148 / 181
エルブンガルド魔法学園 中等部
制裁は過激に3
しおりを挟む
クレーター状態になった地面を見ながら、被った土埃を払い除ける。
周囲をぐるりと見回すと、遠くの方からアリーシャとガリオンが走って来た。
「二人とも、久しぶりね。学園長退任の署名は集まっているかしら?」
「集まってます」
三日間で集まった署名の束をアリーシャが、サッと差し出してきた。
ザッとそれに目を通していたら、ガリオンが頭を抱えながらツッコミを入れてきた。
「アリーシャ、ナチュラルにスルーするなよ! 突如、上空から現れている時点で可笑しいだろう!!」
「スミス先生という前例を見たでしょう。流石に、同じようにとはいかなかったけれど。初めてにしては上出来じゃない?」
「そうですねー!」
飛び級の件で、精霊に頼んでスミスを連れて来て貰ったのを目の当たりにしているというのに、これくらいのことでガタガタ言うのだろうか。
「一応、先ほどの着地で巻き添えを喰らった人はいないようで良かったわ」
「駆けずり回りましたんで! まさか、訓練場に穴をあけるような帰還の仕方をされるとは思わなかった」
「軍馬で駆けても、数日は掛かるのよ。そんな時間と労力の無駄はしたくありません。それで、今回の元凶はどこにいるのかしら?」
コテンと首を傾げて聞くと、教室で待機していると返答が返って来た。
「逃げなていないと良いのだけど」
「それは、大丈夫です。簀巻きにしてあるので」
アリーシャの満面の笑みに、相当ストレスが溜まっていたのだなと悟った。
「時間も押していることだし、教室に行きましょうか」
私は、アリーシャとガリオンを引き連れて教室に向かった。
途中、教師を含め周囲の目は恐怖に彩られている。
多少怖がられた方が、学園の内情を把握するのも楽だろう。
カツカツと足音を鳴らしながら、ざわつく教室の前まで辿り着いた。
深呼吸をしてからガラリとドアを開けると、視線が一気に私の方に突き刺さる。
廊下まで聞こえていた騒めきは成りを顰め、息を殺すように重い沈黙が続く。
「皆様、先生、御機嫌よう」
営業スマイルを浮かべる私に、教壇に立っている教師の顔は盛大に引き攣っている。
「あ、ああ……久しぶりだね。本日、リリアン嬢が登校するという連絡は来ていないのだが……」
ニコニコと笑みを浮かべる私に対し、教師の顔色はどんどんと悪くなり言葉も尻すぼみになっている。
「連絡の行き違いかしら? 学園長には、従僕から本日登校するとお伝えしていましたの。要件が済めば、早退致しますわ」
「それで要件とは?」
恐々と聞いてくる教師に微笑みで返して、簀巻きになっているアルベルトの前に立つ。
パチンと指を鳴らして縄を切り、胸倉を掴んで立たせてからグーで右頬を殴った。
「ギャフッ……な、な…何をしゅる!」
顔面を殴られるとは思ってもみなかったのか、殴られた拍子にアルベルトは尻もちをつき頬に手を当ててキッとこちらを睨んでくる。
構図的には、どこぞの令嬢のような座り方をしているが、アルベルトは男である。
キモイと言いそうになり、グッと言葉を飲み込んだ。
「何をする? わたくしが、居ない間にコレット嬢と好き勝手になさいましたね。殿下の尻拭いをするために、態々足を運んだのです。多忙を極めるわ・た・く・し・が! 学園長より直々に殿下に対する処罰を下すようにお願いされましたの」
「ふぃじゃけりゅな!」
「ふざけてません。お黙りになって」
左頬もグーで殴ると、静かになった。
「コレット嬢同様に退学にすれば良いと思っているのですが、学園長が退学以外でと仰られたので退学以外の罰を与えに遠路遥々出向いたのですよ。感謝して欲しいくらいですわ」
フーと溜息を吐いていると、トントンと肩を叩かれた。
振り返ると、アリーシャが首を横に振っている。
「伸びてます」
「手加減したのに、この程度で伸びてしまうなんて軟弱にも程があるわ。ガリオン、殿下は剣術の稽古はなさっているのかしら?」
「最近は、参加されないことが多いです」
間髪入れずに返って来た返答に、私は伸びているアルベルトを見て、こういう奴だったなと再認識した。
「殿下への処罰の甘さに皆様も鬱憤が溜まっていることでしょう。先生、次の授業は中止して全校集会に変更をお願いします。そこで、しっかりと殿下に対する処分を下そうと思います」
「急にそんなことを言われても……」
「授業が一つ潰れるだけです。どこかで調整すれば問題ありません。ガリオン、講堂を使用できるように準備をして頂戴。アリーシャは、殿下の顔に回復魔法を掛けて差し上げて。終わったら講堂に運びなさい」
双子から「はい」と元気の良い返事が返って来た。
流石に顔面を腫らしたアルベルトを全校生徒がいる前に突き出すのは、私の心象が悪くなるのでしないがな!
周囲をぐるりと見回すと、遠くの方からアリーシャとガリオンが走って来た。
「二人とも、久しぶりね。学園長退任の署名は集まっているかしら?」
「集まってます」
三日間で集まった署名の束をアリーシャが、サッと差し出してきた。
ザッとそれに目を通していたら、ガリオンが頭を抱えながらツッコミを入れてきた。
「アリーシャ、ナチュラルにスルーするなよ! 突如、上空から現れている時点で可笑しいだろう!!」
「スミス先生という前例を見たでしょう。流石に、同じようにとはいかなかったけれど。初めてにしては上出来じゃない?」
「そうですねー!」
飛び級の件で、精霊に頼んでスミスを連れて来て貰ったのを目の当たりにしているというのに、これくらいのことでガタガタ言うのだろうか。
「一応、先ほどの着地で巻き添えを喰らった人はいないようで良かったわ」
「駆けずり回りましたんで! まさか、訓練場に穴をあけるような帰還の仕方をされるとは思わなかった」
「軍馬で駆けても、数日は掛かるのよ。そんな時間と労力の無駄はしたくありません。それで、今回の元凶はどこにいるのかしら?」
コテンと首を傾げて聞くと、教室で待機していると返答が返って来た。
「逃げなていないと良いのだけど」
「それは、大丈夫です。簀巻きにしてあるので」
アリーシャの満面の笑みに、相当ストレスが溜まっていたのだなと悟った。
「時間も押していることだし、教室に行きましょうか」
私は、アリーシャとガリオンを引き連れて教室に向かった。
途中、教師を含め周囲の目は恐怖に彩られている。
多少怖がられた方が、学園の内情を把握するのも楽だろう。
カツカツと足音を鳴らしながら、ざわつく教室の前まで辿り着いた。
深呼吸をしてからガラリとドアを開けると、視線が一気に私の方に突き刺さる。
廊下まで聞こえていた騒めきは成りを顰め、息を殺すように重い沈黙が続く。
「皆様、先生、御機嫌よう」
営業スマイルを浮かべる私に、教壇に立っている教師の顔は盛大に引き攣っている。
「あ、ああ……久しぶりだね。本日、リリアン嬢が登校するという連絡は来ていないのだが……」
ニコニコと笑みを浮かべる私に対し、教師の顔色はどんどんと悪くなり言葉も尻すぼみになっている。
「連絡の行き違いかしら? 学園長には、従僕から本日登校するとお伝えしていましたの。要件が済めば、早退致しますわ」
「それで要件とは?」
恐々と聞いてくる教師に微笑みで返して、簀巻きになっているアルベルトの前に立つ。
パチンと指を鳴らして縄を切り、胸倉を掴んで立たせてからグーで右頬を殴った。
「ギャフッ……な、な…何をしゅる!」
顔面を殴られるとは思ってもみなかったのか、殴られた拍子にアルベルトは尻もちをつき頬に手を当ててキッとこちらを睨んでくる。
構図的には、どこぞの令嬢のような座り方をしているが、アルベルトは男である。
キモイと言いそうになり、グッと言葉を飲み込んだ。
「何をする? わたくしが、居ない間にコレット嬢と好き勝手になさいましたね。殿下の尻拭いをするために、態々足を運んだのです。多忙を極めるわ・た・く・し・が! 学園長より直々に殿下に対する処罰を下すようにお願いされましたの」
「ふぃじゃけりゅな!」
「ふざけてません。お黙りになって」
左頬もグーで殴ると、静かになった。
「コレット嬢同様に退学にすれば良いと思っているのですが、学園長が退学以外でと仰られたので退学以外の罰を与えに遠路遥々出向いたのですよ。感謝して欲しいくらいですわ」
フーと溜息を吐いていると、トントンと肩を叩かれた。
振り返ると、アリーシャが首を横に振っている。
「伸びてます」
「手加減したのに、この程度で伸びてしまうなんて軟弱にも程があるわ。ガリオン、殿下は剣術の稽古はなさっているのかしら?」
「最近は、参加されないことが多いです」
間髪入れずに返って来た返答に、私は伸びているアルベルトを見て、こういう奴だったなと再認識した。
「殿下への処罰の甘さに皆様も鬱憤が溜まっていることでしょう。先生、次の授業は中止して全校集会に変更をお願いします。そこで、しっかりと殿下に対する処分を下そうと思います」
「急にそんなことを言われても……」
「授業が一つ潰れるだけです。どこかで調整すれば問題ありません。ガリオン、講堂を使用できるように準備をして頂戴。アリーシャは、殿下の顔に回復魔法を掛けて差し上げて。終わったら講堂に運びなさい」
双子から「はい」と元気の良い返事が返って来た。
流石に顔面を腫らしたアルベルトを全校生徒がいる前に突き出すのは、私の心象が悪くなるのでしないがな!
2
あなたにおすすめの小説
婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが
マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって?
まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ?
※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。
※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【完結】16わたしも愛人を作ります。
華蓮
恋愛
公爵令嬢のマリカは、皇太子であるアイランに冷たくされていた。側妃を持ち、子供も側妃と持つと、、
惨めで生きているのが疲れたマリカ。
第二王子のカイランがお見舞いに来てくれた、、、、
【完結】結婚して12年一度も会った事ありませんけど? それでも旦那様は全てが欲しいそうです
との
恋愛
結婚して12年目のシエナは白い結婚継続中。
白い結婚を理由に離婚したら、全てを失うシエナは漸く離婚に向けて動けるチャンスを見つけ・・
沈黙を続けていたルカが、
「新しく商会を作って、その先は?」
ーーーーーー
題名 少し改変しました
【完結】お飾りではなかった王妃の実力
鏑木 うりこ
恋愛
王妃アイリーンは国王エルファードに離婚を告げられる。
「お前のような醜い女はいらん!今すぐに出て行け!」
しかしアイリーンは追い出していい人物ではなかった。アイリーンが去った国と迎え入れた国の明暗。
完結致しました(2022/06/28完結表記)
GWだから見切り発車した作品ですが、完結まで辿り着きました。
★お礼★
たくさんのご感想、お気に入り登録、しおり等ありがとうございます!
中々、感想にお返事を書くことが出来なくてとても心苦しく思っています(;´Д`)全部読ませていただいており、とても嬉しいです!!内容に反映したりしなかったりあると思います。ありがとうございます~!
断罪前に“悪役"令嬢は、姿を消した。
パリパリかぷちーの
恋愛
高貴な公爵令嬢ティアラ。
将来の王妃候補とされてきたが、ある日、学園で「悪役令嬢」と呼ばれるようになり、理不尽な噂に追いつめられる。
平民出身のヒロインに嫉妬して、陥れようとしている。
根も葉もない悪評が広まる中、ティアラは学園から姿を消してしまう。
その突然の失踪に、大騒ぎ。
彼女にも愛する人がいた
まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。
「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」
そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。
餓死だと? この王宮で?
彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。
俺の背中を嫌な汗が流れた。
では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…?
そんな馬鹿な…。信じられなかった。
だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。
「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。
彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。
俺はその報告に愕然とした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる