花姫だという私は青龍様と結婚します

綾月百花   

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2   高校に行けるんですか?

2    転校したら美少年がいました

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 唯が転入した桜花高校は、桜が満開だった。

 制服は想像以上に可愛かった。まるで唯に誂えたような、赤と黒のタータンチェックのプリーツスカートにダークグリーンのブレザー。白いブラウスにスカート、共布のリボン。靴下は黒のハイソックスで靴は黒のローファー。

 唯が通っていた学校の制服とよく似ている。以前の学校はグレーのブラザーにベージュのプリーツスカートだったが、新しく誂えられた制服の方が、桜の花の中で栄える。

 花姫たちは皆集められたように、1年生のクラスになり、同じ級友になった。

 24歳の千鶴は、高校生の制服を着て、「破廉恥ですわ」と高校へ行くことを拒んだが、青龍様のご厚意なので、渋々、制服を身につけた。

 5人の女子がいきなり転校してきた教室は、賑やかだ。

 急に華やかになった教室で男子たちが騒いでいる。


「今年は当たりだ」


 なんと失礼な言い方だろうか。


(でも、当たりかも?)


 クラスの男子の中に、目立った二人がいた。

 外国人なのか、白銀の長い髪を一つで結んでいる男子の目は青く、湖面を見ているようだ。

 その友人なのか、長い黒い髪を一つで結んだ男子は、黒い瞳をしていた。

 二人とも女子に負けないほど顔立ちも体型も美形で、身長も高い。

 二人だけが際立って目立つ。

 残りの生徒は、どこにでもいるような顔立ちに、唯が以前通っていた高校と変わらない普通の男子だ。

 女子は揃えたように、おとなしい子たちが揃っていた。

 このクラスで虐めはあり得ない。そんな雰囲気だった。

 騒がしいのは、花姫の紗椰以外だ。

 いつも自由を奪われていた花姫たちは、久しぶりに着る洋服や下着に興奮している。

 唯も、顔には出さないが、久しぶりに身につけた下着や洋服に喜びを覚えていた。

 クラス全体で、転入生のための学校の周りの探検をした。

 大きな池があり池の中にも遊歩道があり東屋がある。

 古い学校だけあり、斬新なものはないが、高台にある高校には展望台もあった。

 テニスコートを探したが、部活は盛んではないらしく、テニスコートはなかった。山間にある高校なので、日暮れも早く下校時間も早い。

 学校の途中にお店はなかった。


(コンビニでもあったら、おやつとか買えたかもしれないのに、ちょっと残念)


 屋敷の食事は、特別豪華ではないが、それなりに美味しい。

 毒の混入ないか達樹が毎食チェックするが、それがしきたりだと言われれば、仕方がない。

 おやつは基本的にない。

 スナック菓子はもともと食べさせてはもらえなかったが、学校の帰りや習い事の帰りに、コンビニに寄って、購入して食べていたが、御嵩家に来てから、おやつはなくなった。

 青龍様のご厚意で、久しぶりに甘いお菓子を食べられたが、それもすぐになくなってしまった。

 一つ願いが叶うと、次を願ってしまう。

 他の花姫たちと同じだ。

 その姿が見苦しいと感じていたが、自分も同じく見苦しい。


……
…………
………………


 お昼はお弁当を持たされている。

 達樹が毒味をした食事が弁当箱に入れられている。

 唯は隣の席の女子に話しかけた。


「一緒に食べない?」

「私とですか?」


 三浦という生徒は、驚いた顔をして戸惑っている。


「花姫様なのでしょう?」

「そうだけど、普通の友達がほしいの」

「花姫様たちは、皆さん集まっていらっしゃいますよ?」

「私に敬語はいらない。友達がほしいの」

 三浦は戸惑った顔をしたが、唯が他の花姫たちのところへ行かないので、「どうぞ、いらして」と誘ってくれた。

 机を合わせて、花姫以外の女子と話をする。

 好きなテレビ番組の話だったり、好きな本の話だったり、好きな食べ物の話だったり。

 どれも懐かしく、ほんの一ヶ月くらいで、俗世から切り離されてしまったのだと身にしみて感じた。


「ここの図書館には、最近の本は置いてあるの?」

「読みたい本があったら、届けを出したら購入してくれるよ」


 唯は微笑む。


「スマホは持っていないの?」

「取り上げられてしまったの」


 女子たちは、なんとも言えない顔をした。


「私もほんの少し前まで、普通の高校生だったの。突然連れてこられてしまって」


 三浦がスマホを差し出してくれた。


「調べたいことがあったら、使って」

「ありがとう。いいの?」

「学校で私が使ってないときなら、使ってもいいよ」


 他の女子も、ポケットからスマホを取り出して、「私のも使っていいよ」と言ってくれた。


「ありがとう」


 唯は嬉しくて、泣いてしまった。


「両親とは別々にされたの?」

「うん。突然だったから、二時間しか別れの時間がもらえなかった」

「写真は持っているの?」


 唯は首を左右に振る。

 鞄に入っていたはずの、アルバムや思い出の品は屋敷に着いたら綺麗になくなっていた。着替えが入れられた鞄まで、すべて家から持ち出した荷物はなくなっていた。


「もう会えないんだって」

「花姫様って、威張っているイメージ強かったけど、唯さんは、他の花姫様とは違うのね」

「唯って呼んで。ここでは普通の学生なの」


 女子たちは、戸惑いながらも頷いてくれた。

「私は香奈」と三浦は言った。


 一度に五人も友達ができた。


(香奈に由香里、明里、沙織、美保、どの子も優しい女の子だ)

「花姫様とお知り合いなれたって話したら、両親たち大喜びしそう」

「私の両親も大喜びしそうよ。今夜は赤飯になるかも」

「地域で話題になっちゃうわ」

「お力は授かれるかしら?」

「私の両親、私を花姫にしようとして青龍神社に毎日参拝しているのよ」


 五人の言葉を聞いて、唯は曖昧に笑った。


「私、そんなにたいした者じゃないよ」

「そんなことないよ」


 五人が声を揃えて言った。

 唯は授業が終わると、校門にやってきた。

 香奈たちが見送ってくれる。

 達樹が車の扉を開ける。


「唯、またね」

「今日はありがとう。また明日」


 手を振って、唯は車に乗り込む。

 車の外では香奈たちが手を振っている。

 車が静かに走り出した。唯は後ろを振り向き、手を振り続ける。


「唯様、シートベルトをはめてください」

「はい」

「さっそくお友達を作られたのですか?」

「素敵なお友達ができました」

「御嵩家のことは、お話にならないように気をつけてください」

「わかりました」


 少しだけ話してしまったが、ほんの少しのきっかけがほしかった。


「本を貸してもらってもいい?」

「構いませんよ」


 唯が微笑む。


「学校は楽しかったようですね」

「とっても楽しかった」

「青龍様も喜んでいらっしゃるでしょう」

「帰宅したら、参拝します」

「唯様、龍道に入りますので、しばらく目を閉じていてください。車酔いをしますので」

「はい」


 唯は言われたとおりに、目を閉じた。

 異次元を通っているのか、体が気持ち悪い。


「唯様、失礼します」 

 唯の顔が蒼白になってきて、達樹は唯の目元を手で覆った。

 すっと眠りに落ちていく。


……
…………
………………


 龍之介は付き人の辰巳と龍道を通りながら、満足げに微笑んでいた。


「話さなくて、よかったのか?」


 龍之介は青龍の姿だ。辰巳は黒龍だ。

 年齢は同じだ。龍之介が唯に夢中になっていることを一番知っていて、一番近くで見てきた。友であり、護衛係だ。


「唯は花姫と群れない。普通の女子生徒と友達になっていた。今までの花姫とは違う。実に興味深い」

「花姫たちの嫉妬を買うだけではないか?」

「唯なら、嫉妬にも負けはしない」

「そうやって、龍之介は唯を遠くから見ているだけで満足なのか?」


 龍之介は顔を顰めた。


「満足ではないが、警戒はされたくない」

「青龍様ともあろう方が、ずいぶん弱気なことを」

「辰巳はいいのか?花姫の中に気に入った子がおるのだろう?」

「一人もらってもいいのか?」

「俺は唯一人でいい。他には興味はない」

「では千鶴をいただこう」


 辰巳は一番年上の千鶴を指名した。

 今の花姫以外にも花姫はいたが、他の花姫たちは龍族の花嫁にされて、20代の花嫁は千鶴だけになっている。

 龍之介は辰巳が千鶴を好きになったことに気付いていたので、他の龍族の花嫁候補から外していた。

 結婚しなければ、花姫も年を取っていく。

 花の命は短い。

 24歳はまだ若いが、花姫の中では高齢の部類だ。成熟するまで待っていたとも言えるが、途中で他の花姫たちに殺されてしまうというリスクもある。


「さっそく婚礼するがいい」

「ありがたく、ちょうだいします」


 二頭の龍は龍道を通り抜けると、龍の住処である地底湖に降り立った。


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