婚約者は俺にだけ冷たい

円みやび

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眠っていると話している声が聞こえて微かに意識が覚醒した。
話しているのは正樹?
誰と話しているのだろう。
寝ぼけた頭では答えを見つけることはできない。

「だーかーらー!仕方なかったんすよ!!事故る方が駄目でしょう!」
正樹は電話相手に必死に言い訳をしているようだった。

こんな夜中に…と気になるが正樹の声が小さくなったことで覚醒しつつあった意識が遠のいていく。

「はぁ?もう会いにくる?予定と違いすぎませんか」
自分の前にいる時の正樹と随分雰囲気が違うな、と思ったところで眠ってしまった。



正樹はベッドの中で眠っている優一を見てため息をついた。
間に挟まれているこっちの身にもなってほしい。
本当に自分勝手だ。
これを言うともの凄く怒るだろうが父親によく似ている。

「優一さん、巻き込まないでくださいよ」
この半年でただの監視対象ではなくなってしまった。
優一には傷つかないで幸せになってほしい。
色々、知っている身として心からそう思う。

もっと遠くに逃げるのが一番なんだろうけど…。
いやどこまで行っても追いかけるだろうから意味ないか。

『お前…手出してないだろうな?もし…なんかしてたらわかってるよな?』
優一に何かしたら正樹との数年の付き合いなんか関係なく本当に消されてしまいそうだ。

正樹は優一が大切だが全ては投げ出せない。
「何もしてないっすよ!!!ほんとに!!」
ちょっと寝顔見たり髪の毛乾かしてもらったりご飯を一緒に食べているだけで邪な心は持ってない、はずだ。

「それにしても本当に大丈夫っすか?」
産地偽造、食中毒くらいじゃ潰れてくれないだろう。
『楽しみにしとけよ。明日の朝、面白いものが見れるぞ』
楽しそうな、なにか企んでいそうな声。
もうすでに仕込んでいるのだろう。

怖い人だ。
こういう時に心底思う。
あの時の自分の選択は間違ってなかったのだと。

「じゃ、あと少し警戒しときますよ」
『ああ。そっちまで手を回す余裕はないだろうが念のため頼むよ』

そう言って切れた電話を耳から離して自分のベッドに投げた。
スースーと規則的な寝息をしている優一にごめんなさい、と心の中で謝った。

近いうちに正体がバレて嫌われてしまうかもしれない。
騙していたのか、と詰められても不思議じゃない。

朝ご飯を一緒に食べるもこうして街に降りてご飯屋さんを巡る生活が出来るのも数えるほどだろう。

全ての真実を知った時、優一はどんな選択をするのか。
出来ればハッピーエンドになってほしい。

優一を慕う一人として願わずにはいられない。

さて、明日の朝のニュースは何が流れるのかな。









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