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12 家族
1 卒業式
しおりを挟む「奈都、大学卒業おめでとう」
「響ちゃん、ありがとう」
奈都は長い髪を結い綺麗な生花で飾られ、鮮やかな袴姿だ。
そっと手を取られてゆっくりと歩く。
お腹は少しふっくらしている。
奈都と響介は結婚した。
妊娠をきっかけに入籍した。
結婚式はあげていない。
子供が生まれてから、外国でこっそりとしようと約束した。
亜稀はついてくると言っているが。
「奈都、めっちゃ綺麗」
「ありがとう、亜稀」
「成人式の振り袖も綺麗だったけど、こっちの方が大人っぽいね」
亜稀はカメラを構えて、何枚も撮っている。
「二人で並んで」
響介の手が背中に回る。
「本当に綺麗だ」
響介は奈都に合わせて、和服を着ている。
奈都は旦那様を見つめて、微笑む。
奈都は女の子として手続きをして大学に通った。
在学中に司法試験に合格をして、弁護士になる資格を取ったが、就職はしていない。
ふっくらとしたお腹の中には、響介との子供を授かっている。
双子で、予定日は6月17日だ。
卒業式を終えたら、奈都は病院に入院することになっている。
何もかも小さなパーツの奈都の体には、二人の子供は負担が大きすぎるために、1日でも長く赤ちゃんを育てるため入院する。
赤ちゃんを一人に選別するかと医師には聞かれたが、奈都は授かった命を選ぶことはできなかった。響介と相談して、双子を産むことにした。
やっと7ヶ月になった。
もともと痩せている奈都は、妊娠していることを言わなければ、誰にも気づかれないほどだ。亜稀が大学生活をサポートしてくれたお陰で、卒業までこぎ着けることができた。
「響介、俺も撮ってよ。奈都との写真、欲しい」
「しかたないな」
響介は奈都から離れて、亜稀と変わる。
「奈都、幸せ?」
「うん。幸せだよ」
「よかった」
亜稀の手が奈都の肩を抱く。
「あんまりくっつくなよ」
「ケチケチするな。別に取ったりしないよ」
数枚撮って、響介は亜稀の頭を小突いた。
「ほら、代われ」
「へいへい」
亜稀はカメラを受け取ると、奈都の幸せそうな顔を写す。
「そろそろ戻るぞ。体が冷える」
「うん」
奈都の手を取り、響介は歩き出した。
亜稀は奈都に近づいてくる人たちをガードしている。
響介の運転で、家に帰ってきた。
響介は、奈都の髪に飾られた花を取っていく。
「あっという間に、大学生活終わっちゃった」
「楽しかったか?」
「うん。今までの学生生活で一番充実していて楽しかった。虐められない生活をくれてありがとう」
響介が微笑む。
「本当は、響ちゃんが三谷さんたちを逮捕させて、企業買収して叩きのめしたんでしょう?」
「そうだよ」
「響ちゃんって、怒らせると怖いんだね」
「奈都のためなら鬼にでもなれる。これからは、新しい家族のためにも僕は守るよ」
「ありがとう、響ちゃん」
結い上げられた髪を下ろされて、袴を脱がされていく。足袋まで脱がされて、奈都は小振り袖だけになる。髪は腰の長さまで伸びている。
響介が口づけしてくる。
「奈都を病院に行かせるのは寂しいな」
「わたしも、響ちゃんと一緒にいたい」
カウチに横にされて、響介が奈都に腹部に口づけしてくる。
少しふっくらした腹部を撫でて、キスをすると、響介は着物を脱ぎだした。
「抱いてもいい?」
「うん。しばらく抱き合えないもの。愛して」
奈都は手術をして男性器を取らなかった。ありのままの姿で、響介に身を委ねた。
いずれ不都合が起きたときに、変えなければならないかもしれないが、今はこのままでいいと思った。
響介に優しく抱かれて、奈都はお風呂に入った。
次に帰ってくるときは三人だ。
響介に注がれたものを流して、メイクを落として頭も体も綺麗に洗っていく。
お風呂に浸かって、ゆっくりしていると響介の声がした。
「そろそろ病院に行かないと電話がかかってくるぞ」
「はーい」
奈都はお風呂からあがって、体を拭き洗面所に出て行く。
響介は着替えていた。
「奈都は放っておくと、ずっとお風呂に入っているからな」
にこりと微笑む。
「もう少し待っていて」
響介を洗面所から追い出すと、奈都は身支度を整えていく。
髪を乾かすのに時間がかかる。
化粧はせずに、肌のお手入れだけしてワンピースを身につけ出ていく。
「響ちゃん、お待たせ」
二人の部屋に戻ると、亜稀もいた。
「奈都、頑張ってこいよ」
「うん」
奈都は結婚指輪を外すと、響介に預けた。
「なくすといけないから、預かっておいて」
「わかった」
響介は立ち上がると、結婚指輪を仕舞う宝石箱に入れると響介の仕事場にある金庫の中に仕舞った。
「行ってきます、亜稀」
「いってらっしゃい、奈都」
響介が荷物を持って奈都の手を引く。
玄関を出る前に、奈都はお腹を押さえて立ち止まった。
「どうした?」
「響ちゃん、お腹痛い」
足を伝って水が流れていく。
「破水か」
亜稀がタオルを取りに走って行く。
「響介、着替えと、下着、新しいの持ってきて」
亜稀がタオルで足を拭いていく。
「亜稀、僕が着替えさせるから、救急車呼んで」
「わかった」
奈都は玄関前に横にさせられて、お腹を抱えていた。
「響ちゃん、お腹痛い」
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