花姫だという私は青龍様と結婚します

綾月百花   

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6   神様から求愛されて困っています

4   龍之介とデート

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 深夜に目覚めた唯は、龍之介の腕に抱かれていた。

 知らぬ間に着物を着せられていた。


「龍之介様」

「目覚めたか」


 唯を抱きしめ、龍之介は唯に口づけをした。


「……あっ、私」


 唯は自分の胸に触れる。


「胸から蜜が出るなんて、知らなかった。恥ずかしい」

「花姫は胸からだけではなく、全身から甘い蜜を出す。恥ずかしがることはない」


 まだ部屋の中が花の香りがする。


「唯との初夜だ。一時的に花姫の力を解放した。見よ。万年桜が満開になっておる」


 龍之介の顔を見ていた唯は、部屋の外へと視線を向けた。

 葉桜だった万年桜が満開になっていた。


「綺麗」


 風がそよいで、花びらが舞った。


「唯も美しかったぞ」


 唯の頬が赤く染まった。


「私、龍之介様と結ばれたんですね」

「そうだ、俺の花嫁だ。唯も神の一員になった。これで不老不死だ。花の肥やしになることもない」


 唯はひっそり植わっている花姫の生る木を見た。


 たくさんの花姫の屍を撒かれた花姫の生る不思議な木。

 前世では神になっても花姫の生る木に撒かれた唯にとっては、確率が減ったに過ぎない。


「……だといいです」


 唯は甘えるように、龍之介にしがみついた。


(もう二度と、離れたくない)


 唯の不安を感じ取ったのか、龍之介は唯を抱えて、ぴょんと飛び越えた。

 今度は冷えた地下神殿だった。


「唯とは飛んだことはなかったな」

「飛ぶとは?」


 龍之介は唯の体を神殿の床に下ろすと、青龍の姿になった。


「さあ、おいで」


 指を下ろすと、唯はその指に足をかけた。指は腕まで上げてくれる。大きな体をよじ登っていく。


「しっかり捕まっていなさい」


「どこかに行くの?」


 唯は龍之介の首の後ろにのっかり、頭によじ登る。


「散歩をしてこよう」


 龍之介の体がふわりと浮かんで、唯は龍之介の鬣にしがみついた。


「落ちるなよ」


 一気に空へと上がって、唯は「わー」と声を上げて喜んだ。


「すごい、御嵩家があんなに小さくなった。わー、町の灯りも見える。月に手が届きそう」


 興奮した唯が、嬉しそうな声を上げる。


「手は放すな」

「はーい」


 両手を上げていた唯は、また鬣を掴んだ。


「飛ぶぞ、唯」

「はい」


 龍之介は唯を乗せて、高く高く登って、空の上を飛んでいく。


「海が見えるよ。山もすぐ近くに見える。龍之介様はいつもこんな素敵な景色を見ているの?」

「山も越えるし、海も渡る。どこまでも飛んでいけるぞ」

「素敵」


 唯は龍之介の鬣にしがみついて、身を乗り出す。


「あまり身を乗り出すな。落ちたら危ない」

「もっと早く飛べるのでしょう?」

「飛べるが、唯を落としてしまう」

「ねえ、もっと飛んで。見たことない景色を見せて」

「唯はお転婆だな」

「ねえ、お願い」

「しっかり捕まっていなさい」


 龍之介は唯を載せたまま、スピードを上げて飛んでいく。


「すごい」


 嬉しそうな声を上げて、唯ははしゃいだ。

 山から谷へ、川を上り大きな川の中も潜った。

 霊気で、唯の体を縛り付け、霊気の膜で覆い、唯が望むように早く飛んでみせた。

 ゆっくり龍之介は御嵩家の龍之介の神殿の洞窟に下りた。


「楽しかった。龍之介様、ありがとうございます」


 唯は龍之介の体から降りようとして、足を滑らせて落ちていく。それを指で受け止めて、床に下ろす。


「あはは、なんだか足がガクガクするわ」


 着物の袂を直しながら、唯は楽しそうに笑う。

 龍之介は人の形になり、声を上げて、唯と笑い、その体を支える。


「お転婆な唯を楽しませるほど、飛んだからな」

「すごく楽しかった。また連れて行ってね」


 唯は龍之介に抱きついていた。


 龍之介の手が優しく唯の体を包みこむ。


「いつでも連れて行ってやる。約束しよう」


 唯が顔を上げると、そのまま唇が重なった。

 啄むように唇が重なると、龍之介は唯の体をまた横抱きにして、何かを飛び越えるように移動をする。

 今度は唯の部屋だった。

 達樹とみのりが、はっと顔を上げて、跪く。


「明日は披露宴だ。ゆっくり休みなさい」

「もっと一緒にいたい」

「今夜はゆっくり休みなさい。少し疲れただろう。明日の披露宴で寝不足な顔ではせっかくの花嫁衣装が似合わなくなってしまう」


 部屋の中には、明日の花嫁衣装が飾られていた。


「……忘れた」


 龍之介はにっこり笑うと、唯の頬に口づけをして体を離した。


「ゆっくり眠るんだよ」

「はい」


 龍之介の姿が消えて、唯は花嫁衣装を見て頬を赤らめる。


「みのり。これが白無垢?私が着るの?」


「唯様の白無垢でございます。途中でお着替えもと青龍様が美しい打ち掛けも用意されています」


 白無の隣には、青い打ち掛けがかけられている。銀糸と織ってあるのか、輝くような青色だ。


「龍之介様の鱗の色のような色だわ」


 嬉しくて唯は打ち掛けの前で涙を浮かべていた。


「唯様、お風呂に入ったら、お肌のお手入れをいたしましょう」

「うん。私、すごく幸せだわ」


 達樹とみのりは、涙を浮かべた唯を見て、微笑んでいた。

 二人とも、今生では幸せになって欲しいと心から願っていた。


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