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エルブンガルド魔法学園 中等部
制裁は過激に4
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教師に圧力を掛けて緊急全校集会を開いた。
生徒会主催でなく、私主催であることに勘のいい人は気付いただろう。
場所は、入学式で使用したダンスフロアだ。
流石に全校生徒を集めたとなると鮨詰め状態になっている。
魔法で作った即席の檀上の端には、学園長とアルベルトの二名が椅子に縛り付けられている。
アルベルトの後ろには、彼の学友達にも上がって貰った。
ダンスフロアの端には、教師陣が戦々恐々とこちらを見ている。
生徒たちは、今から一体何が始まるのかと騒めいていた。
私は、壇上に上がり全校生徒を見下ろす形で口上を述べる。
「エルブンガルド魔法学園の皆様方、急な集会にお集まり頂きありがとう御座います。アングロサクソン大公が一子、リリアン・アングロサクソンと申します。この度の全校集会は、由緒ある学園で起こった醜聞についての処罰と、その説明について皆様の貴重なお時間を割いて頂く形となりました。誠に申し訳ございません」
深々と頭を下げる私に、生徒だけでなく教師陣もザワザワし出す。
王家に次いで位の高い貴族が、堂々と人前で頭を下げて謝罪すること自体あってはならないことだ。
今回の醜聞は、悲しいかな婚約者(仮)の尻拭いをする私という態度を取らないと色々体裁が悪い。
詳細は伏せて通学しなかったので、大部分の人間が私の不在について何らかのマイナスな感情を持っているだろう。
顔を上げ、一連の騒動の際に学園不在だった理由を述べた。
「学園不在にしていた理由ですが端的に申し上げますと、我が身に降りかかった火の粉を払ったつもりが、うっかり潰してしまったオブシディアン家の領を治めるようにと勅命が下ったのです。国を統治するとはどういうことかを実践で学ぶようにとの計らいなのでしょう。わたくしが居なくても領地運営が回るようにしなければならなくなり、不本意では御座いましたが飛び級制度を使って院生として学園に席をおくことになりました。勿論、飛び級のために必要な試験はクリアしております。有能な部下を殿下の御傍に置いたのですが、あまり効果が無かったのが残念でなりません」
大きな溜息と共に、ギロリとアルベルトと学園長を睨みつける。
教会の醜聞を隠すには、言い訳をするよりもオブシディアン家を潰したと公言した方が幾分マシである。
「学園は社会の縮図と言われおります。わたくしは、身分をハッキリさせることが悪だとは申しません。ですが、身分を振りかざして良いとは思ってもおりません。高い身分の者は、弱者を守るためにあることを皆様も今一度心に留めておいて下さいませ。コレット・ピューレが殿下に取り入り、殿下も彼女を注意するどころか許容されていらっしゃった事で、多大なご迷惑をお掛けしたこと婚約者のわたくしから今一度心からの謝罪を申し上げます。本当に申し訳ありませんでした」
再度深々と頭を下げると、フロア内は喧騒が一瞬で静寂に変わった。
顔を上げて私は、壇上の中央から少し右にずれる。
パンパンと手を叩くと、ガリオンとアリーシャがサッと現れアルベルトと学園長を椅子ごと中央に移動させた。
唖然としているのは、アルベルトの学友たちも同じである。
「スピネル様、カウセドニー様、カエサル様、ルーク様、ロンギヌス様も、こちらにいらして」
さっさと来やがれクソども……とは、口が裂けても言いませんよ。
こいこいと手招きをすると、名指しで呼ばれた五名の顔色は悪い。
これからが本番だ。
「さて、本題に入りましょう。わたくしは、学園長より婚約者であることを理由に殿下へ罰を下すことをご依頼されました。殿下の態度がコレット・ピューレを増長し野放しにした結果、婚約を白紙になさなければならなくなった方々がいらっしゃいます。張本人は退学となりましたが、学園側は王族を退学させることを躊躇し謹慎処分で済ませているのが嘆かわしいことです。まず、殿下の罰を申し上げます。一つ、剃髪にする。二つ、騒動の証拠を押さえる為にかかった費用の全額負担。三つ、今回の件でお見合いにかかる費用の全額負担。四つ、コレット嬢への訴訟にかかる費用の全額負担を要求します。同じく、側近である貴方達も殿下と一緒に頭を丸めて下さいませ」
「何で私達までも剃髪にする必要があるんですか!?」
「いくら何でも横暴過ぎる!」
「そうだ、そうだ!」
やいのやいのと口々に騒ぎ出した馬鹿共に、私はこめかみに青筋を浮かべながら言った。
「側近ならば、主が道を誤った時には身体を張って止めるのも忠義です。コレットを遠ざける方法は幾らでもあったでしょう!」
と一喝してやった。
すると、まばらだった拍手が大きくなりフロア全体を拍手の音で溢れかえった。
側近達にも相当鬱憤が溜まっていたのだろう。
「……剃髪以外は、現実的じゃない。大体、何故殿下だけに金銭的な負担を要求するのですか?」
悪あがきとばかりに、スピネルが問いかけてくる。
「殿下の謝罪に青銅貨一枚の価値が、わたくしには見出せないからです。誰にでも一目で分かりやすい責任の取り方ですわ。子の不始末は、親が負うもの。王室費から捻出すれば何も問題はありません」
ハッと鼻で嗤うと、反論する気力も無くなったようだ。
「学園長は、在任中に大きな醜聞を二度も引き起こしてます。こちらは、学園長退任の署名ですわ。ザッと目を通しましたが、約六割が貴方の退任を要求しておりますの。その椅子は、空けて渡して下さいませ。後任は、賢者リチャード・スミス氏より推薦された方が着任する予定になっております。だから、ご安心なさって」
ニッコリと浮かべた笑みを浮かべると、あちらこちらで小さな悲鳴が上がった。
生徒会主催でなく、私主催であることに勘のいい人は気付いただろう。
場所は、入学式で使用したダンスフロアだ。
流石に全校生徒を集めたとなると鮨詰め状態になっている。
魔法で作った即席の檀上の端には、学園長とアルベルトの二名が椅子に縛り付けられている。
アルベルトの後ろには、彼の学友達にも上がって貰った。
ダンスフロアの端には、教師陣が戦々恐々とこちらを見ている。
生徒たちは、今から一体何が始まるのかと騒めいていた。
私は、壇上に上がり全校生徒を見下ろす形で口上を述べる。
「エルブンガルド魔法学園の皆様方、急な集会にお集まり頂きありがとう御座います。アングロサクソン大公が一子、リリアン・アングロサクソンと申します。この度の全校集会は、由緒ある学園で起こった醜聞についての処罰と、その説明について皆様の貴重なお時間を割いて頂く形となりました。誠に申し訳ございません」
深々と頭を下げる私に、生徒だけでなく教師陣もザワザワし出す。
王家に次いで位の高い貴族が、堂々と人前で頭を下げて謝罪すること自体あってはならないことだ。
今回の醜聞は、悲しいかな婚約者(仮)の尻拭いをする私という態度を取らないと色々体裁が悪い。
詳細は伏せて通学しなかったので、大部分の人間が私の不在について何らかのマイナスな感情を持っているだろう。
顔を上げ、一連の騒動の際に学園不在だった理由を述べた。
「学園不在にしていた理由ですが端的に申し上げますと、我が身に降りかかった火の粉を払ったつもりが、うっかり潰してしまったオブシディアン家の領を治めるようにと勅命が下ったのです。国を統治するとはどういうことかを実践で学ぶようにとの計らいなのでしょう。わたくしが居なくても領地運営が回るようにしなければならなくなり、不本意では御座いましたが飛び級制度を使って院生として学園に席をおくことになりました。勿論、飛び級のために必要な試験はクリアしております。有能な部下を殿下の御傍に置いたのですが、あまり効果が無かったのが残念でなりません」
大きな溜息と共に、ギロリとアルベルトと学園長を睨みつける。
教会の醜聞を隠すには、言い訳をするよりもオブシディアン家を潰したと公言した方が幾分マシである。
「学園は社会の縮図と言われおります。わたくしは、身分をハッキリさせることが悪だとは申しません。ですが、身分を振りかざして良いとは思ってもおりません。高い身分の者は、弱者を守るためにあることを皆様も今一度心に留めておいて下さいませ。コレット・ピューレが殿下に取り入り、殿下も彼女を注意するどころか許容されていらっしゃった事で、多大なご迷惑をお掛けしたこと婚約者のわたくしから今一度心からの謝罪を申し上げます。本当に申し訳ありませんでした」
再度深々と頭を下げると、フロア内は喧騒が一瞬で静寂に変わった。
顔を上げて私は、壇上の中央から少し右にずれる。
パンパンと手を叩くと、ガリオンとアリーシャがサッと現れアルベルトと学園長を椅子ごと中央に移動させた。
唖然としているのは、アルベルトの学友たちも同じである。
「スピネル様、カウセドニー様、カエサル様、ルーク様、ロンギヌス様も、こちらにいらして」
さっさと来やがれクソども……とは、口が裂けても言いませんよ。
こいこいと手招きをすると、名指しで呼ばれた五名の顔色は悪い。
これからが本番だ。
「さて、本題に入りましょう。わたくしは、学園長より婚約者であることを理由に殿下へ罰を下すことをご依頼されました。殿下の態度がコレット・ピューレを増長し野放しにした結果、婚約を白紙になさなければならなくなった方々がいらっしゃいます。張本人は退学となりましたが、学園側は王族を退学させることを躊躇し謹慎処分で済ませているのが嘆かわしいことです。まず、殿下の罰を申し上げます。一つ、剃髪にする。二つ、騒動の証拠を押さえる為にかかった費用の全額負担。三つ、今回の件でお見合いにかかる費用の全額負担。四つ、コレット嬢への訴訟にかかる費用の全額負担を要求します。同じく、側近である貴方達も殿下と一緒に頭を丸めて下さいませ」
「何で私達までも剃髪にする必要があるんですか!?」
「いくら何でも横暴過ぎる!」
「そうだ、そうだ!」
やいのやいのと口々に騒ぎ出した馬鹿共に、私はこめかみに青筋を浮かべながら言った。
「側近ならば、主が道を誤った時には身体を張って止めるのも忠義です。コレットを遠ざける方法は幾らでもあったでしょう!」
と一喝してやった。
すると、まばらだった拍手が大きくなりフロア全体を拍手の音で溢れかえった。
側近達にも相当鬱憤が溜まっていたのだろう。
「……剃髪以外は、現実的じゃない。大体、何故殿下だけに金銭的な負担を要求するのですか?」
悪あがきとばかりに、スピネルが問いかけてくる。
「殿下の謝罪に青銅貨一枚の価値が、わたくしには見出せないからです。誰にでも一目で分かりやすい責任の取り方ですわ。子の不始末は、親が負うもの。王室費から捻出すれば何も問題はありません」
ハッと鼻で嗤うと、反論する気力も無くなったようだ。
「学園長は、在任中に大きな醜聞を二度も引き起こしてます。こちらは、学園長退任の署名ですわ。ザッと目を通しましたが、約六割が貴方の退任を要求しておりますの。その椅子は、空けて渡して下さいませ。後任は、賢者リチャード・スミス氏より推薦された方が着任する予定になっております。だから、ご安心なさって」
ニッコリと浮かべた笑みを浮かべると、あちらこちらで小さな悲鳴が上がった。
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