花姫だという私は青龍様と結婚します

綾月百花   

文字の大きさ
57 / 76
9   二度目の転生

6   高校生活(5)

しおりを挟む

「勝間さん、今日の試合の事だけど、私が勝ったら、部長を辞めてくれる?」

「何を言ってるの、唯に勝てるわけがないでしょ?新しいラケット、まだ手に馴染んでないでしょ?」

「馴染んでないけど、勝負をするなら、こちらも条件を出させてもらってもいいでしょう?」

「いいわよ。鈴木唯が勝ったら、辞めてあげる」


 手首のブレスレットがきつく締まってきた。


(あ、何か危ない)


 勝間は席を立つと、唯の体を突き飛ばした。床に転がった唯の足首に向けて机を振り上げて勢いよくぶつけた。ガチャンと盛大な音がした。


「痛い!」

「何をするの?」


 佳奈が怒って、唯を守るように前に出た。


「唯は強いんでしょう?こちらもハンディもらわなくちゃ」

「ラケットを奪っただけじゃ気が済まないの?」


 教室がざわめく。

 唯は足を抱えて蹲っている。

 ぶつけられた机は、まだ唯の足の上にある。唯は痛みで、自分で机を退けられない。


「保健室に連れて行ってあげたら?親友でしょう?試合は予定通り行うわ。来なかったら失格ね」

「酷い」


 佳奈は笑っている勝間に構わず、唯のもとに駆けつけた。急いで机をどかして、唯の前に屈む。


「唯、痛む?」

「痛い」


 涙をこらえているが、顔が蒼白になっている。


「ちょっとどいて」


 唯を囲むようにできていた輪を裂くように龍星と辰成が教室に入ってきた。


「唯さんを運ぶね」


 龍星は唯を横抱きにすると、ついてこようとする佳奈を辰成が止めた。


「保健室に連れて行く。次の授業は休みだ。教員に伝えておいて」


 佳奈は頷いた。


「私も唯について行く」

「俺たちに任せて」


 佳奈に言い聞かせると、辰成は龍星の後を追う。

 唯は痛みに気を失っていた。


「折れているな」

「あいつ土に埋めたくなった」

「龍星が言うと洒落にならないから止めとけよ」


 保健室につくと、誰も入ってこられないように結界を張った。

 すぐに龍之介の姿が現れた。


「やられたな」

「神様、あのくそ女を土に埋めてください」


 龍星は龍之介に言った。


「考えておこう」


 龍之介は素っ気なく言うと、唯の体に霊気を送って痛みを取っていく。


「龍星は骨折を治せるのか?」

「一応、練習してきた」

「今、できるな?」

「母上を治す」


 龍星は唯の足に霊気を注ぎ、砕けた骨を付けていく。


「手伝うか?」

「頼む、結構粉砕している」


 辰成も霊気を送り砕けた骨を繋げていく。

 唯の瞼がうっすらと開いていく。


「誰?」

「今は眠りなさい」


 瞼の上に掌を翳すと、唯は眠った。

 唯は足を治療された。


「骨折はくっつけたけど、さすがに午後からテニスができるような足じゃないよ」

「一時的に痛みを取ってやったらどうだ?」

「また足が砕けるぞ」


 龍星と辰成が保健室で唯を囲んで話している。


「神様、すぐに骨折した足を治してやって」

「龍星、無茶なことばかり言うな」


 龍之介はすぐ神様と呼ぶ息子に呆れるが、龍之介に対する嫌みだということはわかっている。


「棄権させたら、唯は一生このことを悔やむだろう。痛みを取ってやって、勝負させよう。足が砕けたら、また繋げてやってくれ」

「神様が無茶なことを言いますが、辰成はどう思う?」

「時間まで霊気で骨をできるだけ再生させて、テーピングで固定しよう。試合後にもう一度、骨折の治療をしよう」

「辰成も無茶を言う」

「龍星はどういう治療を考えている」

「辰成と同じだ。どちらにしても、今からテニスをすれば、足はまた砕ける。ただどこまで母上が痛みに耐えて戦えるか。勝てるのかまでは、わからない。俺たちが霊気を遠隔で送ってどれだけ痛みが取れるかもわからない」


 龍星と辰成は唯の足首に霊気をあてて、少しでも骨折部分がつくように、時間になるまで続けた。

 龍之介が唯の顔の前で手を叩くと唯は目を覚ました。それと同時に、龍之介は姿を消した。

 姿を消したまま、唯の体から痛みを取っていく。


「唯」


 保健室の扉が開いて、佳奈が姿を現した。

 龍星と辰成は、唯の足にテーピングをしている。


「唯は大丈夫なの?」

「大丈夫ではないけど、勝負するんでしょう?」


 龍星は唯に訊いた。


「動けるなら、勝負する」

「無理はしないで」

「棄権したら、悔しいでしょ?足が砕けても戦う」

「……唯」


 佳奈が唯にしがみつく。


「佳奈さん、唯さんのラケットと着替えを部室に運んでくれる?」

「どうして?」

「唯さんには、試合まで安静にして欲しい。俺たちが運ぶから」

「わかった」

 佳奈は保健室から飛び出していった。

「龍星さんと辰成さん、助けてくれてありがとう」

「気にしないで。部室まで送るから」

 龍星は唯の体を横抱きにして歩き出した。

 辰巳は唯の足に霊気を送り続けている。

 龍星と龍之介は痛みを取り続けている。


「なんだか、体が温かいわ」

「眠くなるだろう?」

「うん」


 唯は運ばれている間、眠っていた。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

「無能」と捨てられた少女は、神の愛し子だった――。 凍てつく北の地で始まる、聖獣たちと冷徹公爵による「世界一過保護な」逆転生活。

秦江湖
恋愛
魔法適性「鑑定」がすべてを決める、黄金の国ルミナリス。 名門ベルグラード公爵家の末娘アデリーンは、十五歳の鑑定式で、前代未聞の『鑑定不能(黒の沈黙)』を叩き出してしまう。 「我が家の恥さらしめ。二度とその顔を見せるな」 第一王子からは婚約破棄を突きつけられ、最愛の三人の兄たちからも冷酷な言葉とともに、極寒の地「ノースガル公国」へ追放を言い渡されたアデリーン。 着の身着のままで雪原に放り出された彼女が出会ったのは、一匹の衰弱した仔狼――それは、人間には決して懐かないはずの『伝説の聖獣』だった。 「鑑定不能」の正体は、魔力ゼロなどではなく、聖獣と心を通わせる唯一の力『調律師』の証。 行き倒れたアデリーンを救ったのは、誰もが恐れる氷の公爵ゼノスで……。 「こんなに尊い存在を捨てるとは、黄金の国の連中は正気か?」 「聖獣も、私も……お前を離すつもりはない」 氷の公爵に拾われ、聖獣たちに囲まれ、これまでの不遇が嘘のような「極上溺愛」を享受するアデリーン。 一方で、彼女を捨てた黄金の国は、聖獣の加護を失い崩壊の危機に直面していた。 慌ててアデリーンを連れ戻そうとする身勝手な王族たち。 しかし、彼らの前には「復讐」の準備を終えたアデリーンの兄たちが立ちはだかる。 「遅いよ。僕らのかわいい妹を泣かせた罪、一生かけて償ってもらうからね」 これは、すべてを失った少女が、真の居場所と愛を見つけるまでの物語。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

辺境伯夫人は領地を紡ぐ

やまだごんた
恋愛
王命によりヴァルデン辺境伯に嫁ぐことになった、前ベルンシュタイン公爵令嬢のマルグリット。 しかし、彼女を待っていたのは60年にも及ぶ戦争で荒廃し、冬を越す薪すら足りない現実だった。 物資も人手も足りない中、マルグリットは領地の立て直しに乗り出す。 戦しか知らなかったと自省する夫と向き合いながら、少しずつ築かれていく夫婦の距離。 これは、1人の女性が領地を紡ぎ、夫と共に未来を作る「内政×溺愛」の物語です。 全50話の予定です ※表紙はイメージです ※アルファポリス先行公開(なろうにも転載予定です)

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

理想の男性(ヒト)は、お祖父さま

たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。 そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室? 王太子はまったく好みじゃない。 彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。 彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。 そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった! 彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。 そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。 恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。 この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?  ◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。 本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。 R-Kingdom_1 他サイトでも掲載しています。

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス! ※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。 【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】

処理中です...