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10 15歳でお召し上
2 いきなりの求婚
しおりを挟む眠る唯に鱗を煎じた薬を慎重に飲ますと、しばらくして唯は目を覚ました。
「ここはどこ?」
「ここは御嵩家の青龍神社の屋敷の一つだ」
「神社?」
「あなたは誰?龍星さんに似ているけれど、声が違うわ」
「龍星は俺の息子だ」
「龍星さんのお父さん?」
唯は自分が身につけている薄手の白い浴衣を見て、胸を隠す。
「寒いか?」
「恥ずかしい」
「そうか」
龍之介は花姫のために用意している羽織を持ってきた。
唯を召し上げるときの準備はまだできていない。
「あり合わせの羽織で申し訳ないが、しばらくこれを着ていてくれ」
唯の好きなピンク色を選んで唯に着せる。
「……あの、家に帰りたい」
「一度、挨拶に戻るか?」
唯は足を動かそうとして、痛みに顔を顰めた。
「痛むか?」
「すごく痛い」
龍之介は唯の足下に腰を下ろすと、唯の足に触れて痛みを取っていく。
「痛みが軽くなってきました」
「今の唯には安静が必要だ」
「うん。勝負で無理をしたから?」
「このまま歩けない体になりたいか?」
「それはいや」
唯は首を大きく振る。
「それなら安静にしていような」
「わかった」
疲れた顔をした唯は、元気がない。
痛みで疲弊している。
唯の笑顔が見たくて、唯が今、一番求めていることを提案してみる。
「両親に会いに行くか?」
「うん」
唯が嬉しそうに微笑んだ。
龍之介は唯を抱き上げると、唯が龍之介にしがみついてきた。懐かしさを感じながら瞬間移動で唯の家のリビングに連れてきた。
両親がソファーに座っていた。
「お父さん、お母さん」
「唯」
「唯ちゃん」
二人は一度立ち上がると、すぐに跪き頭を下げた。
「青龍様、大切な唯様をお守りできなくて、申しわけございません」
「そのことはいい。唯が無茶をするのを、俺は見ていて手伝った。二人に過失はない」
両親は床に頭がつくほど、頭を下げている。
「唯を座らせたい」
「はい」
母親がソファーを綺麗に整えた。
唯はソファーに横にされた。
「唯の足の治療をしたが、今のままでは一生不自由な足のままになることがわかった。お召し上げには早いが、御嵩家で療養させたい。神の薬を飲めば、足も治る。別れが早くなるが申し訳ない」
「唯が健康な姿でいることがなりよりの喜びです。どうかお召し上げください」
「ねえ、お召し上げって何?」
寝かされていた唯は体を起こした。
「唯は御嵩家の青龍様からお預かりしていた子なんだ。私たちの本当の子供ではない」
唯は父親の顔をじっと見つめる。母は泣いていた。
「もっと早くいろいろ教えてあげれば良かったわね。ごめんね、唯」
母が涙を流しながら、唯に謝った。
「私、うちの子じゃないの?じゃ、誰の子?」
「そこにいらっしゃる青龍様の妻になる身だよ」
父が説明してくれるが、唯は信じられない。
「青龍様の子?」
「俺の子と言えば、俺の子だが、正確に言えば、俺の妻になる子だ」
唯は青龍様と呼ばれた龍星とよく似た人を見つめる。
「龍星さんのお父さんでしょう?年の差カップルにしても歳が離れすぎているわ。唯はまた15歳よ」
「本当は16歳で嫁ぐことになっていたが、その怪我を治すために神の屋敷に来てもらいたい」
「行かなかったら、どうなるの?」
「足は不自由なままだ。一生杖をついて歩くことになるだろう。どちらにしても16歳で召し上げられる。7ヶ月早くなっただけだ」
「高校にはもう行けないの?テニスもできないの?」
「その足ではテニスをすることは無理らしい」
「……そんな」
唯は俯いた。
確かに無理をして試合をした。
(足が砕けても、勝間さんに勝ちたかった。テニスが一生できなくなるなら、あの試合を辞退した?試合は辞退できなかった。部員のみんなの期待を裏切ることはできなかった。すべて自業自得なのね)
「次の薬の時間までには、戻らなければならない。欲しいものはあるか?母に言って持ってきてもらえ」
唯は椅子から降りようとして、足をついて前に倒れた。
「歩いてはならぬ。治らなくなるぞ」
龍之介は唯の体を抱き上げた。
「どこに行きたい?」
「なんでも持っていっていいの?」
「いいぞ」
「部屋に連れて行って」
唯は折れたテニスラケットと県大会でもらったトロフィーを鞄に入れてもらった。
「洋服はいらないの?」
「屋敷では着物を着る」
「わかった。お母さん、下着と着物の髪飾りを入れて」
母親はドレッサーの中から唯の髪飾りを入れる。
「写真はいいの?」
「あちらの世界では消えてしまう」
「寂しいのね」
お気に入りの櫛と長い髪を束ねるゴムとリボンを入れてもらった。化粧品も欲しかった。普段使っている基礎化粧品と母に買ってもらった口紅を入れてもらった。
「お母さん、お菓子の本が欲しい。もらってもいい?」
「もちろん、ここにあるものは、すべて唯ちゃんのものよ」
母はたくさんのお菓子の作り方の本と料理の作り方の本とケーキ型やクッキー型などのケーキを作るための器具を入れてくれた。
「お父さん、お母さん、最後に抱きしめて」
龍之介は唯をソファーに下ろした。
父と母が唯を抱きしめた。
「今まで育ててくれてありがとうございます。唯は幸せでした。夏の旅行に行けなくなってごめんなさい。ずっと楽しみにしていたの。行けなくなってすごく残念です」
「唯の足の方が大切だ。青龍様に治していただきなさい」
「青龍様ってなに?」
「神様よ」
唯はまた龍之介の顔を見上げた。
「神様なの?」
龍之介は頷いた。
「神様なら、私の足をすぐに治して。この家にいられるようにして」
「神にも限界がある。唯には最善の治療をした。その結果今の状態になっている」
「唯ちゃん、無理を言っては駄目よ。青龍様は唯ちゃんのことを一番に考えて決められたのよ」
「お母さん」
唯はソファーから降りようとして、足の痛みに動けなくなる。
「痛むのか?」
「……うん」
「別れが短くて申し訳ない。屋敷に戻る」
龍之介は鞄を腕にかけると、唯を抱き上げた。
「これでお別れだ」
「お父さん、お母さん、まだ行きたくない」
「もう行きなさい」
「早く足を治していただきなさい」
両親は唯に微笑んだ。
すっと両親の顔が見えなくなり、目を開けると屋敷の中だった。
「達樹とみのり、そろそろついたか?」
「はい。只今到着いたしました」
「今の唯は15歳だ。足の怪我治療のために早く召し上げた。記憶は戻っていない。また世話を頼む」
「畏まりました」
達樹とみのりは跪き、深く頭を下げる。
「唯の付き人の達樹とみのりだ。唯のお世話をしてくれる。不自由があったら何でも頼むがいい」
「お願いします。唯です。ねえ、神様。記憶って何?またってどういうことですか?」
「今は、まだ知らなくてよい」
龍之介は唯の体を大切に抱いている。
「唯様のお部屋は洋室を用意いたしました。ベッドの方が過ごしやすいでしょう」
「みのり、鞄を持ってくれるか?」
「はい。気付かなくて申し訳ございません」
みのりは龍之介の腕にかかっていた鞄を持って、唯の部屋に運び入れる。
「先に寝かせよう」
龍之介は唯をベッドに寝かす。
「痛みを取ってあげるから、力を抜いてなさい」
「うん」
唯は体から力を抜いて、ベッドに身を預けた。
霊気を注がれ、痛みが治まってくる。
「とりあえず、ベッドの上で安静だ。動くと傷に障る。主治医は龍星と辰成だ。二人で解決できないときは青波を呼んでくれ」
「畏まりました」
「達樹とみのりは片付けが終わったのか?」
「荷物だけ運び入れました」
「数刻で片付くだろう。唯は俺が見ている。片付けてきてくれ。片付けた後で、唯の着物を仕立てに出してくれ。こんなに早く唯が来るとは思っていなくて、準備ができていない。大至急で頼む」
「畏まりました」
二人は丁寧に頭を下げると、部屋から出て行った。
「神様、龍星さんと辰成さんはお医者様なのですか?」
「医師の資格を持っている。唯の足の治療をしたのも二人だ。一晩かかかってその足を治したが、人の世界では不自由な体になってしまう。だから、時期は早くなったが、ここに来てもらった」
「私はまた歩けるの?」
「毎食の薬を飲みなさい」
「はい」
「唯、俺のことは龍之介と呼んでいい」
「神様なのに?」
「唯は俺の妻になる。唯が生まれる前から決められている」
「先にもいいましたけど、歳が離れすぎています。それに龍星さんのお父さんってことは、私は後妻になるのですね?私、まだ15歳です。まだ結婚もしたことがありません。キスだってしたことないのに、後妻なんていやです」
「そうか、嫌か」
龍之介は唯の髪を撫でる。
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