花姫だという私は青龍様と結婚します

綾月百花   

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2   高校に行けるんですか?

3   寂しいの

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 朝食のあと学校へ行く準備をして廊下に出ると、御嵩家の従者が贈り物を持って歩いていた。

 唯は足を止めて、従者たちの行方を見ていた。

 従者たちが進んでいる先は、唯の部屋ではない。


(青龍様って、誰にでも贈り物をするんだ?なんだ、私だけじゃなかったんだ……)


 従者たちは千鶴の部屋の前に止まった。

 千鶴のお付きの者が、襖を開けると、従者たちは千鶴の部屋の中に入っていった。

 唯はそれを見て、廊下を進んで学校へ向かった。


「青龍様は千鶴さんみたいな綺麗な人が好みなんだね?」

「唯様は青龍様のお気に入りの花姫様ですよ」


 みのりがすぐに答えた。


「慰めなんていらない。私、すごく恥ずかし。自分だけが青龍様の特別だと思い込んでいた。助けてくださったのも青龍様がお優しい神様だからだったんだね?」

「唯様、それはきっと違います」

「……もういいの」


 唯は泣きそうな顔で、廊下を進んだ。


……
…………
………………


 その日、唯は学校に行っても、あまり楽しくなかった。

 香奈に「元気がないね」と慰められて、由香里や明里、沙織や美保に心配させてしまった。

 香奈がキャンディーをくれて、久しぶりに甘いものを食べて、嬉しくて泣いてしまった。由香里や明里たちもおやつを持ってきていて、それを唯に食べさせてくれた。美保がコミックを1冊持ってきてくれて、それを借りた。毎日、1冊ずつ貸してくれると約束してくれた。


「私からは何も返せなくて、ごめんなさい」

「元気を出して、唯」


 五人が校門のところまで送ってくれる。


「ありがとう」


 達樹が開けた車に乗り込むと、五人は手を振ってくれる。

 唯も手を振る。

 車が走り出すと、唯は眠らされる。


……
…………
………………


 耳元でパンと手を叩かれて、唯は目を覚ます。


「唯様、つきましたよ」

「ありがとう、達樹」

「今日はご気分が優れませんか?」

「うん、ちょっと寂しかったの」

「どうかなさいましたか?」


 すぐにみのりが、唯の傍らに姿を現した。

 目の前を水色の着物に赤い羽織を着た千鶴が歩いていた。

 千鶴は学校を辞めて、屋敷にいる。

 千鶴の付き人が、増えている。


「千鶴様は婚礼が決まったようです」


 じっと見ていると、みのりが教えてくれる。

 すれ違うとき、唯は隅により「おめでとうございます」と頭を下げた。


「ありがとう、唯さん」


 わざわざ千鶴は立ち止まって、頭を下げてくれる。

 長い髪は、結い上げられている。

 自由時間の髪型は自由だ。神事の時は長く下ろし、一つで結ばなければならないが、自由時間は自由に過ごしていて構わない。綺麗に化粧をした千鶴は美しかった。

 熟した女性の美しさがにじみ出ている。

 千鶴が通り過ぎたあと、唯はみのりに手を引かれて我に返る。


「唯様もお疲れでしょう。お風呂が先でしょうか?お散歩をされますか?」

「今日はお風呂に入って、宿題をします」


……
…………
………………


 みのりが出してきた着物にすべて首を振り、唯は自分で箪笥の中から、白い着物を取りだし、ここに来た頃に着ていたピンクの羽織を出した。


「青龍様の贈り物は、身につけないのですか?」


 みのりが困った顔をする。


「私には必要ありません」


 リベルテが羽ばたいてきて、唯の肩に乗る。

 宿題を終えて、1冊のコミックを読むとやることがなくなってしまう。翌日の授業の教科書とコミックを鞄に入れると、唯はぼんやりと膝を抱える。

 いつも正座をしているが、そういう気分でもない。


「……退屈」

「唯様、今日は神社に参拝には行かれないのですか?」

「青龍様は千鶴さんを選んだのでしょ?」

「青龍様は神なので、何人でも妻を娶られることもあるそうです」

「私はそういうのは、イヤだな」

「人との理とは違うのです」


 今まで黙っていた達樹が宥めるように静かに言った。


「神様だもんね。わかった!……習慣は変えちゃいけないよね」


 唯は立ち上がると、達樹が襖を開ける。


「人間になれるように頼んでくる」

「唯様」


 みのりが慌てたように、唯の手を取る。


「青龍様は唯様を大切に想っておられます」

「もうどうでもいいよ」


 唯は先に歩き出した。

 後からみのりと達樹がついてくる。


……
…………
………………


 神社で参拝するが、心では何も願わず何も考えなかった。

 そのまま唯は散歩に出かける。

 先に宿題をしたので、もう薄暗くなってきている。


「唯様、今日の散歩は止めましょう。暗くなって参りました」


 オレンジの小鳥は、唯の肩を止まり木にしている。

 ピヨピヨと鳴いている。


「唯様、笑顔をお見せください」

「楽しくないのに、笑えないよ」


 万年桜が見える庭から桜を見上げる。


「万年桜の木のところには行けないの?」

「聖域になっておりますので、青龍様だけが行けます」


 達樹が答えた。


「誰が手入れしているの?生えっぱなしじゃないでしょ?」

「植木職人がおります」

「じゃ、私は植木職人になろうかな?花も咲かせることができなら、便利でしょ?」

「唯様は花姫様ですよ」

「花姫を辞める方法は、木の肥やしになるしかないのね?」


 唯は俯いて、部屋に戻っていく。


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