リア充撲滅。眼力で焼き尽くしてやる☆

綾月百花   

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3   リア充撲滅

4   孤独な思い

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 友麻は精密検査のために入院した。
 頭の打撲と足の裂傷らしい。
 友麻を病院に届け、家に戻ると朝になっていた。
 両親は仕事を休んだが、亜里砂は学校へ出かけた。
 ゲームを起ち上げると、ルームでダンスを踊る。
 可愛いツインテールからひよこの着ぐるみに着替えた。
 自分にはそれが似合っているような気がした。
 ひよこは言葉を発しない。ピヨピヨと鳴くだけだ。
『ありさ、おはよう』
 ログインするのを待っていたかのようにチャットルームが開いた。
『おはよう』
『昨日はダンジョンに行けなくてごめんね』
『INしてなかったから』
『体調悪くした?』
『私の言葉には魔力があるのかもしれない』
『どうかしたの?』
『お兄ちゃんを呪ったの。お兄ちゃん死にかけた』
『死んでないんでしょ?』
『昔、お母さんに言われたの。話しちゃいけないって。黙っていなさいって。言葉を発したら、罰を受けたの。きっと私の言葉に悪い物があったの。私は話をしちゃいけないの』
『僕はありさと話をしたいよ』
『ゆうも呪われる。だからさよならしよ』
『待ってよ、ありさ。呪いなんてないよ』
『もう誰とも話さない』
『チャットは文字だよ』
『そっか。文字だったら大丈夫?』
『そうだよ。大丈夫だよ』
『ゆうは優しい』
『誰とも話さないのは寂しいよ』
『ずっと寂しいから変わらないよ』
『僕が友達じゃ駄目かな?』
『ゆうなら友達たくさんできるよ。ギルドに入りなよ』
『ありさが入るなら入ってもいいよ』
『私は誰とも交われない』
『僕と話せるじゃないか』
『もう話さない』
『待ってよ、ありさ。今日の狩りの話をしよう』
「亜里砂、少し話があるんだけど」
 亜里砂はスマホを閉じて、目の前にいる蘭々を見上げた。
「前のパーティーの時は、嫌な思いさせてごめんね」
 亜里砂は首を左右に振った。
「怒ってない?」
 亜里砂は頷いた。
「声でないの?」
 亜里砂は頷く。
「亜里砂のママすごいね。今回の新作のワンピース、すごく可愛い」
 亜里砂は頷く。
 嬉しくて、微かに微笑む。
 以前、亜里砂がプレゼンのために着たワンピースだ。
 怪我をして、撮影が遅れてしまった時のワンピースだ。
 母は亜里砂をモデルにして作品を作る。スケッチブックにはラフ画の亜里砂にいろんな服を着せている。
 亜里砂も母に教えてもらい、服のデザインをしている。まだまだ下手だが、母は褒めてくれる。
 母のワンピースが褒められて嬉しい。胸元のデザインは亜里砂の提案した図案が選ばれた。母と一緒に作ったワンピースだ。
「それでね、もうすぐクリスマスでしょ。パーティーをしようと思うの。亜里砂は新作のワンピースを私に贈って、私はそれに見合う物を贈ってあげる」
(は?なんで私がワンピースを贈らなきゃいけないわけ?)
「買えばいいでしょう?」
 言葉は発しないと思っていたけど、それを忘れるほどの驚きにぽろりと声が出てしまった。
 亜里砂は試作品で作ったそれを持っているが、アンジュのワンピースは軽く10万以上する。
 母が扱っているブランドは日本だけではなくて、海外でも有名だ。
 海外にもいくつもお店を構えているほどだ。
 ただで簡単にプレゼントできるものではない。
 亜里砂はお小遣いをもらっているが、ほとんど貯金している。
 その貯金を崩して、蘭々にプレゼントするつもりはない。
 外資系企業のお嬢様が、洋服を強請っている姿は滑稽だ。
 きっと蘭々は、亜里砂よりお小遣いをもらっているだろう。
 亜里砂にとって1万円は大金だ。それ以上、もらえないといつも返している。
「声出るじゃない」
 亜里砂は軽く咳をしてみせた。
 風邪を引いていると思わせればいい。
「何?私がワンピース一着買えないと思ってるの?失礼ね」
 亜里砂は首を横に振った。
「屈辱的だわ」
 蘭々の形相が変わり、顔が真っ赤になっている。
 パチンと響く音と同時に頬が熱くなる。
 熱くなった頬に触れる。
(痛い)
 また余計なことを言ってしまった。
 蘭々を怒らせたのは自分だ。
 蘭々を見ていると生みの母を思い出す。
 気に入らないと意地悪なことをしたり、簡単に人を傷つけてきたりして。
 前はそんな子じゃなかったのに、俊と付き合い始めて、蘭々は変わっていった。
「みんな亜里砂を叩いても殴ってもいいよ。監視カメラの電源切ってくるから」
 蘭々はみんなにそう言うと、教室を出て行く。
 ざわっと教室の気配が変わった。
 その日、亜里砂は水をかけられ、体中に怪我をして帰った。
「亜里砂、どうしたの?ぐっしょり濡れて怪我をしてるじゃないの?」
「なんでもない」
「どうして濡れているの?」
「怒らせちゃった」
 亜里砂は蘭々の顔を思い出してクスクス笑った。
「誰を怒らせたの?」
「私、蘭々の奴隷なんだって」
「蘭々ちゃんがしたの?」
「蘭々はいつも自分で手を出さないわ。蘭々は王女様よ。変なの」
「学校に連絡するわ」
「いいの、別に。蘭々の、あんな怒った顔、初めて見たし」
「喧嘩をしたの?」
「アンジュの服が欲しいんだって。プレゼントしてって言われたの」
「亜里砂ちゃん」
 母が困った顔をしている。
 服は売るほどあるが、それをただであげていたら、価値は下がる。
 母に育てられて、ファッションの仕事を近くで見てきて、亜里砂も理解しているから、プレゼントはしたくない。
「買えばって言ったの。間違ってる?私」
 母は首を横に振った。
「亜里砂は正しいわ」
「ありがとう、お母さん」
 母に認められて、痛みが和らぐ。
「お風呂に入ってくる」
 お風呂に入っている間に、制服を洗濯した。コートはさすがにクリーニングに出さなければいけないだろう。
 お風呂から上がって、友麻が帰ってきていることに気付いた。
 母との遣り取りを聞かれていたと思うと情けない。
 亜里砂は声をかけず、身を隠すように部屋にこもった、
 三面鏡を開いて、自分の傷だらけの顔を見る。
 昔に戻ったような気がした。
 きっと罰だ。
「亜里砂、見せてごらん」
 部屋に救急箱を持った母が入ってきた。
「お母さん、ごめんなさい」
「女の子が顔に傷を作ったら駄目よ。せっかくの美人が台無しになっちゃうわ」
 顔の消毒をすると傷薬を塗っていく。
「体も見せてね」
「うん」
 パジャマを脱がせて、母は黙ってボタンをはめた。
「病院に行きましょう」
 亜里砂は首を左右に振る。
「お母さんと一緒じゃ行けない?お父さんを呼びましょうか?」
「どっちも嫌」
「でも、痛いでしょ?」
「罰だから」
「何の罰なの?」
「お兄ちゃんの怪我をさせたから」
「友麻の怪我は事故よ」
 亜里砂は沈んだ顔で俯いた。
「横になってる。とても疲れたの」
「亜里砂ちゃん、病院に行きましょう?」
「こんな傷、煙草を押しつけられた痛みよりずっと軽いよ」
 母は、腫れた足首に湿布を貼って亜里砂に布団をかけた。
「落ち着いたら、行きましょうね」
「うん」
 亜里砂のスマホは電池切れで、電源が落ちていた。そのことに気付いたのは、父に連れられ病院から帰ってゲームにログインしようとしたときだった。
 父は虐めの被害届と診断書を学校に提出したが、防犯カメラは蘭々が言った通り動いてなったために、犯人は特定できなかった。
 亜里砂は誰が主犯で、誰が殴ったのか知っていたが黙っていた。


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