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7 婚礼
5 初夜(1)
しおりを挟む楽しいパーティーを終えて、アリエーテは家族と教会で別れた。
「アリエーテ、この宮殿が今日からアリエーテの家だ」
ウエディングドレスを着たままアリエーテは、イグレシアに手を引かれ王宮に入っていった。国王陛下と王妃様が宮殿の中で待っていてくれた。
「これからは、仲良くしてくださいね」
王妃様が優しい言葉をかけてくれた。
「新しい家族だ。イグレシアはこの日を待ち望んでいた。息子を頼むよ」
国王陛下は、イグレシアの事を心配していた。
「よろしくお願いします」
今日は聖女としてではなくて、嫁としてこの宮殿に来ている。
アリエーテは深く頭を下げた。
「お帰りなさいませ」
「モリーとメリー、これからはこちらの宮殿でもよろしくお願いしますね」
「もちろんでございます」
「アリエーテを頼むよ」
「はい、殿下」
モリーとメリーは深く頭を下げた。
「この後、夕食の時間だ。着替えたらダイニングに行こう」
「もっとウエディングドレスを着ていたいわ」
由香がデザインしたウエディングドレスは、ベールを外せば、普通のドレスとしても使えそうだ。シンプルで品がある。
「それなら、そのままでも構わないよ」
「いいえ、着替えます。普段着でいいのかしら?」
「ああ、普段着で構わない」
「では、着替えますわ」
「迎えに来る」
イグレシアは廊下から自分の部屋に戻っていった。
アリエーテはドレスを脱ぐと、清楚な白いワンピースを身につけた。白いワンピースは聖女の仕事をするときに着る洋服だが、初めての夕食なら、他の色ではなく、やはり白色が相応しいような気がした。ガーデンパーティだったので、靴が汚れていたから、新しい靴を履いた。
モリーがお化粧をし直してくれる。パーティー用の派手なお化粧ではなく、薄化粧にしてくれた。髪もアクセサリーは付けずに、シンプルな姿でイグレシアを待った。
メリーが淹れてくれた紅茶を飲んでいると、扉がノックされた。
モリーが扉を開けると、普段着のイグレシアが立っていた。
「ダイニングに行こうか?」
「ええ、あまりお腹は空いていないのですけれど」
「僕もだよ」
早足でイグレシアの隣に並ぶと、すぐに手を繋がれた。
「シェフも軽い物を用意しているだろう」
「そうですね」
「今日は素晴らしいパーティーだった。僕はこんなに楽しいパーティーは初めてだったよ」
「私もよ。いい思い出になりました」
ダイニングは1階の奥にあった。大きなテーブルが置かれていて、ちょっとしたパーティーも開かれそうなほど広い。国王陛下と王妃様は既に座っていた。
「お待たせしました」
「いいや、早く来ただけだ。少しワインが飲みたくてね」
国王陛下と王妃様はワインを飲んでいた。
「イグレシアも飲むか?アリエーテ妃も飲むといい」
「では少しいただきましょう」
使用人がワイングラス持ってくると、ワインを注いでいく。
アリエーテはお酒を飲むのは初めてだ。
ドキドキしながら、一口飲むと、とても美味しい。葡萄ジュースのようだ。
「お注ぎしましょう」
使用人がアリエーテのグラスにまた注いでくれた。
料理は軽めで用意されていた。
昼が豪華な食事だったので、さっぱりとした味付けで、量も少なめで数種類の料理が出される。
口当たりのいいワインを飲んで、最後に、氷菓子が出された。口の中がさっぱりした。紅茶が出され、それを飲んでいると、国王陛下と王妃様は先にダイニングを出て行った。
「おやすみ」
「おやすみ」
「おやすみなさい」
イグレシアに続いて、急いで挨拶をすると、イグレシアは微笑んでいる。
「緊張しなくていい」
「でも、挨拶は大切だわ」
「そうだな」
イグレシアは手に持っていたカップをテーブルに置いた。
ずっと年上のイグレシアは、王子らしく顔立ちも美しく、背も高い。とてもハンサムで優雅だ。美しい緑の瞳を細めて、アリエーテを見つめた。
「朝食と夕食は家族と一緒に食べている。何か事件がない限りは」
「はい」
「僕は時々、寝坊をするが、その時は誰も起こさない代わりに、食事は一人で食べていた」
アリエーテは微笑む。
「では、部屋に行こうか?」
「はい」
立ち上がると、ふらりと目眩がした。
「ワインで酔ったのかな?」
「初めてワインを飲んだのです。とても美味しくて」
イグレシアの手がしっかり手を繋ぐ。
「何杯も飲むから、お酒に強いのかと思ったよ」
「お酒は飲んだことはないのよ」
「お風呂で溺れないようにね」
「ええ、気をつけるわ」
「お風呂に入ったら、寝室に来てくれるか?」
「分かったわ。部屋の中の扉を使うのね?」
「そうだ」
「なんだか隠れ家に入るようで、ドキドキするわ」
「隠れ家か……それもそうだな」
部屋まで送られて、イグレシアは自室に戻って行った。
「ただいま」
「お帰りなさいませ」
モリーとメリーはこの宮殿の侍女の制服を着ている。なんだか新鮮だ。
「では、お風呂に入りましょう」
「お願いします」
靴を室内履きに替えて、お風呂に案内される。
「お酒を召し上がったのでしょうか?」
「ええ、とても美味しくて」
「お風呂に入って、お化粧を落とされ、髪も綺麗に洗われていく。
「今日は初夜でございますので、綺麗に洗っておきましょう」
「ええ」
「旦那様にお任せしていれば大丈夫でございますよ」
「わかったわ」
最後はシャワーで流され、さっぱりする。
「身体をマッサージいたしますね」
「うん。お願い」
眠くて、ふわりとあくびが出る。
「奥様、眠ってはいけませんわ」
「奥様?」
「もう結婚をなさったのですから、お嬢様とは呼べませんわ」
「私が、奥様?」
「そうでございますよ」
うふふと笑っている間に、綺麗に身体を磨かれる。
「歩けますか?」
「ええ、平気よ」
室内履きをはいて、隣へ続く扉に歩いて行く。
「おやすみなさい。モリーとメリー」
「おやすみなさいませ」
二人に見送られ、アリエーテは寝室に入った。
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