更新休止【異世界ファンタジー追放ざまぁハーレム主人公チート】デュエリスト・イン・ザ・ブロークンワールド【注釈付き】

チャプター8:ポイズン・グラマー

アイボット・ドント・キャッチ・コールド

フェザーは知らないが今フェザーが戦っているのは月の獣ムーン・ビーストと呼ばれる怪物である。
エルダー・ストーンが人体に入ると肉体は月の獣ムーン・ビーストに変質する。
何とも恐ろしい事である、　こんな事態を起こせるエルダー・ストーンとは何か?
残念ながらまだ解説する事は出来ない。

月の獣ムーン・ビーストには様々な形態が有るが
スァルビア男爵が変容した月の獣ムーン・ビーストは触手の塊の様な化け物である。
触手に触れれば人体など容易く破壊する、　そして素早く移動し人を襲う。
正に怪物である、　数多の職種による攻撃は100の騎士すら容易く絶命させるだろう。

だがしかしフェザーにとっては触手の攻撃など意に介さない。
触手による攻撃は確かに脅威である。
赤い竜の様な神話的存在よりも遥かにウィルパワーを蓄えている。
赤い竜がコップならばこの怪物は大河位の差がある。
大河に流されれば普通の人間は死ぬ。

しかしフェザーは普通の人間では無い。
莫大なウィルパワーによる攻撃は言い換えれば意志ウィルの奔流である。
全力で打ん殴る時は相手は全力で打ん殴られると分かるだろう。
獣の攻撃動作ならば尚更分かり易い、　そして莫大なウィルパワー。
このウィルパワーの流れを見れば
攻撃を読むのは滝が上下どちらに落ちているのかを判断するよりも容易い。
そしてそのウィルパワーの流れを読んでしまえばここからはフェザーの独壇場。
月の獣ムーン・ビーストの攻撃のウィルパワーを利用して相手に叩き返す。
通常時なら単純なウィルパワーの量から不可能だが
フェザーの個体空間パーソナルスペース、　小さな世界ミクロコスモスがそれを可能にする。

小さな世界ミクロコスモスは個体空間パーソナルスペースを展開しない・・・個体空間パーソナルスペースである。
個体空間パーソナルスペースは通常自分の世界を展開するウィルパワー運用の奥義だが
小さな世界ミクロコスモスは自分の世界を自分の内に留める事で
ウィルパワーを全身に供給しウィルパワーを跳ね上げる。
即ち自身の強化を行う個体空間パーソナルスペースである。
読者諸賢には地味に思う人も居るかもしれないが想像してみて欲しい。
個体空間パーソナルスペースは言うならば世界その物である。
小さかろうが広かろうが世界は世界、　個体空間パーソナルスペースを展開しているフェザーは
正に人間サイズの世界そのものである、　世界に打ん殴られて平気な生き物はまず居ない。
そして世界を壊すのも困難を極める。

派手さは無い、　地味である、　それは認めよう。
だからこそ付け入るスキも無いのだ、　そして決闘者としては関係無い話かもしれないが
他者の個体空間パーソナルスペースと共存が出来ると言う利点もある。
他者が個体空間パーソナルスペースを展開し自分も個体空間パーソナルスペースを展開すると
個体空間パーソナルスペースの喰い合いが発生し、　何方かの個体空間パーソナルスペースが破壊される。
しかしフェザーの場合は個体空間パーソナルスペースを自分一人の中に押しとどめる為
個体空間パーソナルスペースの喰い合いが発生せず共存可能になると言う事である。
喰い合いが発生しないので個体空間パーソナルスペース対策としては使えないが
個体空間パーソナルスペースの破壊方法をフェザーは熟知しておりその点も問題無いだろう。

兎も角その世界フェザーが戦っている。
触手の怪物が攻撃しフェザーはそれを返す、　只管それを繰り返す。
既に数百を超える攻防、　否、　防御とカウンターが行われており
月の獣ムーン・ビーストは攻戦一方なのに一方的に叩きのめされている異常な事態になっている。

「～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～！！！！！」

月の獣ムーン・ビーストとてそれは分かっている、　分かっているが如何しようも出来ない。
ほんの微かだが、　本能的な知性が月の獣ムーン・ビーストには備わっている。
逃げると言う選択が月の獣ムーン・ビーストの頭、　頭があるとすればだが
さっきからずっと浮かんでいる、　しかしながら逃げたら絶対禄でも無い事になるだろう。
そういう確信がある。

「～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～！！！！！」

月の獣ムーン・ビーストは戦いの中で無きに等しい知性で考えた。
ヴァカだが考えなければ死ぬと本能的に察していた。
故に考えていたがまるで駄目だ。
攻撃をすればカウンター、　しかし攻撃をしなければ
ウィルパワーが込められた投石によりダメージ。
場所を変えつつ何とかしようと試みた。

「～～～～～」

場所を変えていて分かって来た、　この男は他の連中に被害が及ばない様に戦っている。
ならば!!

「！！！！！！！！！！！！！！！！」
「!?」

月の獣ムーン・ビーストは飲み込んでいたラケットを吐き出した。
まだ生きているか知らないが生きている方に賭ける、　そして生きていて助ける方に賭ける。
作戦未満のアイデア、　人間並みの知性が有ればやらないが
月の獣ムーン・ビーストは全力でその案に賭けた。

「っ!!」

そしてその案は成功した。
フェザーは飛び出たラケットを確保し月の獣ムーン・ビーストは全力で逃げた。

「あ、　くっ・・・」

フェザーは慌てて後を追いかけようとしたが月の獣ムーン・ビーストはあっという間に見えなくなった。