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2 お兄ちゃんのお見合い
3 香水のにおいをさせて、私に触らないで
しおりを挟む友麻は早朝、亜里砂の病院に行った。
会わないと決めていたけれど、どうしても顔を見たくなった。
亜里砂は眠っていた。
心電図モニターがつけられて、鼻から酸素が送られている。
「亜里砂」
躊躇う前に投げ出されている手を握った。手から点滴のチューブが垂れ下がった。
「亜里砂、ごめん」
声をかけても、人形のように動かない。
握った手をそっと下ろして、華奢な体を抱きしめるが、やはり動かない。
諦めて、手を放して布団を綺麗にかけてやる。
「目を覚ませよ」
白っぽく乾いた唇にキスをしても目を開けなかった。
巡回の看護師が点滴を交換しに来た。
「おはようございます。亜里砂は目を覚まさないのですか?」
「あなたは?」
「亜里砂の兄です」
「お兄さん。鎮静剤で眠っているだけです。薬が切れれば起きますよ」
「ありがとうございます」
看護師が病室から出て行った。
椅子を引き寄せ、亜里砂の手を両手で握って、祈るように額につける。
心電図が乱れ始めると、目が開いた。
呼吸が荒い。
「ごめんなさい。ごめんなさい。もう何も話さないから、痛くしないで。お母さん、やめて。痛いのもういや。ごめんなさい。ごめんなさい・・・」
「亜里砂、亜里砂」
肩を揺すると、ふわりと視線が揺らぐ。
ボッとした視線が友麻を捉えた。
「お兄ちゃん?どうしているの?私を捨てたのに」
「亜里砂が心配だったんだ」
友麻は亜里砂を抱きしめた。
「離して」
亜里砂は友麻の胸を押した。
「女の香水のにおいがする。不潔よ。もう一人の亜里砂を抱いた手で、私を抱かないで」
酸素を外すと、友麻がいない方に足を下ろす。
「好きって言ったのに、翌日、婚約する?私、もてあそばれたんだよね?」
亜里砂は笑い出した。
「本気になった自分が恥ずかしい。お兄ちゃんのこと好きだったのに。うふふ、お兄ちゃんはお母さんと一緒。私に熱い煙草を押しつけた。私のこと捨てて、女と抱き合ってる。私をベランダの外に追い出したお母さんと同じ・・・うううっ、痛いよ・・・」
傷ついた足は、砕けて床に倒れる。手で支えきれずに頭まで打ってのたうちまわる。
「亜里砂」
心電図モニターも点滴も外れて、警告のサイレンが鳴る。
友麻は見ていることしかできない。
看護師が駆けつけてくる。
「痛いっあああっ、痛いのいや、やめて。お母さん、ごめんなさい。ごめんなさい・・・」
「点滴と鎮静剤。まずベッドに乗せるよ。お兄さん、どいていて」
友麻の目の前で、亜里砂はベッドに乗せられ、暴れる体を押さえつけられて点滴をされると鎮静剤を入れられた。
まるで死ぬように寝てしまった。
「まだ落ち着いていないから刺激を与えないでください」
「はい」
看護師に注意されて、友麻は病室から出て行った。
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