花姫だという私は青龍様と結婚します

綾月百花   

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7   龍之介様と結婚します

1   披露宴

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 朝、お風呂で体を清めると、みのりに着付けをされて、美しく化粧をされていく。


「みのりってなんでもできるのね?」

「わたくしも唯様のお世話をすることで、青龍様のお力をいただいております。努力ももちろんしますが、ご加護があります」


 綺麗に髪を結い上げ、頭に綿帽子を載せられる。


「とてもお美しい」


 達樹が唯の姿を見て、ぽつりと声をこぼした。


「ありがとう、達樹」

「衣装直しでは、髪型も変えますので、お時間になりましたらお迎えに上がります」

「みのり、お願いします」

「お任せください」

「披露宴では、お食事は目の前を通り過ぎていくだけですので、軽くお食事を召し上がってください」


 みのりは台所に入ると、テーブルの上に置かれたサンドイッチを持ってきてくれた。

 この屋敷には、和食しかないと思っていた唯は、久しぶりに見るサンドイッチに驚いてしまう。


「和食以外も、食べ物が食べられるんですか?」

「唯様は、何も求められないので、お好きではないのかと思っておりました」

「サンドイッチは大好きよ。食べられるなんて、思ってもみなかった」


 みのりは微笑むと、お皿に小さく切られたサンドイッチを載せて、持ってくる。


「兄様、小さなテーブルをお願いします」

「了解した」


 唯の前に、小さなテーブルがポンと現れる。

 そのテーブルにお皿を載せて、オレンジジュースをグラスに入れて、ストローを入れた。

 着付けた着物の上から、汚れ予防にエプロンをされると、「どうぞ」とみのりが勧めてくれた。


「わたくしが作りましたから、毒味は必要ありませんが、心配でしたら兄様に食べてもらいますか?」

「いいえ、いただきます」


 みのりの手作りのサンドイッチは、ミックスサンドで、懐かしい味がした。


「美味しい」


 みのりが微笑んでいる。


「ご挨拶などされますが、頭を下げる程度でいいかと思います。旦那様がお話をされますので、唯様は旦那様にお任せください」


 唯は頷く。

 用意されたサンドイッチを食べて、オレンジジュースを飲んだ。


「ごちそうさまでした。とても美味しかった」
 

 みのりは微笑むと唯の手と口元を濡れたタオルで拭うと、化粧直しをした。


「では、参りましょうか」


 みのりが立たせてくれる。着物の崩れをチェックすると、唯の手は達樹が取った。

 みのりが後からついてくる。


……
…………
………………



 披露宴は神々が集まっていた。屋敷にいる花姫たちも座敷に並んでいる。

 神々はめでたいめでたいと酒を酌み交わし騒いでいる。花姫たちは口数が少ない。

 花姫の正装の白い着物に、羽織を着ている。

 言葉は全部、旦那様が話してくれる。

 神や龍神が一人ずつ挨拶に来る隣で、唯はただ旦那様の隣でにこにこしているだけだった。

 一通り挨拶が終わると宴会になった。そこで唯は衣装直しに座敷を出る。

 みのりが迎えに来た。


「唯様、お召し替えの時間です」

「はい」


 唯は龍之介に頭を下げると、席を立つ。

 みのりに連れられて、部屋に戻ると素早く着物を着替える。ピンクの着物に青龍様とお揃いの色の打ち掛けを羽織って、髪は長い髪をピンクのリボンを編み込みながら垂らされる。

 大きなリボンで飾られた。和洋折衷だ。

 みのりに手を引かれて座敷に戻ると、神々が盛大な拍手をした。

 自然に唯は微笑みを浮かべる。

「美しい」とあちこちから声が上がって、龍之介は満足そうだ。


「今日は楽しんでくれ」


 龍之介が声を上げると、神々も大騒ぎを始める。

 午前中に始まった宴会は深夜まで続いた。

 時々、みのりがお茶を飲ませてくれた。

 神々が帰った後、龍之介と唯が座敷から出て行く。

 残された花姫たちは、ずっと不機嫌な顔をしていた。

 その顔を見てみないふりをしながら、唯は部屋を出た。


「なんで唯が青龍様の花嫁になるわけ?」


 閉められた襖の奥で誰かが叫んだ。


「霊力なんて、ないのに。青龍様をたらし込んだのかしら?」


 龍之介は指をさっと振った。

 声は聞こえなくなった。


「花姫ともあらう者が見苦しい」

「みんな龍之介様の花嫁になりたかったのです。仕方がありません」

「今日の宴会は花姫たちの見合いの席でもあったのだ。もっとにこにこしていれば、花姫をと求めてくる神々はいたはずだ」

「……龍之介様」


 龍之介は花姫たちの態度に不満を持ったのだろう。

 花姫の親は、龍之介だ。

 どの花姫も、龍之介が求め生まれてきた。花姫に名付けをして親鳥に預けてきたのだから、龍之介の気持ちもわかる。


「龍之介様、今の花姫の名前がみんな『こ行』で始まるのは、何か理由があるのですか?」

「ああ、いつも生まれた花姫を見て直感で名付けてきたんだが、唯を失ったショックで名付けの直感が湧かなくて、困っていたら辰巳が人間界で名付け辞典を買ってきてくれて、たまたま開いたページの名前を順に付けていっただけだ」

「名付け辞典ですか?」


 本屋で見たことがある。「名前の付け方辞典だ」唯も人間界にいた頃に見たことがあった。


(なるほど、1ページしか開けなかったんだ)


 唯は少しだけ呆れて、名付けられた花姫を不憫に思った。


「私に赤ちゃんが生まれたら、名付け辞典では名前は付けないでくださいね」

「当然だろう。唯の子供だ。その子を見て、直感で名付けていくぞ」


 龍之介の手が唯の手を握る。


「龍之介様、披露宴と綺麗な着物をありがとうございます。私、幸せです」


 青い瞳が優しく微笑む。

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