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6 神様から求愛されて困っています
2 龍之介の求婚
しおりを挟む龍之介は唯を抱き上げて、青龍神社の洞窟にやってきた。
人工呼吸で呼吸は取り戻した。
龍之介の指輪をはめて、霊気を送り込んでいくと心臓の拍動もしっかり戻ってきた。
唯の体から濡れた着物を消して、暖かい毛布にくるむ。
濡れた長い髪は、結ってあったリボンがほどけ、綺麗なストレートの髪から、まだ雫が落ちていく。
龍之介は魔術を使って、唯の髪を乾かして、洞窟の中を暖めた。
現れた出雲の青龍は、龍之介も会ったことがあるが、龍太郎より年上の格式の高い龍神様だが、色欲が強く、花嫁は数十人いる。傲慢なところがある気難しい龍神だ。
花姫の力が全くない唯に声をかけるとは思ってはいなかった。唯は美しく、所作も綺麗だが、他の花姫たちも美しい者は多い。声をかけるなら、花姫の霊力のある花姫から求婚していくだろうと油断をしていた。
青龍の姿になって、唯を腕の中に包みこむ。
人の形をしているときより、龍神の力が増す。
唯を抱きたい気持ちはあるが、唯は後孔で交わりを嫌う。
怪我をしていないのなら、このまま霊力を与えていれば目を覚ますだろう。
「龍之介様」
唯が目を覚ました。
「助けてくださったのですか?あっ、指輪が落ちて」
「指についているだろう?」
「よかった」
唯は指先を見て、安心したように微笑んだ。
「俺のことを旦那様と呼んだな」
「龍之介様、見ていらしたのですか?」
「唯から目を離したことはない」
「私、他の龍神様の花嫁にはなりたくはありません」
指輪を手で包むようにしながら、唯は龍之介の腕に体を寄せる。
「私は龍之介様がいいの」
「先ほどの青龍様は、格式のある龍神様だがいいのか?」
他に嫁がせるつもりはないのに、龍之介は唯に揺さぶりをかける。
「私を他の龍神様の花嫁にと考えているのですか?」
唯は唇を噛みしめて、龍之介の腕から抜け出して、龍之介の顔の前に座った。
「龍之介様の花嫁は、唯ではないのですか?」
唯の声が涙声になっている。
「私は龍之介様をお慕いしているのに」
唯は顔を覆って泣き出した。
龍之介は人の形になり、唯の前に跪いた。
「唯、顔を上げなさい」
「はい」
頬を涙で濡らした唯が、龍之介を見つめる。
目の前に箱が現れる。
龍之介は箱を開けると、唯はその箱の中をじっと見つめた。
以前より深い色の青い指輪があった。
「これは結婚指輪だ。その指にはめてもいいか?」
「私の指輪ですか?」
「唯のための指輪だ」
龍之介は今まではめていた指輪を外そうとした。
「待ってください。この指輪は外さないで」
唯は指輪を守るように、手を引いた。
「嫌なのか?」
「違います。指輪を二つはめてはいけない規律でもあるんですか?」
「それはない。どちらも俺の鱗だ」
「それなら、二つください。前世の私も今の私も愛してくださいますか?」
龍之介は微笑む。
「どちらの唯も同じ唯だ」
左手を差し出しながら、唯は龍之介を見つめる。
「幸せにしてください」
「幸せにする」
唯の指に新しい指輪がはめられた。
龍之介は唯を抱きしめて、口づけを交わす。
そのまま瞬間移動して青波のいる地下神殿に移動した。
「青波」
「龍之介様、どういたしましたか?」
「結婚した。立会人になってくれ」
毛布にくるまれた唯の指を、青波に見せる。
「着物くらい着せてあげなさい」
「そうだった。いいか。結婚したからな」
「わかりました」
青波は、おざなりに拍手をした。
「今回は披露宴を行うのか?」
「唯の花嫁衣装を見てみたい。明日、披露宴を行う」
「また急な」
「一日も譲れぬ」
唯を抱きしめた龍之介は、瞬間移動で唯の部屋に移動した。
達樹とみのりが、顔を上げ、すぐに跪いた。
「唯様、ご無事で何よりです」
「心配しておりました」
「二人とも顔を上げよ」
達樹とみのりは顔を上げた。
「結婚した。明日は披露宴だ。みのり花嫁衣装の準備を頼む。その前に、唯に着る物を」
毛布にくるまった唯は頬を赤くしていた。
「私、結婚します」
「おめでとうございます」
達樹とみのりの声が揃った。
「唯様、お召し物を着ましょう」
「みのり、髪飾りをなくしてしまったの。ごめんなさい」
「また作ってさしあげます」
龍之介が唯の手を取ると、その手に髪飾りを握らせた。
「龍之介様」
「あの湖は俺の庭だ。落とし物はすぐに見つけられる」
「ありがとうございます」
唯は、髪飾りを両手で握って頭を下げる。
「着物を着てこい。もう花姫の正装の白い着物は着るな。他の神にちょっかいをかけられる」
「はい、龍之介様」
唯はみのりに寝室に連れられて、襖が閉められる。
「どの着物を召されますか?」
「私に似合う物をお願いします」
「どの着物もお似合いになりますよ」
みのりの選んだ着物は、赤色に桜の花が咲いた着物だった。
緑の羽織を身につけると、襖を開けられた。
「唯、デートだ」
唯の姿を見ると、龍之介は楽しげに声を上げた。
「龍之介様、デートをご存じなんですか?」
「俺も人間界で過ごしていたからな」
「いつですか?」
「唯をずっと近くで見ていた」
「ストーカーですか?」
「ストーカーではない。護衛だ」
「護衛ですか?」
唯は久しぶりに、声を上げて笑った。
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