転生したら聖女でした。聖女として生きてきます

綾月百花   

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5   北の王国の流行病

3   流行病(3)

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 レヨンは王都の近くまで馬で走った。目眩がして、落馬した。
 街道を歩く人々が集まってきて、馬から落下したレヨンを介抱する。近くの宿屋の女将が若い衆を連れてきて、レオンを宿に運んだ。布団を敷かれて、寝かされた。
「すまない」
「目を覚まされましたか?今、医師が来ますので、少々、お待ち下さい」
「お願いがあるんだ」
 レヨンは傷だらけの手を懐に入れると、一通の手紙を取り出した。
「国王陛下に届けて欲しい」
「この手紙を国王陛下にお届けするのですか?」
「私は動けそうもない。私はモレキュール王国のレヨン・レイ・ラディウス公爵と申します。モレキュール王国から至急の手紙を届ける途中でございました。どうかお願いします」
「王宮までは、もうそれほど遠くはございません。回復を待ってから、ご自身で窺われた方がよろしいでしょう」
「時間が惜しい。モレキュール王国が破滅してしまう。どうか頼む」
「分かりました。すぐに王宮に向かいます」
「ありがとうございます」
 レヨンは意識を失った。
 宿屋の女将は、馬車で王宮に向かった。





「北の街の宿屋と宿屋を利用した者が集団で発熱を起こしております。北の国から飛び火したようです。感染した患者は、その宿屋に集めたそうです。今後、感染者が出た場合、その宿屋に患者を送ると報告が来ました」
「とうとう、上陸したか」
「まだ死者は出ていないな?」
「北も街まで馬で三日かかりますので、三日の間に変化はあるでしょう」
「北の街は封鎖だ。人の行き来は禁止する」

 国王陛下が勅令を出した。

「直ちに指示を出してきます」

 北の街担当の公爵の後ろに座っている子爵家の騎士がすぐに立ち上がり、走って行った。
 扉がノックされ、騎士が扉を開いた。

「陛下にモレキュール王国から手紙が届いております。モレキュール王国の使者と名乗る者が、王都の外れで、落馬して動けなくなったとか。運ばれた宿屋の女将が、手紙を預かってこちらに来られました。手紙はこちらです」

 室内に入り陛下に渡そうとした騎士は、「室内に入るな」というイグレシア殿下の言葉で動きを止めた。

「そこで読んでくれ」
「畏まりました」



『異国から突然の手紙を受け取っていただきましてありがとうございます。私は、王宮で議員として仕えるフォルス・カロル・ラディウスと申します。
我が国は、農民から発症した疫病が流行り、国民のほとんど、王宮の者まで感染し、国が絶えそうな状態です。国王陛下も病に伏せっております。どうか聖女様のお力を授かりたいと思い手紙を、息子のレヨン・レイ・ラディウスに託しました。我が家は感染を恐れ、家に閉じこもっていましたので、誰も感染しておりません。息子が無事に到着できるように、望みを託しました。どうぞよろしくお願いします。我が国と息子をどうぞお救い下さい』


「その手紙は、密封し保管するように」
「はっ」

 イグレシアの指令に、別の騎士が大きな袋を持ってきて、その中に読み上げた騎士が手紙を落とした。袋に封をして、騎士が下がった。

「おぬしの名は何という?」
「我が息子、次男のシグロ・モワ・へプトマースと申す」

 国王陛下が声を上げると、議員の一人へプトマース伯爵家頭首が立ち上がり声を上げた。

「シグロ、おぬしは感染した恐れがある。手紙を受け取った女将と宿に行き、そこで安静に暮らしておれ」
「父上、分かりました」
「使った馬車の御者が分かれば、一緒に宿に入るように」

 議員が窓を開け、扉も開けると外気の冷たい空気が入ってくる。

「どうか無事でいろ。シグロ」
「はい」

 シグロは駆けるようにして、応接室に待たせていた女将を連れて、馬に女将を乗せ、宿に向かった。帰る途中で女将に事情を話し、宿を封鎖する旨を話した。
 大変な事に巻き込まれたことを知った女将は、項垂れた。

「あの青年が感染を起こしていれば、私達も危険と言うことですね?」
「はい。きっと聖女様がお救い下さいます」

 女将は馬の上で神に祈る。






「王都の近くまで、感染者が来てしまった。もう聖女様にお願いするしかあるまい」

 陛下がイグレシアに言い聞かす。

「まずは元凶のモレキュール王国の騒動を治め、その後で、この国を浄化していただこう」
「ですが、アリエーテは聖女の祈りをする度に、身体を弱らせる」
「浄化しなければ、この国でも感染が起こり、イグレシアの大切なアリエーテ嬢も病にかかる恐れがある。どちらも危険なら、少しでも望みがある方がいいだろう」
「……」
「聖女を娶ると言うことはそういうことだ」
「父上、私も北の国境に向かうことをお許し下さい」
「ダメだ。おまえは、この国の皇太子だと言うことを自覚していないのか?イグレシアに何かあれば、この国を継ぐ者がいない」
「アリエーテを一人で行かせるのか?」
「一人ではない。騎士団も医師も看護師も連れて行こう」

 立ち上がっていたイグレシアは、椅子に座り頭を抱える。

「僕は遠くから見ていることしかできないのか?」
「悔しかろうが、堪えよ」
「エクスタシス公爵、また聖女様に任務を与えることを許して欲しい」
「娘は、聖女。自分で理解しておると思います」
「すまぬ」
「陛下と殿下のお言葉、娘に伝えましょう」
「頼む」
「はっ」

 マルモルは議員室から出て、急いで家路を辿る。

 その後を、イグレシアも走った。




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