婚約者は俺にだけ冷たい

円みやび

文字の大きさ
2 / 34
1

2

しおりを挟む


お昼は生徒の様子がわかるように教師はできる限り、食堂か教室で取るように言われているので和弘とともに食堂に向かった。

「本当にモテるな、お前の婚約者」
その通り。
奏多は毎日二人から三人に告白され、Ωや女の子のなら一度は好きになるとまで言われている。

王子様と言われる整った顔に親が学校の理事長でいくつか会社も経営している。
その上、奏多は誰にでも分け隔てなく優しかった。

モテない訳がなく、優一が出来損ないになってしまった以降は派手に遊んでいるようだ。

かといって敵が多いということもなく、同じ性であるαや男からも人気者だった。
一方で卑屈な出来損ないのΩでは誰が見ても釣り合いがとれない。

友達だって和弘しかいないし昔はそれなりに大きかった会社も今では親族経営の小さな会社になってしまった。

「今日もすごいな」
食堂は高校生らしく、というかごった返しており行列が出来ている。
「俺、席とってくる」
和弘にありがとう、と返事をするものの空いている席はあるのだろうかと見回すと嫌なものが目に入ってきた。

これだけ人がいる中でもすぐに見つけてしまう。
「奏多ー、あーん」
奏多の膝の上に座る綺麗な女の子がお弁当を食べさせている。
それだけではなく奏多の周りにはΩの男の子やαの取り巻きまでいる。

四方八方から抱きつかれている奏多に心がズキリと痛むが首を振って追い出した。
自分が傷つく権利はない。
婚約者としてなんの役割も果たせてない自分が悪いのだと言い聞かせる。

そんなとき、ふと奏多の視線が優一と合わさった。
奏多も優一に気づいてくれた!と手を振ってみるが奏多はスッと視線を外してしまう。

いつものことなのに馬鹿みたいに期待してしまう自分が嫌いだ。

何故だか分からないが奏多はここ数年、優一を避けるようになり話しかけても無視するようになった。

誰にでも優しい奏多がその中でも自分にはとろけるほど甘い声で話しかけてくれていたのが嬉しかったのにもう聞くことはできない。

「とれたよ」
「ありがとう」
和弘が戻ってきたのでお礼を言って、奏多に無視されてしまった悲しみを吹っ切るように明るく振る舞う。

「今日、飲みに行こう」
「お!珍し!!」
こんならしくもない誘いをして気を紛らわせたところで一人で帰った家では寂しくて堪らなくなるのがわかっている。

お別れするまでにもう一度だけ、あの甘い声で名前を呼んでほしい。

そんな希望はさっさと捨てた方がいいと分かっているのに過去の楽しかった記憶が邪魔をして捨てさせてくれない。


しおりを挟む
感想 105

あなたにおすすめの小説

ずっと好きだった幼馴染の結婚式に出席する話

子犬一 はぁて
BL
幼馴染の君は、7歳のとき 「大人になったら結婚してね」と僕に言って笑った。 そして──今日、君は僕じゃない別の人と結婚する。 背の低い、寝る時は親指しゃぶりが癖だった君は、いつの間にか皆に好かれて、彼女もできた。 結婚式で花束を渡す時に胸が痛いんだ。 「こいつ、幼馴染なんだ。センスいいだろ?」 誇らしげに笑う君と、その隣で微笑む綺麗な奥さん。 叶わない恋だってわかってる。 それでも、氷砂糖みたいに君との甘い思い出を、僕だけの宝箱にしまって生きていく。 君の幸せを願うことだけが、僕にできる最後の恋だから。

【BL】声にできない恋

のらねことすていぬ
BL
<年上アルファ×オメガ> オメガの浅葱(あさぎ)は、アルファである樋沼(ひぬま)の番で共に暮らしている。だけどそれは決して彼に愛されているからではなくて、彼の前の恋人を忘れるために番ったのだ。だけど浅葱は樋沼を好きになってしまっていて……。不器用な両片想いのお話。

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。

運命じゃない人

万里
BL
旭は、7年間連れ添った相手から突然別れを告げられる。「運命の番に出会ったんだ」と語る彼の言葉は、旭の心を深く傷つけた。積み重ねた日々も未来の約束も、その一言で崩れ去り、番を解消される。残された部屋には彼の痕跡はなく、孤独と喪失感だけが残った。 理解しようと努めるも、涙は止まらず、食事も眠りもままならない。やがて「番に捨てられたΩは死ぬ」という言葉が頭を支配し、旭は絶望の中で自らの手首を切る。意識が遠のき、次に目覚めたのは病院のベッドの上だった。

心からの愛してる

マツユキ
BL
転入生が来た事により一人になってしまった結良。仕事に追われる日々が続く中、ついに体力の限界で倒れてしまう。過労がたたり数日入院している間にリコールされてしまい、あろうことか仕事をしていなかったのは結良だと噂で学園中に広まってしまっていた。 全寮制男子校 嫌われから固定で溺愛目指して頑張ります ※話の内容は全てフィクションになります。現実世界ではありえない設定等ありますのでご了承ください

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

【bl】砕かれた誇り

perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。 「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」 「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」 「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」 彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。 「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」 「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」 --- いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。 私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、 一部に翻訳ソフトを使用しています。 もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、 本当にありがたく思います。

【完結】初恋のアルファには番がいた—番までの距離—

水樹りと
BL
蛍は三度、運命を感じたことがある。 幼い日、高校、そして大学。 高校で再会した初恋の人は匂いのないアルファ――そのとき彼に番がいると知る。 運命に選ばれなかったオメガの俺は、それでも“自分で選ぶ恋”を始める。

処理中です...