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9 二度目の転生
6 高校生活(5)
しおりを挟む「勝間さん、今日の試合の事だけど、私が勝ったら、部長を辞めてくれる?」
「何を言ってるの、唯に勝てるわけがないでしょ?新しいラケット、まだ手に馴染んでないでしょ?」
「馴染んでないけど、勝負をするなら、こちらも条件を出させてもらってもいいでしょう?」
「いいわよ。鈴木唯が勝ったら、辞めてあげる」
手首のブレスレットがきつく締まってきた。
(あ、何か危ない)
勝間は席を立つと、唯の体を突き飛ばした。床に転がった唯の足首に向けて机を振り上げて勢いよくぶつけた。ガチャンと盛大な音がした。
「痛い!」
「何をするの?」
佳奈が怒って、唯を守るように前に出た。
「唯は強いんでしょう?こちらもハンディもらわなくちゃ」
「ラケットを奪っただけじゃ気が済まないの?」
教室がざわめく。
唯は足を抱えて蹲っている。
ぶつけられた机は、まだ唯の足の上にある。唯は痛みで、自分で机を退けられない。
「保健室に連れて行ってあげたら?親友でしょう?試合は予定通り行うわ。来なかったら失格ね」
「酷い」
佳奈は笑っている勝間に構わず、唯のもとに駆けつけた。急いで机をどかして、唯の前に屈む。
「唯、痛む?」
「痛い」
涙をこらえているが、顔が蒼白になっている。
「ちょっとどいて」
唯を囲むようにできていた輪を裂くように龍星と辰成が教室に入ってきた。
「唯さんを運ぶね」
龍星は唯を横抱きにすると、ついてこようとする佳奈を辰成が止めた。
「保健室に連れて行く。次の授業は休みだ。教員に伝えておいて」
佳奈は頷いた。
「私も唯について行く」
「俺たちに任せて」
佳奈に言い聞かせると、辰成は龍星の後を追う。
唯は痛みに気を失っていた。
「折れているな」
「あいつ土に埋めたくなった」
「龍星が言うと洒落にならないから止めとけよ」
保健室につくと、誰も入ってこられないように結界を張った。
すぐに龍之介の姿が現れた。
「やられたな」
「神様、あのくそ女を土に埋めてください」
龍星は龍之介に言った。
「考えておこう」
龍之介は素っ気なく言うと、唯の体に霊気を送って痛みを取っていく。
「龍星は骨折を治せるのか?」
「一応、練習してきた」
「今、できるな?」
「母上を治す」
龍星は唯の足に霊気を注ぎ、砕けた骨を付けていく。
「手伝うか?」
「頼む、結構粉砕している」
辰成も霊気を送り砕けた骨を繋げていく。
唯の瞼がうっすらと開いていく。
「誰?」
「今は眠りなさい」
瞼の上に掌を翳すと、唯は眠った。
唯は足を治療された。
「骨折はくっつけたけど、さすがに午後からテニスができるような足じゃないよ」
「一時的に痛みを取ってやったらどうだ?」
「また足が砕けるぞ」
龍星と辰成が保健室で唯を囲んで話している。
「神様、すぐに骨折した足を治してやって」
「龍星、無茶なことばかり言うな」
龍之介はすぐ神様と呼ぶ息子に呆れるが、龍之介に対する嫌みだということはわかっている。
「棄権させたら、唯は一生このことを悔やむだろう。痛みを取ってやって、勝負させよう。足が砕けたら、また繋げてやってくれ」
「神様が無茶なことを言いますが、辰成はどう思う?」
「時間まで霊気で骨をできるだけ再生させて、テーピングで固定しよう。試合後にもう一度、骨折の治療をしよう」
「辰成も無茶を言う」
「龍星はどういう治療を考えている」
「辰成と同じだ。どちらにしても、今からテニスをすれば、足はまた砕ける。ただどこまで母上が痛みに耐えて戦えるか。勝てるのかまでは、わからない。俺たちが霊気を遠隔で送ってどれだけ痛みが取れるかもわからない」
龍星と辰成は唯の足首に霊気をあてて、少しでも骨折部分がつくように、時間になるまで続けた。
龍之介が唯の顔の前で手を叩くと唯は目を覚ました。それと同時に、龍之介は姿を消した。
姿を消したまま、唯の体から痛みを取っていく。
「唯」
保健室の扉が開いて、佳奈が姿を現した。
龍星と辰成は、唯の足にテーピングをしている。
「唯は大丈夫なの?」
「大丈夫ではないけど、勝負するんでしょう?」
龍星は唯に訊いた。
「動けるなら、勝負する」
「無理はしないで」
「棄権したら、悔しいでしょ?足が砕けても戦う」
「……唯」
佳奈が唯にしがみつく。
「佳奈さん、唯さんのラケットと着替えを部室に運んでくれる?」
「どうして?」
「唯さんには、試合まで安静にして欲しい。俺たちが運ぶから」
「わかった」
佳奈は保健室から飛び出していった。
「龍星さんと辰成さん、助けてくれてありがとう」
「気にしないで。部室まで送るから」
龍星は唯の体を横抱きにして歩き出した。
辰巳は唯の足に霊気を送り続けている。
龍星と龍之介は痛みを取り続けている。
「なんだか、体が温かいわ」
「眠くなるだろう?」
「うん」
唯は運ばれている間、眠っていた。
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