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5 北の王国の流行病
7 流行病 エスパルダ王国(7)
しおりを挟むその頃、エスパルダ王国では北の村での感染は落ち着き、肺を患っていた者も完治へ向かっている。奇跡的な回復を見せている。
しかし、レヨンが立ち寄った宿屋では感染が起きて、宿泊していていた者が自宅へ戻り発症し、その家族に移し、感染が拡大していった。
王都の側の宿屋では、レヨンが肺を患い、生死の境を行き来していた。医師と他の従業員にも移り、倒れた者は集められ、隔離されていた。幸い女将とシグロは感染していない。女将は接触が少なく、シグロに至っては手紙を渡されただけだ。王宮から出る前に、父が水道を開け、石けんで手を洗ったのが良かったのかもしれない。
国民には外出禁止令が出されている。
エクスタシス公爵家では、プリュームが父親に叱られていた。
アリエーテが餞別で渡した香水をかけすぎて、家中が香水のにおいで充満している。
「香水の付け方も知らぬなら付けるな、くさすぎる。モリーとメリー、この馬鹿者を綺麗に洗ってくれ」
「畏まりました」
モリーとメリーは旦那様に深く頭下げると、「プリューム様、お部屋に向かいましょう」と、プリュームの手を取る。その手をプリュームは、払いのけた。
「嫌よ、お姉様がくださった香水よ。洗ってしまったらお姉様の香りが消えてしまうわ」
「アリエーテは、そんなにおいはさせておらなんだ」
「プリューム、香水の付け方を教えてあげますわ。今は、その香りを流していらっしゃい」
母に言われて、頬を膨らましたプリュームは、モリーとメリーに連れられて部屋に向かった。プリュームの部屋の中も、ずいぶん香りが強い。
「お嬢様、カーテンや寝具にも香水を付けられたのですか?」
「そうよ。いい香りがするもの」
「お風呂から上がったら換気をいたしましょう」
「香水は適量でございますわ」
アリエーテからもらった香水は、半分以上なくなっていた。
「いやーぁ、洗いたくはないわ」
「お嬢様、香りのいい入浴剤を入れましょうか?」
「……それならいいわ」
薔薇の形をした入浴剤を持たされて、やっとおとなしくなった。
アリエーテは眠り続けているが、今回の旅では、食事の時間に必ず、起こされる。体力が消耗しているアリエーテに少しでも栄養のある物を食べさせ、体力の回復を促している。食べた後、すぐに寝てしまっても、食べないよりは食べた方が身体は回復するだろうと、暖かいスープや栄養価の高い食事を食べさせる。トイレには女性看護師が付き添い、帰りは騎士が抱き上げて、馬車まで連れて帰る。いつもは眠るまま寝かせてもらえるが、今回の旅では、あと一度か二度、我が国を救うために祈りを捧げなければならない。
『由香、辛いわ。とても眠いの。食事より眠っていたの』
『アリエーテ、しっかりして、まだ自分の国を救ってないわ』
『そうね、そうだったわ。頑張らなくては……』
すっと意識が消えていく。
アリエーテ、あなたは精一杯頑張っているわ。聖女の役割をしっかり果たしているわ。
ぐったりしているアリエーテに、医師が点滴を始めた。腕にチクリした感じがしたが、アリエーテは目覚めない。
「体力の消耗が激しい。血圧も下がりすぎている。このままでは、次の聖女の祈りができないかもしれない」
看護師が寒くないように、予備のコートをもう一枚かけた。
ゆっくり身体の中に冷たい物が流れていく。
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