花姫だという私は青龍様と結婚します

綾月百花   

文字の大きさ
32 / 76
5   転生転生

7   花姫の結婚

しおりを挟む
 唯は目を覚ますと、腕と足の痛みに苦しみだした。

 ベッドの上で食事を食べさせ、青波が薬を持ってくる。薬を飲むと痛みが少し軽減する。


「青龍様がお助けになりました」

「私、また抱かれたの?」

「ええ、抱かれておりました」

「お尻は痛くないわ」

「青龍様が痛みを取り除きました」


 唯の頬が赤くなる。


「前世では痛かったのに」

「龍之介様の優しさでございます」


 青波は頭を下げて、部屋から出て行った。


「みのり、鏡を見せて」

「畏まりました」


 みのりは鏡台から手鏡を持ってくる。

 手渡されて、唯は自分の顔を見る。

「大人びているわ」


 手で胸に触れる。胸も大きくなっている。


「本当に抱かれたのね」

 心が喜んでいる。抱かれて嬉しい。
 
 痛みまで取ってくれた。その優しさも嬉しかった。


「達樹、神社まで抱いていって。龍之介様にお礼を言いたいの」

「動いて平気ですか?」

「今は痛みがないの。薬を飲んだばかりだから」

「畏まりました」


 みのりが羽織を持ってきて着せてくれる。

 達樹に抱かれて、唯は神社に向かった。その途中で白無垢姿の花姫様を見かけた。


「小梅様と湖子様と功美様、古都様でしょうか。今日は婚礼日和ですね」

「綺麗ですね」


 白無垢姿に綿帽子を被った花姫たちが付き人に手を引かれ歩いて行く。


「お見送りしていかれますか?」

「うん」


 唯はその美しさに惹かれて、頷いていた。

 御嵩家の門の前に、牛車が4台止まっていた。

 見送りに来た花姫たちから離れて、唯はその様子を見ていた。


「牛車に乗っていくの?」

「昔からのしきたりです。龍道に入ってしまうので車と変わりませんが」

「形だけなのね」


 四人の花姫はそれぞれ牛車に乗り込んでいく。

 花姫たちが、お祝いを言っている。


「花嫁姿も綺麗ね」

「唯様もお似合いになると思いますよ」

「私は似合わないよ」


(前世でも、私は着なかった。花嫁衣装もいいな)


 4台の牛車はゆっくり動き出した。


「龍道までは、ゆっくり歩いて行きますが、龍道に入ったら、すぐに目的地です」

「不思議ね。龍道って」

「龍道は龍神様が通る道ですね」

 唯は頷いた。

 前世では龍道を使って高校に通っていた。

 そこで紗椰は男子生徒に犯されていた。木の肥やしにされると思った瞬間、きっと絶望しただろう。


(私も前世で犯されている。龍磨に抱かれ、赤ちゃんを殺された。思い出すと悲しくなってくる。辛い前世だった。それでも幸せな時間もあった。龍之介様は愛してくれた)


「唯様痛みますか?戻りましょう」


 急に泣き出した唯を見て、達樹は唯を部屋に連れて行く。


「唯様、今日も旦那様がいらしてくださいますよ?」


 励ますように、みのりが声をかけてくる。


「旦那様?」

「青龍様です」


 唯は頷いた。


「旦那様の名前は秘密にしてください」

「わかりました」


 みのりは唯に頭を下げた。

 ピヨピヨと鳴き声が聞こえて、山の中からオレンジ色の小鳥が飛んでくる。


「リベルテ?」


 唯の手の上に乗ると、オレンジ色の小鳥は、ピヨピヨと鳴き続けた。


「リベルテなの?」


 小鳥は唯の怪我の部分を避けるように飛び跳ねている。

 再会を喜んでいるようだ。


「リベルテは長生きなのね?」

「普通の小鳥ではないのかもしれませんね」


 達樹が言った。


「ここは普通の森ではありません。魔物が住む森ですので」

「リベルテは魔物なの?」

「前世でも危害は与えてこなかったので、大丈夫かと思いますが、気をつけた方がいいかもしれません」

「リベルテ、森にお帰り。あなたは自由よ」


 自由に動く手で、小鳥をつつくが、リベルテは結局、唯の部屋に入ってきてしまった。


「止まり木を用意してあげて」


 達樹にベッドに寝かされると、唯は達樹に言った。


「畏まりました」


 達樹は頭を下げると、消えた。

 みのりはお茶を淹れている。


「体は痛みませんか?」

「手も足も痛いです」


 憂鬱そうな唯の顔を見て、みのりはお茶とお菓子を持ってきた。


「甘い物を食べると元気になれますよ」


 お菓子は京菓子のようなお菓子だった。

 今では高くて、そうそう手に入らない高級品だ。

 後継者がいなくて、京菓子の専門店はほとんどない。

 まがい品は売られているが、色や形が似ているだけだ。
 
 本物の京菓子を両親が食べさせてくれたが、雲泥の差だった。

 ここで出されるお菓子は、両親が食べさせてくれた歴史のあるお菓子の味がする。


「いただきます」


 小さなお菓子を口に入れて、その甘さに頬を緩ませた。


「懐かしい味」

「そうでございますか?」

「うん」


 背中を起こされ、お茶を飲ませてもらった。

 パッと龍之介の姿が、ベッドの脇に立った。


「龍之介様」

「痛みはどうだ?」

「痛いです」

「しばらく二人にしてくれ」

「わかりました」


 みのりの姿が消えると、龍之介は唯にキスをした。


「嫌か?」


 唯は首を左右に振る。


「私、今まで誰ともキスをしたことがなかったの。龍之介様が初めてです」


 龍之介が嬉しそうに微笑む。

 愛らしくてたまらないという顔をしている。


「痛みを取ってやる。怖ければ、目を閉じていろ」

「うん」

 唯は目を閉じた。

 唇が重なる。

 霊気が体の中に入ってくる。

 舌が入ってきて、唯の舌と絡まる。

 深いキスになると、霊気も強くなってくる。

 龍之介の掌が傷に触れる。
 
 痛みが消えていく。

 唯はされるまま、身をさらけ出していた。

 掌が体を愛撫してきても、拒まなかった。

 心地よい霊気に、体が満たされていく。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

「無能」と捨てられた少女は、神の愛し子だった――。 凍てつく北の地で始まる、聖獣たちと冷徹公爵による「世界一過保護な」逆転生活。

秦江湖
恋愛
魔法適性「鑑定」がすべてを決める、黄金の国ルミナリス。 名門ベルグラード公爵家の末娘アデリーンは、十五歳の鑑定式で、前代未聞の『鑑定不能(黒の沈黙)』を叩き出してしまう。 「我が家の恥さらしめ。二度とその顔を見せるな」 第一王子からは婚約破棄を突きつけられ、最愛の三人の兄たちからも冷酷な言葉とともに、極寒の地「ノースガル公国」へ追放を言い渡されたアデリーン。 着の身着のままで雪原に放り出された彼女が出会ったのは、一匹の衰弱した仔狼――それは、人間には決して懐かないはずの『伝説の聖獣』だった。 「鑑定不能」の正体は、魔力ゼロなどではなく、聖獣と心を通わせる唯一の力『調律師』の証。 行き倒れたアデリーンを救ったのは、誰もが恐れる氷の公爵ゼノスで……。 「こんなに尊い存在を捨てるとは、黄金の国の連中は正気か?」 「聖獣も、私も……お前を離すつもりはない」 氷の公爵に拾われ、聖獣たちに囲まれ、これまでの不遇が嘘のような「極上溺愛」を享受するアデリーン。 一方で、彼女を捨てた黄金の国は、聖獣の加護を失い崩壊の危機に直面していた。 慌ててアデリーンを連れ戻そうとする身勝手な王族たち。 しかし、彼らの前には「復讐」の準備を終えたアデリーンの兄たちが立ちはだかる。 「遅いよ。僕らのかわいい妹を泣かせた罪、一生かけて償ってもらうからね」 これは、すべてを失った少女が、真の居場所と愛を見つけるまでの物語。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

辺境伯夫人は領地を紡ぐ

やまだごんた
恋愛
王命によりヴァルデン辺境伯に嫁ぐことになった、前ベルンシュタイン公爵令嬢のマルグリット。 しかし、彼女を待っていたのは60年にも及ぶ戦争で荒廃し、冬を越す薪すら足りない現実だった。 物資も人手も足りない中、マルグリットは領地の立て直しに乗り出す。 戦しか知らなかったと自省する夫と向き合いながら、少しずつ築かれていく夫婦の距離。 これは、1人の女性が領地を紡ぎ、夫と共に未来を作る「内政×溺愛」の物語です。 全50話の予定です ※表紙はイメージです ※アルファポリス先行公開(なろうにも転載予定です)

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

理想の男性(ヒト)は、お祖父さま

たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。 そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室? 王太子はまったく好みじゃない。 彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。 彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。 そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった! 彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。 そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。 恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。 この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?  ◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。 本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。 R-Kingdom_1 他サイトでも掲載しています。

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス! ※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。 【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】

処理中です...