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エルブンガルド魔法学園 中等部
エンバス兄妹の受難5
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サロンで宿題を広げて勉強を始めていると、コレットが少し遅れて入って来た。
「アル様、酷いですぅ。置き去りにしなくても良いじゃないですかぁ!」
そう言いながら、アルベルトの左隣に陣取り腕を掴んでプリプリ怒ってますアピールをしている。
「人聞きの悪いことを言うな。さっさと歩けば良いだけだろう」
とアルベルトはアリーシャが先ほど指摘したことをマルッと忘れている。
「コレット嬢、殿下は現在宿題をなさっているので話しかけるのは止めて下さい」
そう指摘すると、コレットはボロボロと大粒の涙を零した。
「なん…で…そんな意地悪なこと言うんですかぁ…」
同性相手に泣いたところで何も響かないが、アルベルトはコレットの泣き顔を見てギョッとした顔をしている。
「コレットを泣かすなんて、何て酷い奴なんだ! やっぱり、リリアンと同じで性根が腐っているんだな」
目を吊り上げて怒るアルベルトの死角から、コレットの口角がニヤリと上がっている。
「アル様、私悲しいですぅ」
「コレットを虐める奴は、俺が排除してやるからな」
陳腐な三文芝居を見せられているアリーシャの堪忍袋の緒がプッツンと切れた。
アリーシャは、その場にスッと立つと拳をテーブルの上に振り下ろした。
ドゴォッと鈍い音と共に、大理石で出来たテーブルは豪快にひびが入った。
その光景に唖然とする二人に、音を聞いて何事かと駆けつけたアルベルトの学友達も参事を目の当たりにして目が点になっている。
「……もう我慢できない。我慢しない! 私は、貴方の従者ではありません。リリアン様の従者です。我が主への侮辱……勿論、報告させて頂きます。私と兄が、何故アルベルト様の為に態々学科まで変えたと思っているんですか? 今までは、王族として敬意を持って接してきましたが止めます。リリアン様式で接します」
スンッと表情を無くしたアリーシャは、スッと鞄からハリセンを取り出しアルベルトの後頭部をぶん殴った。
スパーンッと良い音がした。
アリーシャがハリセンをスイングすると、ビュンビュンと風を切る音がしている。
「な、な、何をする!! 不敬だぞ!! 王族に暴行を加えるなど何を考えてる!!!」
顔を真っ赤にして怒鳴るアルベルトに、
「そうよ! アル様に何てことをするの!!」
とコレットも同調して喚き散らしている。
「エンバス嬢、流石に暴力沙汰は見過ごせません」
「サロンのテーブルを破壊するのもどうかと思います」
スピネルとカルセドニーが困惑した顔でアリーシャに苦言を呈している。
アリーシャは、鞄の中から一枚の紙を出した。
「何だこれは?」
ロンギヌスの疑問に、横からルークが顔を覗かせて読んで苦虫を噛み潰している。
そう、お馴染みの誓約書である。
今、彼等が女装に縛られている忌々しい紙を彷彿させる誓約書様である。
ルークがスピネル達に誓約書の内容を伝え、残念な者を見る目でアルベルトに視線を送っている。
理解出来ていないのは、アルベルト唯一人だ。
「アルベルト様、誓約書をよく読んでサインしましたか?」
「リリアンがしろと言うからサインしたが?」
リリアンに全幅の信頼を置いているのか、それとも怖いからサインしたのか定かではないが、あまりにも無責任なアルベルトの行動にスピネル達は大きな溜息を吐いた。
「アルベルト様、誓約書はきちんと読んでサインしないとダメですよ。その誓約書には、リリアン様が不在の時はアリーシャ・エバンスとガリオン・エバンスが殿下の教育係になり、必要に応じて叱責・体罰も止む無し。叱責や体罰が発生した場合は、不敬罪や暴行罪に問わないと約束する旨の事が書かれていますよ。他にも色々盛り込まれてますけど」
「そういうわけです。手を上げるのは非常に心苦しいですが、これも教育の一環。致し方ありません。サロンのテーブルは壊れてしまったので、暫く使えませんね。壊れてしまったテーブルは、アングロサクソン家が責任を持って弁償致します。テーブルが直るまでは、ヘリオトロープの会で押さえているサロンでお勉強をしましょう。宜しいですね?」
ハリセンで素振りしながら問いかけると、
「お前にそんな権限はないだろうが! 何を勝手な……ヒッ!!」
アリーシャの拳が、もう一度テーブルに振り下ろされ今度こそテーブルは全損した。
「先ほども申し上げたじゃありませんか。リリアン様式で接しますと。アングロサクソン家が、多額の寄付を学園に行っているのでテーブルの一つや二つ破壊したところで抗議は来ませんよ。ちゃんと業者を呼んで掃除させて新しいテーブルを用意します。リリアン様も、殿下の行動を報告すれば、何故テーブルの破壊に至ったのかは理解してくれる良い上司ですので、その辺りはご心配なく。でも、質のよい大理石のテーブルを搬入できるのは未定ですが」
ニコニコと笑みを浮かべながら殺気を撒き散らすアリーシャに、アルベルトは半泣きでコレットはガチ泣きしている。
「そういう訳なので皆様も大変お手数ですが、ヘリオトロープの会が押さえているサロンを一つ提供しますので、今からそこで勉強をなさって下さいませ」
アリーシャの笑顔の圧力に、屈した彼等は有無を言わさずにヘリオトロープの会が押さえているサロンへと移動することになった。
「アル様、酷いですぅ。置き去りにしなくても良いじゃないですかぁ!」
そう言いながら、アルベルトの左隣に陣取り腕を掴んでプリプリ怒ってますアピールをしている。
「人聞きの悪いことを言うな。さっさと歩けば良いだけだろう」
とアルベルトはアリーシャが先ほど指摘したことをマルッと忘れている。
「コレット嬢、殿下は現在宿題をなさっているので話しかけるのは止めて下さい」
そう指摘すると、コレットはボロボロと大粒の涙を零した。
「なん…で…そんな意地悪なこと言うんですかぁ…」
同性相手に泣いたところで何も響かないが、アルベルトはコレットの泣き顔を見てギョッとした顔をしている。
「コレットを泣かすなんて、何て酷い奴なんだ! やっぱり、リリアンと同じで性根が腐っているんだな」
目を吊り上げて怒るアルベルトの死角から、コレットの口角がニヤリと上がっている。
「アル様、私悲しいですぅ」
「コレットを虐める奴は、俺が排除してやるからな」
陳腐な三文芝居を見せられているアリーシャの堪忍袋の緒がプッツンと切れた。
アリーシャは、その場にスッと立つと拳をテーブルの上に振り下ろした。
ドゴォッと鈍い音と共に、大理石で出来たテーブルは豪快にひびが入った。
その光景に唖然とする二人に、音を聞いて何事かと駆けつけたアルベルトの学友達も参事を目の当たりにして目が点になっている。
「……もう我慢できない。我慢しない! 私は、貴方の従者ではありません。リリアン様の従者です。我が主への侮辱……勿論、報告させて頂きます。私と兄が、何故アルベルト様の為に態々学科まで変えたと思っているんですか? 今までは、王族として敬意を持って接してきましたが止めます。リリアン様式で接します」
スンッと表情を無くしたアリーシャは、スッと鞄からハリセンを取り出しアルベルトの後頭部をぶん殴った。
スパーンッと良い音がした。
アリーシャがハリセンをスイングすると、ビュンビュンと風を切る音がしている。
「な、な、何をする!! 不敬だぞ!! 王族に暴行を加えるなど何を考えてる!!!」
顔を真っ赤にして怒鳴るアルベルトに、
「そうよ! アル様に何てことをするの!!」
とコレットも同調して喚き散らしている。
「エンバス嬢、流石に暴力沙汰は見過ごせません」
「サロンのテーブルを破壊するのもどうかと思います」
スピネルとカルセドニーが困惑した顔でアリーシャに苦言を呈している。
アリーシャは、鞄の中から一枚の紙を出した。
「何だこれは?」
ロンギヌスの疑問に、横からルークが顔を覗かせて読んで苦虫を噛み潰している。
そう、お馴染みの誓約書である。
今、彼等が女装に縛られている忌々しい紙を彷彿させる誓約書様である。
ルークがスピネル達に誓約書の内容を伝え、残念な者を見る目でアルベルトに視線を送っている。
理解出来ていないのは、アルベルト唯一人だ。
「アルベルト様、誓約書をよく読んでサインしましたか?」
「リリアンがしろと言うからサインしたが?」
リリアンに全幅の信頼を置いているのか、それとも怖いからサインしたのか定かではないが、あまりにも無責任なアルベルトの行動にスピネル達は大きな溜息を吐いた。
「アルベルト様、誓約書はきちんと読んでサインしないとダメですよ。その誓約書には、リリアン様が不在の時はアリーシャ・エバンスとガリオン・エバンスが殿下の教育係になり、必要に応じて叱責・体罰も止む無し。叱責や体罰が発生した場合は、不敬罪や暴行罪に問わないと約束する旨の事が書かれていますよ。他にも色々盛り込まれてますけど」
「そういうわけです。手を上げるのは非常に心苦しいですが、これも教育の一環。致し方ありません。サロンのテーブルは壊れてしまったので、暫く使えませんね。壊れてしまったテーブルは、アングロサクソン家が責任を持って弁償致します。テーブルが直るまでは、ヘリオトロープの会で押さえているサロンでお勉強をしましょう。宜しいですね?」
ハリセンで素振りしながら問いかけると、
「お前にそんな権限はないだろうが! 何を勝手な……ヒッ!!」
アリーシャの拳が、もう一度テーブルに振り下ろされ今度こそテーブルは全損した。
「先ほども申し上げたじゃありませんか。リリアン様式で接しますと。アングロサクソン家が、多額の寄付を学園に行っているのでテーブルの一つや二つ破壊したところで抗議は来ませんよ。ちゃんと業者を呼んで掃除させて新しいテーブルを用意します。リリアン様も、殿下の行動を報告すれば、何故テーブルの破壊に至ったのかは理解してくれる良い上司ですので、その辺りはご心配なく。でも、質のよい大理石のテーブルを搬入できるのは未定ですが」
ニコニコと笑みを浮かべながら殺気を撒き散らすアリーシャに、アルベルトは半泣きでコレットはガチ泣きしている。
「そういう訳なので皆様も大変お手数ですが、ヘリオトロープの会が押さえているサロンを一つ提供しますので、今からそこで勉強をなさって下さいませ」
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