にも目を光らせる。
ガリオンは、休憩毎にコレットの浮気現場を探りに出かけているようでアルベルトの機嫌は上々だ。
問題は、放課後だ。
案の定と言うべきか、コレットが教室に突撃してきた。
「アル様、一緒に宿題しましょう!」
アリーシャが傍にいるのを見て、凄い顔になっている。
嫉妬に狂った女そのもので、鬼の形相でアリーシャを睨んでいる。
「そうだな。お前は、来なくて良いぞ」
アルベルトが、アリーシャに向かってそう言うとコレットはガッツポーズをしている。
他にも見てくれの良い女子は五万といるのに、何であんなお花畑なパッパラパーを選んだのか不思議でならない。
「分かりました。しかし、どうしましょう。リリアン様より、殿下の勉学の進捗度合いによって差し入れをするようにと伺っております。一緒に勉強が出来ないのであれば、確認のしようもありませんね。残念です」
残念そうな顔を作って溜息を吐き去ろうとすると、アルベルトが肩を掴んで聞いてきた。
「差し入れとはなんだ?」
「ヘリオト商会の商品です。来月号のカタログが、実は私の手元にあります。お嬢様が、アルベルト様が品行方正に頑張って勉強なさっているならご褒美として差し入れしても良いという権限を頂きました。ですが、進捗の確認もままならない上に、変なご令嬢とのゴシップが学園中に浸透しているので差し入れどころではありませんね。残念です」
教科書の間に挟んだカタログの端をチラ見せすると、アルベルトはコロッと態度を変えて来た。
「コレットとは、友人関係でやましいことはしていない! 変な勘ぐりはするな」
焦ったように抗議するアルベルトに対し、コレットはショックを受けている。
あれだけ馬鹿ップルを周囲に見せつけていたのに、物でコロッと掌を変えるアルベルトの屑っぷりにショックが大きかったのだろうか。
「兄を排除してまで、そのご令嬢と一緒にいたいんですよね?」
「していない!」
「態々、青薔薇の会で王族しか使えないサロンを使って兄を排除していたじゃありませんか」
「あれは、あいつが一々俺のすることにケチをつけてくるからだ」
癇癪を起したように喚くアルベルトに、追い詰めるのはここまでにしておこうとアリーシャは追及の手を緩めた。
追い詰め過ぎてこれ以上の醜態を曝されても困る。
「兄は、扱く全うな事を申し上げたまでです。リリアン様は、アルベルト様に異性の友人がいらっしゃっても咎めるようなことはなさいません。しかし、度が過ぎた行動を取れば浮気と誤解されてしまうことをお忘れなく。その方とどうしても一緒に勉強したいと仰るのであれば、リリアン様の側近である私か兄を傍に置いて下さいませ。私達兄妹は、アルベルト様のサポート役として態々魔法科に転入したのです」
笑みを浮かべて殺気交じりの圧力をかけると、コレットは小さな悲鳴を上げて震え、アルベルトは若干顔を引きつらせて頭を縦に振っている。
「では、私もご一緒して宜しいですか?」
「あ、ああ……」
畳みかけるように放課後の勉強会に同伴する許可を捥ぎ取り、何とか第一の難関はクリア出来たと言えるだろう。
アルベルトからの言質は取った。
差し入れについては、後で経費で落とせないかリリアンと交渉することになるだろう。
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