お前は、ヒロインではなくビッチです!

もっけさん

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エルブンガルド魔法学園 中等部

エバンス兄妹の受難8

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 唐突なアリーシャの行動に、ガリオンは大きな溜息を吐きながら登校していた。
 ガラッと教室のドアを開けると、アルベルトとコレットがこれでもかとイチャイチャしている。
「アルベルト様、朝っぱらから浮気ですか?」
 眉を顰めながら聞くと、コレットがパッと離れてこちらに向かってくる。
「ガリオン様、お早う御座います! 妹さんは、一緒じゃないんですか?」
「君には関係ない。それより、君のクラスは別だろう。教室に戻ったらどうだ」
 さっさと出て行けとドアに視線を向けるが、コレットはこちらの意図を理解せず擦り寄ってくる。
「授業が始まるまで時間があるじゃないですか」
「そういう問題じゃない。自主学習したければ、自分のクラスに行ってやれ」
「意地悪なこと言っちゃダメですよぉ。メッ、ですよ?」
 ちょんっと人差し指を唇に押し当ててくる。
 ゾワッと鳥肌が立ち、全身の毛穴がブワッと開いた。
「……意地悪とかそういう問題じゃない。お前の脳みそは、エタンメールチーズか?」
 コレットの手を払いのけて毒吐くが、当の本人には何一つ伝わってない。
「エタンメールチーズって何ですか?」
「……もういい。さっさと出て行け」
 制服の襟を掴みペイッと教室から摘まみ出した。
 しっかりと施錠も掛ける。
 ドンドンと扉を叩き喚くコレットを無視していると、ガンッと一際大きな音がしたかと思ったら悪態を吐いてどこかへ行ったようだ。
 施錠した鍵を解除すると、クラスメイトが入ってきて何事かと聞いてきた。
「アルベルト様にベッタリくっついていたから摘まみ出しただけだ」
と答えると、一同はアルベルトとガリオンを見て「朝からお疲れ様」と肩を叩き労ってくる。
 アルベルトはと言うと、コレットを追い出したことに対し切れることはなかったが、憮然とした態度を露わにしている。
 アリーシャがいたら、問答無用でハリセンで殴り飛ばされていただろう。
「アルベルト様、コレット嬢に対する態度を改めるようにアリーシャから言われているのではないですか?」
「友人の範囲で付き合っている。さっきも、コレットが分からない箇所を聞きに来ていただけだ」
 フンッと鼻を鳴らして言い返すアルベルトに、ガリオンはハァと大きな溜息を吐いた。
 こいつの中での『友人』というカテゴリーは、一体どうなっているんだろうか。
 考えただけでも頭痛がする。
「それは、勉強で分からない部分と言う事でしょうか?」
「そうだが、何か問題でもあるのか?」
「大ありです。分からない問題があるのであれば、教師に逐一確認するようにコレット嬢に言うべきです。万が一、間違ったことを教えて覚えてしまったらどうするんですか」
「知らん」
「知らんで済ませないで下さい。コレット嬢をご友人と呼ぶのであれば、責任を持って接して下さいと何度言えば分かるんですか? アルベルト様の一挙手一投足は、学園の全生徒が見ているという事を忘れないで下さい。模範になるべき人が、そんな無責任な態度を取るのは如何なものかと思います」
 ガリオンの苦言に対し、アルベルトが声を荒げた。
「あー、もう五月蠅い!! 口を開けばそればかりだな。俺に指図するな! 俺は、この国の王子だぞ!!」
 バンッと机を叩き癇癪を起すアルベルトに、周囲はまたかと観戦モードになっている。
「国は、リリアン様にアルベルト様の教育を任せています。そして、私はリリアン様よりアルベルト様の教育係代理を任された者です。言い換えれば、国から貴方の教育を任されています。指図ではなく、指摘をしただけです。いい加減聞き分けがないと……こうなりますよ」
 アルベルトの机に拳を振り下ろし、机を破壊する。
 手加減したので粉砕にはならなかったが、拳がアルベルトの膝すれすれに止まっている。
 アリーシャがリリアン式で接しているので、そろそろ自分も我慢する必要もないかとガリオンは思った。
 机から拳を引き抜き、木くずを手で払い除ける。
「ああ、もうこの机は使えませんね。取り合えず、アリーシャの机を使って授業受けて下さい。私は、この机を片付けてきます」
「はひ……」
 変な返事が返って来たが、馬鹿の相手をするのも面倒臭くなったガリオンは壊した机を担いで事務室へと向かった。
 結局、壊した机の代金はアングロサクソン家へ請求して貰うように手配して新しい机を持って教室に戻った。
 その間、アルベルトは縮こまって椅子に座っていたそうだ。
 アリーシャが登校したのは午後の授業からで、その間はずっとガリオンが自席からアルベルトをジーッと睨みつけながら監視していた。
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