お前は、ヒロインではなくビッチです!

もっけさん

文字の大きさ
146 / 181
エルブンガルド魔法学園 中等部

制裁は過激に

しおりを挟む
 旧オブシディアン領で馬車馬のようにひいこら働かされているリリアンです。
 私が不在の時を狙ったかのように、変な女がアルベルトの周辺をウロチョロしているとアリーシャ達から報告を受け、思わずそのまま引き取ってくれないかなぁとちょっと思ったりしていました。
 暫く静観するつもりで放置していたら、アルベルトとコレットの数々の迷惑行為に胃薬と鎮痛剤が手放せなくなった今日この頃です。
 アリーシャとガリオンにも教育的指導の許可を与えているはずだが、アルベルトに対して何の抑止力にもならなかったのが残念である。
 結論から言うと、アルベルトの怠慢でコレットが増長し被害女性が多発するという負のスパイラルが出来上がってしまった。
 私自身、領の立て直しと教会絡みの件を探っている最中なので手が離せない状況にある。
 一度は帰宅しようかとも考えたが、従僕二人がどこまで出来るか試してみてはとフリックに進言され任せてみたら、被害は思った以上に広がってしまい二人は再教育が確定してしまった。
 最終的にキャロルとエマの手を借りて事態の収拾をして貰う結果となったのは致し方無い。
 コレットの退学と集団訴訟は想定内だ。
 ピューレ家は、多額の借金を抱えている。
 更にコレットの不貞行為に対する慰謝料は、総額で考えれば結構な額になる。
 多額の負債を抱えたピューレ家に返済能力は無いと断言できるだろう。
 負債付きの爵位など売れないとなれば、国が領地を没収して被害者へお金に替えて分配する形を取るしかない。
 王妃の手腕が試されるだろうが、私の知ったことではない。
 ただ、コレットに関しては少し気になるところがある。
 ガリオン達の報告からして、どうも転生者っぽいのだ。
 接触するべきか否か考えた結果、一度会ってみることにした。
 私の知らない何かを知っている可能性もあるし、育てれば優秀な諜報員になれるかもしれない。
 書類を机の上に置き、ベルを鳴らすとレディースメイドが入って来た。
「リリアン様、如何なされましたか?」
「フリックを読んで頂戴」
「畏まりました」
 そう告げると、綺麗なお辞儀をして部屋を出て行った。
 フリックの教育の賜物である。
 数分後、コンコンとドアがノックされた。
「どうぞ」
「お嬢様、失礼します。如何なさいましたか?」
「フリックに頼み事をしようと思って」
 そう答えると、彼はふむと顎の髭を触っている。
「また、奇抜なことでも思いつかれましたかな」
と揶揄うように目を細めて私の反応を伺ってくる。
 私が言いそうなことを頭の中でシミュレーションでもしているのだろう。
「コレットを連れて来て欲しいの」
 単刀直入に切り出すと、フリックの涼やかな目が鋭くなる。
「私には、攫う価値があるとは思えませんが」
「そうね。売り払ったところで、良くて中金貨一枚くらいかしら。混ざりものだから、高値で売れないわ。わたくしはね、コレットが持っている情報が欲しいの。だから連れて来て」
 敢て『攫う』という言葉は使わないでおく。
 笑みを浮かべる私に対し、フリックは暫く無言を貫いた後、大きな溜息を一つ吐いた。
「私が断れば、別の者に頼むのでしょうね」
「フリックが、わたくしの頼みを断ることはないと信じているわ。大丈夫。法を犯すようなことはしないから」
「貴族令嬢を攫うこと自体が法を犯していると思いますが」
「あら、わたくしも当事者の一人なのよ? コレットが領に戻る前に、わたくしに謝罪する目的でここに立ち寄ったとしても可笑しいことはないでしょう」
 私の言っていることは屁理屈だ。
 しかし、矛盾したことを主張しているかといえばそうではない。
 コレットが自滅しようが、ピューレ家が没落しようが痛くもかゆくもない。
 コレットの持つ情報には興味がある。
 ただ、それだけだ。
「……分かりました」
「一応、賓客として扱って頂戴ね。後、わたくしは一旦学園に戻ります。殿下の処罰を下さねばなりませんので。恐らく一日で戻れると思います。不在の間は、ロジャーに任せます。不測の事態が起きて、判断が難しい場合は連絡して来て下さい」
「畏まりました」
「じゃあ、宜しくね」
 それだけ言うとフリックを通常の仕事に戻らせ、私は急ぎの書類を片付けて学園に戻る準備をした。
しおりを挟む
感想 98

あなたにおすすめの小説

婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが

マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって? まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ? ※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。 ※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

【完結】16わたしも愛人を作ります。

華蓮
恋愛
公爵令嬢のマリカは、皇太子であるアイランに冷たくされていた。側妃を持ち、子供も側妃と持つと、、 惨めで生きているのが疲れたマリカ。 第二王子のカイランがお見舞いに来てくれた、、、、

【完結】結婚して12年一度も会った事ありませんけど? それでも旦那様は全てが欲しいそうです

との
恋愛
結婚して12年目のシエナは白い結婚継続中。 白い結婚を理由に離婚したら、全てを失うシエナは漸く離婚に向けて動けるチャンスを見つけ・・  沈黙を続けていたルカが、 「新しく商会を作って、その先は?」 ーーーーーー 題名 少し改変しました

【完結】お飾りではなかった王妃の実力

鏑木 うりこ
恋愛
 王妃アイリーンは国王エルファードに離婚を告げられる。 「お前のような醜い女はいらん!今すぐに出て行け!」  しかしアイリーンは追い出していい人物ではなかった。アイリーンが去った国と迎え入れた国の明暗。    完結致しました(2022/06/28完結表記) GWだから見切り発車した作品ですが、完結まで辿り着きました。 ★お礼★  たくさんのご感想、お気に入り登録、しおり等ありがとうございます! 中々、感想にお返事を書くことが出来なくてとても心苦しく思っています(;´Д`)全部読ませていただいており、とても嬉しいです!!内容に反映したりしなかったりあると思います。ありがとうございます~!

断罪前に“悪役"令嬢は、姿を消した。

パリパリかぷちーの
恋愛
高貴な公爵令嬢ティアラ。 将来の王妃候補とされてきたが、ある日、学園で「悪役令嬢」と呼ばれるようになり、理不尽な噂に追いつめられる。 平民出身のヒロインに嫉妬して、陥れようとしている。 根も葉もない悪評が広まる中、ティアラは学園から姿を消してしまう。 その突然の失踪に、大騒ぎ。

彼女にも愛する人がいた

まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。 「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」 そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。 餓死だと? この王宮で?  彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。 俺の背中を嫌な汗が流れた。 では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…? そんな馬鹿な…。信じられなかった。 だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。 「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。 彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。 俺はその報告に愕然とした。

処理中です...