お前は、ヒロインではなくビッチです!

もっけさん

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エルブンガルド魔法学園 中等部

制裁は過激に2

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 翌日、私は乗馬服の上から学園指定のフードを着て屋敷の訓練場に立っていた。
「じゃあ、行ってくるわ」
「行ってらっしゃいませ、お嬢様」
 フリックは、訓練場の端から綺麗な礼を取っている。
「シルフ、わたくしを学園まで運びなさい」
 私の呼びかけに、シルフが現れる。
 相変わらず、股間に葉っぱの裸族なところは変わりがない。
「え~、面倒臭い」
「……シルフの丸焼きデスソースを添えて」
 ボソッと呟くと、シルフは「ヒィッ」とか細い悲鳴を上げている。
「出来るわよね?」
 笑みを浮かべて再度聞くと、シルフは首がもげるんじゃないかと思うくらい頭を縦に振っていた。
「やらせて頂きます!」
「最初からそう言えば良いのよ」
「風魔法で身体を浮かせて飛ばすのは良いが下手したら死ぬぞ」
「その辺りは大丈夫。得意ではないけど多重結界で対処できるでしょう」
 スミスが出来たのなら、私にだって出来るはず。
「じゃあ、お願い」
「文句言うなよな」
 シルフは、そう言うと風を起こし私の身体を浮かした。
 急上昇し、ものの数秒で雲の上だ。
 多重結界を使ってなければ、気圧でペシャンコになっていただろう。
「ちょっと、ここまで高度を上げる必要ないじゃない。私を酸素不足で殺す気?」
 ギロリとシルフを睨むと、
「人を運ぶなんてしたことが無いんだ。勝手が分からないんだから仕方がない。それに、酸素不足にならないように調整しているだろう」
 うんざりとした顔で返してきた。
 シルフの指摘に、私はその事実に気付いた。
 確かに、息苦しさはない。
 地上にいる時と変わらない。
「ベッドで寝る体制を取ってくれ」
「嫌よ。まるで人間ロケットじゃない」
 空気抵抗が少ない方法とはいえ、着地する時に頭からなんて事になったら目も当てられない。
 当然拒否したが、
「時間が惜しいんだろう。以前、下級精霊達に人を運ばせただろう。そいつと同じ格好で移動したら、真っ先にお前が張っている結界が壊れるぞ」
 そう言われて、確かにスミスは「自分でなければ死んでいた」と発言している。
 いくら魔力が多くても、コントロールは下手だ。
 魔法を使うにしても、私はスミスよりも格段に劣る。
「空気抵抗を最低限にして、抵抗部分を中心に多重結界を張らないとヤバイってことね」
「そうだ」
「……分かったわ。学園の上空に着いたら、一旦止まって頂戴。頭から突っ込むのはごめんよ」
 そう主張すると、シルフは面倒臭そうに「はいはい」と聞き流していた。
 時速360kmの速度で移動しているので、新幹線のぞみになった気分だ。
 どこでもドアならぬ移転魔法があれば便利だと思う反面、どこでもドアの原理が分からないので新たに魔法を作ることも出来ないだろう。
 科学で説明がつく部分は魔法も同じように生かせるのに、想像だけで原理が分かっていないと精霊達も正確に動く事は出来ない。
 寧ろ、頼んだら色んな意味で最期を迎えそうだ。
 三時間くらい飛んだところで、見慣れた建築物を目視し自分の現在地の大まかな場所を把握した。
「後、少しで着くぞ」
「分かったわ。少し、速度を落としてくれる?」
「良いが、早く着きたいんじゃなかったのか?」
「着地するにしても色々と準備が必要なのよ」
 シルフは疑問符を頭に浮かべながら、言われた通りかなり速度を落としてくれた。
 それでも公道で走る自動車と同じくらいの速度は出ているが。
 私は携帯を取り出してガリオンに電話を掛ける。
 数コールの後にブチッと切られたので、その後もしつこく電話を掛けたら漸く電話に出た。
「遅い!」
「遅いじゃない! リリアン様、今授業中だってこと分かってます? 何度も『仕事しろ』のコール音が教室中に響いたんですよ!」
「一回で電話に出て、携帯を先生に渡せば良いでしょう」
 そう答えれば、ガリオンは「あ…」と零し何かを悟ったのか沈黙した。
「三十分ほどで学園に着くわ。訓練場に着地する予定だから、訓練場および周辺にいる人の退避勧告をお願いね」
「はあ? ちょっと、待て!! どういうこ」
 ガリオンが言い終わる前に私は、ブチッと電話の通話を切った。
 この速度で落下したら、結界を張っていても周囲に大なり小なり損害を与えるだろう。
 速度を落として学園の訓練場の上に着き、
「じゃあ、派手に行くわよ!」
の合図にシルフは浮かせていた風魔法を消した。
 重力に従うように垂直に落ちる。
 ドォォンという音と共に、訓練場のど真ん中に大きな穴が開いた。
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