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エルブンガルド魔法学園 中等部
エバンス兄妹の受難4
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アルベルトを言い包めて、何とか勉強会にガリオンとアリーシャの参加を認めさせた。
少々強引だったかなと思ったが、これくらいしない勉強会がどのように行われているのか確認すらできなかっただろう。
鞄に教科書を詰めて準備は万端だ。
「アルベルト様、参りましょう」
「あ、ああ」
若干引き攣った顔のアルベルトの隣を歩くと、コレットが甘ったるい声で追いかけてくる。
「アル様、待って下さ~い。やっと追いついた。置いて行くなんて酷いです! プンプン」
コレットは、アリーシャを押し退けてアルベルトの腕に絡みついた。
「歩くのが遅いのが悪い」
「もぉ、そういう意地悪を言う子はメッですよ」
目の前で繰り広げられるお花畑な会話に、アリーシャは頭痛と吐き気に苛まれた。
コレットのツッコミどころ満載の行動に、なに平然と受け入れているんだ馬鹿ベルト!! とアリーシャは心の中で罵った。
しかも、プンプンとか口に出して言う奴は初めて見たぞ。
「……コレット嬢、人を突き飛ばして謝りもしないのは失礼ではありませんか?」
ガリオンがコレットのマナーの悪さを何度も指摘し、アルベルトに煙たがられているのは分かっている。
だから、敢てその事には触れずにアリーシャ自身に実害を受けたことに対する抗議をした。
「そんなことしてないわ。言いがかりよ! アルベルト様、この人怖いですぅ」
「おい、コレットを虐めるな! お前は従者だろう。立場を弁えろ」
誰が、いつお前の従者になったんだ。
アリーシャの笑顔が引き攣る。
ああ、殴りたい。
怪鳥の如くギャーギャーと喚き散らすアルベルトに、アリーシャは殺気を押し殺した笑みを浮かべて問いかけた。
「アルベルト様、私は先ほどまで貴方様の隣を歩いていましたよね?」
「ああ、それがどうした?」
「では、何故その場所に彼女がいるんでしょうか?」
「それは、俺を追いかけてきたからだろう」
アルベルトの的外れな回答に、アリーシャの頬が引き攣る。
拳をギュッと握りしめて、再度問い直す。
「確かに彼女は、アルベルト様を追いかけてきました。反対側が空いているにも関わらず、私とアルベルト様の間に割って入ったから彼女は隣にいるのではありませんか?」
「ん? まあ、そうなるな」
「つまり、私は彼女に突き飛ばされて後ろへ追いやられました。ここまでは、理解出来ましたか?」
ニコニコと笑みを浮かべて再度問いかけると、アルベルトも漸く気付いたのか小さく「あ…」と零している。
「態とでなければ突き飛ばされる理由がありません。アルベルト様、よく考えて答えて下さい。私がリリアン様で、今と同じ状況に陥ったら私に言ったように『虐めるな』と仰られるのですか?」
「……言わない」
「それは何故でしょうか?」
「コレットが故意に突き飛ばしたから」
「良く出来ました。正解です。では、こういう時は何て言うのが正しいでしょうか?」
笑みを浮かべながらアルベルトをジーッと見ていると、アルベルトはコレットに向かって叱責した。
「コレット、アリーシャに謝れ。何で態と突飛ばそうとした」
「あ、アル様? どうなさったんですか?」
アルベルトの言葉に、コレットは困惑している。
今までは何してもコレットの肩を持っていたアルベルトが、アリーシャの肩を持つとは考えなかったのだろう。
「いいから謝れ」
「でも……だって……」
「あ・や・ま・れ」
アルベルトのイライラが伝わったのか、コレットがアリーシャを見て悔しそうに小さな声で謝った。
「……ごめんなさい」
「そこは『突き飛ばしてしまい申し訳ありませんでした』ですよ。アルベルト様に免じて許しますが、淑女たるもの妄りに男性にベタベタと身体をくっ付けるものではありません。学園に入る前に、マナーを習わなかったのですか?」
謝罪を受け取るついでに、アリーシャはコレットの非常識な振る舞いに対し注意をする。
「マナーは、ちゃんと受けているわ! 貴女にそんな事を言われる筋合いはない。アル様、そう思うでしょう?」
うるうると目を潤ませてアルベルトに縋りつくコレットに対し、縋りつかれた本人も頷いている。
「コレット嬢が、平民上がりのお嬢さんだという事は存じております。だからこそ、貴族の中で生きる為にマナーを重んじて頂かなければ取り返しのつかない事になるのです。アルベルト様も、友人であるコレット嬢の身を案じるのであればマナーを守るように注意するのが、お友達というものではありませんか?」
一方的に非難するのではなく、『コレットの為を思って~』を前提に話す方法でアルベルトを諭す。
お友達と強調したのも、アルベルトの変なプライドを傷つけない為だ。
「そういうものなのか?」
「駄目なものは駄目だと仰る勇気も時には必要です。アルベルト様が、コレット嬢の立場に立った時、同じことをなさるのですか?」
「……しないな」
「何故、しないのでしょうか?」
「………いくら親しくても不敬に当たる。後、はしたないからだ」
コレットと自分の立場を置き換えて考えた結果、正解を導き出したアルベルトにアリーシャが畳みかける。
「分かっているのであれば、注意出来ますよね? 兄が、散々コレット嬢に注意していた理由もご理解頂けましたか?」
「ああ、理解した。コレット、離れろ。淑女が、軽々しく男に引っ付くものではない」
アルベルトは、コレットの腕を振りほどいて彼女から距離を取っている。
アルベルトの女装癖がなければ、立場を入れ替えて考えることなど出来なかっただろう。
「アルベルト様、時間が押しています。さあ、移動しましょう」
「ああ、そうだな」
茫然自失しているコレットを放置して、アリーシャはアルベルトと共に青薔薇の会のサロンへと向かって歩き出した。
少々強引だったかなと思ったが、これくらいしない勉強会がどのように行われているのか確認すらできなかっただろう。
鞄に教科書を詰めて準備は万端だ。
「アルベルト様、参りましょう」
「あ、ああ」
若干引き攣った顔のアルベルトの隣を歩くと、コレットが甘ったるい声で追いかけてくる。
「アル様、待って下さ~い。やっと追いついた。置いて行くなんて酷いです! プンプン」
コレットは、アリーシャを押し退けてアルベルトの腕に絡みついた。
「歩くのが遅いのが悪い」
「もぉ、そういう意地悪を言う子はメッですよ」
目の前で繰り広げられるお花畑な会話に、アリーシャは頭痛と吐き気に苛まれた。
コレットのツッコミどころ満載の行動に、なに平然と受け入れているんだ馬鹿ベルト!! とアリーシャは心の中で罵った。
しかも、プンプンとか口に出して言う奴は初めて見たぞ。
「……コレット嬢、人を突き飛ばして謝りもしないのは失礼ではありませんか?」
ガリオンがコレットのマナーの悪さを何度も指摘し、アルベルトに煙たがられているのは分かっている。
だから、敢てその事には触れずにアリーシャ自身に実害を受けたことに対する抗議をした。
「そんなことしてないわ。言いがかりよ! アルベルト様、この人怖いですぅ」
「おい、コレットを虐めるな! お前は従者だろう。立場を弁えろ」
誰が、いつお前の従者になったんだ。
アリーシャの笑顔が引き攣る。
ああ、殴りたい。
怪鳥の如くギャーギャーと喚き散らすアルベルトに、アリーシャは殺気を押し殺した笑みを浮かべて問いかけた。
「アルベルト様、私は先ほどまで貴方様の隣を歩いていましたよね?」
「ああ、それがどうした?」
「では、何故その場所に彼女がいるんでしょうか?」
「それは、俺を追いかけてきたからだろう」
アルベルトの的外れな回答に、アリーシャの頬が引き攣る。
拳をギュッと握りしめて、再度問い直す。
「確かに彼女は、アルベルト様を追いかけてきました。反対側が空いているにも関わらず、私とアルベルト様の間に割って入ったから彼女は隣にいるのではありませんか?」
「ん? まあ、そうなるな」
「つまり、私は彼女に突き飛ばされて後ろへ追いやられました。ここまでは、理解出来ましたか?」
ニコニコと笑みを浮かべて再度問いかけると、アルベルトも漸く気付いたのか小さく「あ…」と零している。
「態とでなければ突き飛ばされる理由がありません。アルベルト様、よく考えて答えて下さい。私がリリアン様で、今と同じ状況に陥ったら私に言ったように『虐めるな』と仰られるのですか?」
「……言わない」
「それは何故でしょうか?」
「コレットが故意に突き飛ばしたから」
「良く出来ました。正解です。では、こういう時は何て言うのが正しいでしょうか?」
笑みを浮かべながらアルベルトをジーッと見ていると、アルベルトはコレットに向かって叱責した。
「コレット、アリーシャに謝れ。何で態と突飛ばそうとした」
「あ、アル様? どうなさったんですか?」
アルベルトの言葉に、コレットは困惑している。
今までは何してもコレットの肩を持っていたアルベルトが、アリーシャの肩を持つとは考えなかったのだろう。
「いいから謝れ」
「でも……だって……」
「あ・や・ま・れ」
アルベルトのイライラが伝わったのか、コレットがアリーシャを見て悔しそうに小さな声で謝った。
「……ごめんなさい」
「そこは『突き飛ばしてしまい申し訳ありませんでした』ですよ。アルベルト様に免じて許しますが、淑女たるもの妄りに男性にベタベタと身体をくっ付けるものではありません。学園に入る前に、マナーを習わなかったのですか?」
謝罪を受け取るついでに、アリーシャはコレットの非常識な振る舞いに対し注意をする。
「マナーは、ちゃんと受けているわ! 貴女にそんな事を言われる筋合いはない。アル様、そう思うでしょう?」
うるうると目を潤ませてアルベルトに縋りつくコレットに対し、縋りつかれた本人も頷いている。
「コレット嬢が、平民上がりのお嬢さんだという事は存じております。だからこそ、貴族の中で生きる為にマナーを重んじて頂かなければ取り返しのつかない事になるのです。アルベルト様も、友人であるコレット嬢の身を案じるのであればマナーを守るように注意するのが、お友達というものではありませんか?」
一方的に非難するのではなく、『コレットの為を思って~』を前提に話す方法でアルベルトを諭す。
お友達と強調したのも、アルベルトの変なプライドを傷つけない為だ。
「そういうものなのか?」
「駄目なものは駄目だと仰る勇気も時には必要です。アルベルト様が、コレット嬢の立場に立った時、同じことをなさるのですか?」
「……しないな」
「何故、しないのでしょうか?」
「………いくら親しくても不敬に当たる。後、はしたないからだ」
コレットと自分の立場を置き換えて考えた結果、正解を導き出したアルベルトにアリーシャが畳みかける。
「分かっているのであれば、注意出来ますよね? 兄が、散々コレット嬢に注意していた理由もご理解頂けましたか?」
「ああ、理解した。コレット、離れろ。淑女が、軽々しく男に引っ付くものではない」
アルベルトは、コレットの腕を振りほどいて彼女から距離を取っている。
アルベルトの女装癖がなければ、立場を入れ替えて考えることなど出来なかっただろう。
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「ああ、そうだな」
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