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5 北の王国の流行病
5 流行病(5)
しおりを挟む国境地帯は酷い有様だ。監視台から見せてもらうと、死体が重なり合い、その死体を踏むように人々が集まっている。このまま国境を開けてしまうと、人々がなだれ込んでしまいそうだ。まずは、ここを収束させなければ、国境を開けることはできない。
アリエーテは監視台の上から祈りを捧げることにした。
雪が舞っている空が虹色に染まり、静寂が訪れる。
アリエーテの胸の痣が熱くなる。祈りを捧げる。美しい光が降り注ぐ。国境地帯を見ると、生きている者は一端倒れて、ふらりと立ち上がり国境から離れていく。
「国境を開けるぞ」
「死体には直接触れてはいけません。腐敗と感染のウイルスが残っているかもしれません。集めて燃やして下さい」
体内で由香が教えてくれる。ウイルスが何か分からないが、感染させる病気の元凶の様な物だと教えてくれた。
「畏まりました」
アリエーテは疲労で、身体がふらつく。いつものことなので、騎士がアリエーテを抱き上げる。
「すみません」
「いえ、お力を温存していただけないと、今回は厳しい旅になります。移動はわたくしがお手伝いをいたします」
「お願いします」
抱き上げられ、アリエーテは馬車に乗せられる。馬車の中には医師と看護師がいて、狭い場所に布団が敷かれている。
「聖女様、次の場所に到着するまで休んでいて下さい」
「……はい」
アリエーテは靴を脱ぎ、コートを着たまま、布団に横になる。
(正直に言うと、もう力が入らない)
「到着したら、起こして下さい」
「わかりました」
看護師が答え、アリエーテの脈拍を確認すると、毛布を掛けてくれる。アリエーテはすぐに意識を飛ばした。
国境を開けると、無残な死体がゴロゴロ転がっていた。既に腐敗が始まった物もあれば、踏まれて、原形を留めていない遺体もあった。
国境警備隊も出てきて、アリエーテが指示したように手袋を厳重にはめて、遺体を集め燃やした。それだけの作業で1日を費やした。国境は一端塞がれ、国境警備隊の宿舎に泊まる事になった。
アリエーテは看護師に起こされ、寄宿舎の中に入っていった。
「お食事の前に申し訳ないのですが、お風呂に入っていただけますか?野郎一団が汚れた身体で待っております。
「……はい」
移動の間の3日間はトイレ休憩しかなかったので、お風呂はありがたい。温泉があり女性看護師と一緒にお風呂に入り、洋服も洗濯をして、暖炉の部屋で乾かしてもらう。
「お食事は召し上がってください」
「はい」
部屋に運ばれた食事を摂って、すぐに横になる。
「お疲れのところ申し訳ございません。この先、お風呂の施設はないと思った方がいいと思いましたので」
「起こして下さり感謝しています。祈りの後は体力の消耗が激しく、起きているのが辛いのですが、お風呂には入りたかったので」
「後は、ごゆっくりお休みください」
「おやすみなさい」
アリエーテはすぐに深い眠りに入った。
翌朝は、朝食で起こされ、食事を摂った事で、いつもより身体の消耗は少なくなったようだ。
朝食を摂ると、幌馬車は出発した。
予定では王都まで行く予定だ。
最初の祈りで、かなり広範囲の浄化はできたはずだが、王都まで祈りが届いたかは分からない。
アリエーテは幌馬車の中で眠りについている。
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