俺の自慢の三人娘〜上から女剣士、竜人、デュラハンって〜

名無し@無名

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思春期娘

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 ◆


「……あちぃ」

 真上から照らされる日差しに全身から大量の汗が吹き出す。
 季節的には涼しい時期なのにも関わらず、この『ガルガン渓谷』は灼熱の熱気に晒されていた。
 ギルドに到着した俺達一家の初めての依頼、それはここに生息する『ヴォルケーノワイバーン』の討伐だった。
 このヴォルケーノワイバーンという魔物だが、単体ならAランクでも比較的簡単なものに分類される。しかし今回は群れでの討伐になるとの事で難易度は爆上がりだそうだ。
 ワイバーンといえど立派な竜族。同じ血統のリーゼが語るには、群れを相手にするなら油断できないとの事だ。
 やはりあのゲラフが言った様に、あの街で受けられるクエストは多少という認識で間違いないだろう。このレベルなら普通に考えればSランクに分類されても遜色無い。

「あづいあづいあづい!」
「我慢しなよとーちゃん」

 ボヤく俺の背中をリーゼはパァンと叩いた。鱗に包まれた手のひら超痛いんだが?

「……ッ、しかしリーゼは元気だな」
「あたしは竜の血が入ってるからね。暑いのも寒いのも得意だよ」
「なるほどな……ハクは大丈夫か?」
「ボク、感覚にぶちんだから」
「お、おう」

 魔族の肉体とは随分とタフらしい。
 それに引き換え、イリアはシャツ一枚の薄着になって手をパタパタしていた。豊満な胸元がチラリズムしてお父さんは気が気じゃないぞ。

「こらイリア、女の子が肌を晒すんじゃありません」
「あ、暑過ぎて……ここまでとは想像してなかったの。私とした事が気候の変化を甘く見ていたわ」

 街を出る前までは『私達に任せておけば大丈夫!』と大見えをきっていたが、ふむ、ちゃんと年相応の可愛い所もあるじゃないか。
 まぁ生まれ故郷は年中気温の変化が乏しく過ごし易い環境だったから仕方がない。旅でもしなければ失念するだろう。

(ま、現に俺だって抜かってたし)

 いやはやブランクとは恐ろしいものだ。

「仕方ないな、父さんがおんぶしてやろう」
「え……父さんの汗が付くのはシンプルに嫌なんだけど」
「うぐッ、ううンンンンひぎぎぎ!」
「え、なにそれ泣いてんのキモい!?」
「あー、イリア姉がとーちゃん泣かした!」
「……いーけないんだーいけないんだ」
「な、ななな泣く事ないでしょ! 父さんも大人なんだから!」
「だ、だっでよぉ。そういうのって、予め心の準備があって耐えられるもんだぜ? 目覚めたら思春期の娘だらけで、俺には構える時間もだなぁ……」

 聞いた話によると世間では洗濯物も分けられちまう残酷な世界だとか。
 いつかそんな日が来るとは思っていたが、俺の腕の中でキャッキャしてたイリアにガチ拒否されると心にズンとクルものがある。

「パパ、だいじょーぶ?」

 ピタリとハクがくっついてくる。

「おお……お前はパパの汗くさを拒否しなーーーーあっづ!!」
「あ、ごめ」

 ハクは軽装だが鎧を纏っているのを忘れていた。その鎧もすっかり太陽熱でアツアツで鉄板のそれに等しい。
 割と焦げるレベルで熱かったのだが、父親としての嬉しさが勝っていた為に俺はハクを思いっきりハグした。

「熱ッ!! ……けど、耐えてみせるぜ!」
「がんばれパパ」
「……まったく、何をやってるのよ」
「にしし、でもお陰で探す手間が省けたよ?」
「え?」

 イリアはリーゼの言葉に釣られて視線を上げる。すると、複数の巨大な影が俺達の頭上を通り越していった。

「うぉ!?」
「賑やかな声に誘われて獲物が姿を現したね。さあみんな戦闘準備!」
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感想 4

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みんなの感想(4件)

2021.08.19 ユーザー名の登録がありません

退会済ユーザのコメントです

2021.08.19 名無し@無名

ありがとうございます!
そう言っていただけて幸せです(*´ω`*)

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スパークノークス

お気に入りに登録しました~

2021.08.17 名無し@無名

登録感謝します(*≧∀≦*)

解除
辻 雄介
2021.08.14 辻 雄介

お気に入りにしときますね!

2021.08.15 名無し@無名

ありがとうございます!

解除

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