唯一の恋

綾月百花   

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番外編 ☆ 平等に愛して♪湯煙温泉旅行編 ☆

4   ごはんですよ

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「奈都、奈都、起きて」
 体を揺すられて、奈都は目を覚ました。
 見知らぬ天井が見えて、声がした方に視線を向けると響介がいた。
 浴衣を着て、布団に寝かされていた。
「響ちゃん」
「ごはんだよ」
「響ちゃん、わたし」
「湯あたりしちゃったのかな。お風呂で寝ちゃったんだ」
「お風呂で?」
 奈都はぼんやりした頭で思い出す。
「あっ」
 顔が熱くなってくる。
 二人で同時に抱かれたんだった。
 響介が笑っている。
「思い出したのかな?」
「うん」
 布団を捲られて、奈都は自分の胸に触れる。
「起きられる?」
「うん」
 奈都は起き上がった。
 まだ頭がふらふらする。
 湯あたりしたのは、本当なのだろう。
「夕ご飯の支度ができたんだけど、今、食べられそう?」
「大丈夫だと思う」
「じゃ、おいで」
 響介に手を引かれて、起き上がった。


 襖を開けると、亜稀がテーブルに着いていて、料理を運んでくれる女将と話をしていた。
「奈都。大丈夫?」
「うん」
「湯あたりは大丈夫ですか?」
「はい」
「源泉のお湯をくみ上げているので、少し熱めなんですよ。半身浴がおすすめですよ」
「はい」
 抱き合っていて、湯あたりしましただなんて、口が裂けても言えない。
 女将は、テーブルに並べられた小さな石鍋が置かれたものに、火をつけて、「ごゆっくり」と言って部屋を出て行った。
「わぁ、豪華ね」
 奈都は並べられた綺麗な器に盛られた料理を見て、微笑んだ。
「早く、座って、座って」
 亜稀はご機嫌だ。
 お櫃からご飯をよそってくれる。
「奈都はどれくらい?」
「わたしは、少なめね」
「了解」
 響介に手を引かれて、並んで座った。
 目に美しい料理は本格的だった。
「美味しいね」
「俺は懐石料理より焼き肉の方が好きだけど、奈都が好きなら、いつでも付き合う」
 両親がいた頃を思い出すような、豪華な料理だった。
 煮物も薄味で、焼き魚は粕漬けだった。揚げ物はカラッと揚がっていて、口の中でサクサクして美味しい。石鍋の料理には、お肉も入っていて、食べ応えもある。
 食後にイチゴのシャーベットが出てきた。
 いつも小食の奈都は、夢中になって食べてしまった。
「亜稀は足りたか?」
 響介が聞いている。
「追加でカツ丼頼んでおいた。響介は足りたか?」
「僕はもうお腹いっぱいだ」
 女中が入ってきて、テーブルの上を片付けていく。
 亜稀の前を先に片付けて、注文しておいたというカツ丼が置かれた。
 さすが成長期。
 食べる量も半端なく多い。
 お茶を出されて、奈都と響介はまったりとお茶を飲む。
 あっという間に、カツ丼を食べ終えて、亜稀もお茶を飲み出す。
「明日の朝食は1階のレストランでどうぞ」
 女中は亜稀が食べた器を片付けた。
「お布団は、こちらにひとつ、隣にふたつ並べてもよろしいでしょうか?」
「隣に三つでいいです」
 亜稀が女中に答えた。
「僕たち兄弟なんです」
「そうなんですね。すぐに準備をいたします」
 奈都はテーブルの上に身を乗り出した。
「わたし、こっちで寝るよ」
「それは駄目だ」
 すぐに響介が却下した。
「せっかく旅に来たんだし、三人で寝てもいいだろう?」
 亜稀は家長である響介に聞いている。
 布団を分けられたら、一人で眠るのは間違いなく亜稀だ。
「奈都が決めたらいい」
「そんな」
(私に選択をさせるなんて、響ちゃんは何を考えているんだろう)
「奈都、平等に愛してくれるよね?」
「うん」
 奈都が断れないことは、二人とも知っているはずなのに、奈都は響介の顔を見て、イジワルと唇を動かした。
 響介は奈都の言葉が通じたのか、笑った。
 試しに三人で寝てみたらいいんじゃないかと提案してきた響介だ。
 これがお試しなのだろうか?

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