157 / 181
オブシディアン領で労働中
嘘は言ってませんよ
しおりを挟む
軽くジャブを打ったつもりが、どうやらクリティカルヒットを繰り出してしまったみたいだ。
フリックのダメ押しが、止めになったようだ。
「貴女も鑑定持ちなのですか?」
「違います。色々と伝があるのですよ。魔力コントロールの未熟さを魔銃器でカバーしているといったところかしら」
「………」
ニッコリと笑みを浮かべながら、自分が使う獲物と使用している理由まで当てられてはぐうの音も出ないのだろう。
押し黙るルーゼウスに、私は話しを続ける。
「わたくしと手を組みましょう」
「手を組むとは?」
「言葉通りの意味でしてよ。ヘリオト商会と業務提携を結んで欲しいの」
ヘリオト商会という言葉に、ルーゼウスの瞳が困惑した色になる。
おーおー、ビビってますな。
急成長して今や一代で巨額な富を築いた猛者の商会からのお声がけに、ルーゼウスも相当混乱しているようだ。
私がヘリオト商会の会頭をしていることは、ごく一部の限られた者しか知りえない情報だ。
ルーゼウスが、知らなくても何ら不思議はない。
「アングロサクソン家が、ヘリオト商会と懇意であることは存じています。しかし、業務提携の話を関係ない第三者が口を挟める問題ではありません」
「あら、関係なら大有りでしてよ。ヘリオト商会の会頭は、わたくし自身ですもの。わたくしが立ち上げた商会に口出しできないなんておかしな話ですこと」
パラリと扇子を広げて、目を細めならが相手の出方を伺う。
隣に座るフリックは、鞄から契約書や万年筆、朱肉を取り出してテーブルの上に置いてスタンバイしている。
「……ご冗談を」
「わたくし、時間とお金の無駄が大嫌いなのです。次いで、笑えない冗談も嫌いですわ。ヘリオト商会の契約は、高度な精霊魔法で行われているのはご存じ?」
「ええ、噂には聞いてます」
「その魔法を発動できるのは、今のところ作成者のわたくしだけですわ。重要な契約ほど複雑にしているので、今は簡略化したものでも、それなりの効果が出る契約書を作りたいと思っているのよ。それで話を戻すけれど、わたくしにつく気はないかしら?」
ニコニコと笑みを浮かべつつ勧誘を試みる。
断られたら潰せば良いや、なんておくびにも出さないけどね!
そんな私の考えを呼んだのか、ルーゼウスは大きな溜息を吐いた。
「分かりました。業務提携をしましょう。断れば潰されかねません」
「物分かりが早くて助かりますわ。フリック、書類をお渡しして」
「どうぞ、こちらが契約書で御座います」
精霊魔法をふんだんに使った契約書は、勿論日本語でビッチリと書かれている。
契約書の裏側に米粒ほどの大きさの字で、カタカムナ文字を使って重要な契約事項を書いておいた。
ルーゼウスは契約書を手に取り、不利益な契約がないか何度も読み返している。
「この契約であれば、こちらが不利益を被ることはありませんね。寧ろ、利益があるのは私の商会の方ではありませんか」
何か裏があるんじゃないかと疑っているようだが、精霊魔法の契約書には私のサインが入っているので、違えれば私にペナルティが課されてしまう。
「最初に申し上げましたでしょう。わたくしの目的は、不当に売られた者達の買い戻しですわ。他の奴隷商会は、犯罪に手を染めて話にならなかった。だから、貴方に目をつけた。貴方に買われた奴隷たちは幸せね。攫われた親元に帰してあげているんだもの。最も、帰る場所が無い子には商会の手伝いをさせているのでしょう。気に入ったわ」
多少後ろ暗い部分があっても、大罪を犯していないなら良い。
「それに、わたくしの商会と手を結べば、販路が拡大しましてよ」
最大の利点を伝えると、ルーゼウスは暫く唸った後、大きな溜息を吐いて『是』と返した。
ルーゼウスは、契約書にサインし拇印を押した。
これで、クランシャフト商会はヘリオト商会の完全子会社となった。
基本的にルーゼウスがクランシャフト商会を運営することは変わりないが、奴隷の買い付けは違法に売られた者に限るとしてあるので、これに気付くのは先の話だろう。
「前置きはこれくらいにして、本題の奴隷購入について話をしましょうか」
私は、ルーゼウスのサインが入った契約書一式を鞄にしまい話の続きを促した。
フリックのダメ押しが、止めになったようだ。
「貴女も鑑定持ちなのですか?」
「違います。色々と伝があるのですよ。魔力コントロールの未熟さを魔銃器でカバーしているといったところかしら」
「………」
ニッコリと笑みを浮かべながら、自分が使う獲物と使用している理由まで当てられてはぐうの音も出ないのだろう。
押し黙るルーゼウスに、私は話しを続ける。
「わたくしと手を組みましょう」
「手を組むとは?」
「言葉通りの意味でしてよ。ヘリオト商会と業務提携を結んで欲しいの」
ヘリオト商会という言葉に、ルーゼウスの瞳が困惑した色になる。
おーおー、ビビってますな。
急成長して今や一代で巨額な富を築いた猛者の商会からのお声がけに、ルーゼウスも相当混乱しているようだ。
私がヘリオト商会の会頭をしていることは、ごく一部の限られた者しか知りえない情報だ。
ルーゼウスが、知らなくても何ら不思議はない。
「アングロサクソン家が、ヘリオト商会と懇意であることは存じています。しかし、業務提携の話を関係ない第三者が口を挟める問題ではありません」
「あら、関係なら大有りでしてよ。ヘリオト商会の会頭は、わたくし自身ですもの。わたくしが立ち上げた商会に口出しできないなんておかしな話ですこと」
パラリと扇子を広げて、目を細めならが相手の出方を伺う。
隣に座るフリックは、鞄から契約書や万年筆、朱肉を取り出してテーブルの上に置いてスタンバイしている。
「……ご冗談を」
「わたくし、時間とお金の無駄が大嫌いなのです。次いで、笑えない冗談も嫌いですわ。ヘリオト商会の契約は、高度な精霊魔法で行われているのはご存じ?」
「ええ、噂には聞いてます」
「その魔法を発動できるのは、今のところ作成者のわたくしだけですわ。重要な契約ほど複雑にしているので、今は簡略化したものでも、それなりの効果が出る契約書を作りたいと思っているのよ。それで話を戻すけれど、わたくしにつく気はないかしら?」
ニコニコと笑みを浮かべつつ勧誘を試みる。
断られたら潰せば良いや、なんておくびにも出さないけどね!
そんな私の考えを呼んだのか、ルーゼウスは大きな溜息を吐いた。
「分かりました。業務提携をしましょう。断れば潰されかねません」
「物分かりが早くて助かりますわ。フリック、書類をお渡しして」
「どうぞ、こちらが契約書で御座います」
精霊魔法をふんだんに使った契約書は、勿論日本語でビッチリと書かれている。
契約書の裏側に米粒ほどの大きさの字で、カタカムナ文字を使って重要な契約事項を書いておいた。
ルーゼウスは契約書を手に取り、不利益な契約がないか何度も読み返している。
「この契約であれば、こちらが不利益を被ることはありませんね。寧ろ、利益があるのは私の商会の方ではありませんか」
何か裏があるんじゃないかと疑っているようだが、精霊魔法の契約書には私のサインが入っているので、違えれば私にペナルティが課されてしまう。
「最初に申し上げましたでしょう。わたくしの目的は、不当に売られた者達の買い戻しですわ。他の奴隷商会は、犯罪に手を染めて話にならなかった。だから、貴方に目をつけた。貴方に買われた奴隷たちは幸せね。攫われた親元に帰してあげているんだもの。最も、帰る場所が無い子には商会の手伝いをさせているのでしょう。気に入ったわ」
多少後ろ暗い部分があっても、大罪を犯していないなら良い。
「それに、わたくしの商会と手を結べば、販路が拡大しましてよ」
最大の利点を伝えると、ルーゼウスは暫く唸った後、大きな溜息を吐いて『是』と返した。
ルーゼウスは、契約書にサインし拇印を押した。
これで、クランシャフト商会はヘリオト商会の完全子会社となった。
基本的にルーゼウスがクランシャフト商会を運営することは変わりないが、奴隷の買い付けは違法に売られた者に限るとしてあるので、これに気付くのは先の話だろう。
「前置きはこれくらいにして、本題の奴隷購入について話をしましょうか」
私は、ルーゼウスのサインが入った契約書一式を鞄にしまい話の続きを促した。
1
あなたにおすすめの小説
婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが
マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって?
まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ?
※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。
※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【完結】16わたしも愛人を作ります。
華蓮
恋愛
公爵令嬢のマリカは、皇太子であるアイランに冷たくされていた。側妃を持ち、子供も側妃と持つと、、
惨めで生きているのが疲れたマリカ。
第二王子のカイランがお見舞いに来てくれた、、、、
【完結】結婚して12年一度も会った事ありませんけど? それでも旦那様は全てが欲しいそうです
との
恋愛
結婚して12年目のシエナは白い結婚継続中。
白い結婚を理由に離婚したら、全てを失うシエナは漸く離婚に向けて動けるチャンスを見つけ・・
沈黙を続けていたルカが、
「新しく商会を作って、その先は?」
ーーーーーー
題名 少し改変しました
【完結】お飾りではなかった王妃の実力
鏑木 うりこ
恋愛
王妃アイリーンは国王エルファードに離婚を告げられる。
「お前のような醜い女はいらん!今すぐに出て行け!」
しかしアイリーンは追い出していい人物ではなかった。アイリーンが去った国と迎え入れた国の明暗。
完結致しました(2022/06/28完結表記)
GWだから見切り発車した作品ですが、完結まで辿り着きました。
★お礼★
たくさんのご感想、お気に入り登録、しおり等ありがとうございます!
中々、感想にお返事を書くことが出来なくてとても心苦しく思っています(;´Д`)全部読ませていただいており、とても嬉しいです!!内容に反映したりしなかったりあると思います。ありがとうございます~!
断罪前に“悪役"令嬢は、姿を消した。
パリパリかぷちーの
恋愛
高貴な公爵令嬢ティアラ。
将来の王妃候補とされてきたが、ある日、学園で「悪役令嬢」と呼ばれるようになり、理不尽な噂に追いつめられる。
平民出身のヒロインに嫉妬して、陥れようとしている。
根も葉もない悪評が広まる中、ティアラは学園から姿を消してしまう。
その突然の失踪に、大騒ぎ。
彼女にも愛する人がいた
まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。
「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」
そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。
餓死だと? この王宮で?
彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。
俺の背中を嫌な汗が流れた。
では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…?
そんな馬鹿な…。信じられなかった。
だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。
「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。
彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。
俺はその報告に愕然とした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる