海上都市の機甲女 ~a point of change~

ケニーさん

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第二機

優しい、強がり、寂しがりや

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「ツバキは篤と会うまで何をしていたの?」

「闇の組織で働いてました」

「そうかー。それは大変だったね。ツバキに比べたら私なんか幸せだね」

 そういいながらもサクラは椅子の上で足を抱え、まるで身を守るようにする。手は震えサクラの明るさの中に潜む弱い心が浮き彫りになっている。その姿はまさしく小動物。かつてのサクラならただおびえているだけだった。今のサクラには心の支えがある。
 全身の震えが止まったサクラはいつものリズムを取り戻していく。

「私はある家族の家で子供のお世話係として迎え入れられたんだけどねー。ある日目の機能を失っちゃって」

 サクラは目を瞑った。

「見えないって、すごく怖いことなんだよね。世界が収縮していって最後には目で見て得ていた情報が虚無きょむへと沈んでいくの。そこに確かにあるでもあると信じられない。そんな状況になるの。想像するだけで怖いでしょー」

 サクラは苦笑してみる。サクラは椅子から足を下して腰を上げた。キッチンへと歩み冷蔵庫から緑茶のペットボトルを取り出して、氷の入った二つのグラスに注ぐ。氷がコップの中で泳ぎからんからんと涼しげな音を立てる。その音が好きなのかサクラは少しばかり笑顔になって氷を突く。
 はいどうぞ、とツバキの前にコップを置く。

「ありがとうございます。いただきます」

「さて、続きを話そうかな。目の見えなくなった私は聴覚と嗅覚、触覚から情報を得て誤魔化したんだけどね。長くは続かなくてね。私が隠していたのも理由があって、サツキは私達機械人形アンドロイドのパーツで一番高価なのは何か知ってる?」

「チップですよね」

 チップ――それは記憶や情報伝達中継を担う脳ともいえるもの。

「うん。その次に高価なのが目なの。目の修理費って、新しい機械人形を買うのよりも高いの。だから隠してた。目が見えないことを知った家族は私を捨てた。まぁ当然といえば当然だよね。でもその時の私はそんなこと思えなかった」

 サクラは結露したコップに指で怒った顔のマークを描いた。
 私こうなったの、と絵を見せる。

「でもね……何よりも人が怖くなった。たとえ誰かに拾ってもらえたとしても、また捨てられる。そう思いながら三日間、雨風に晒されて何もかもがどうでもよくなったとき雨の中傘を差した一人の男が立ち止まって私に傘をさしてくれた」

 突然風呂場から気持ちよさそうに鼻歌聞こえてきた。シリアスなムードが一変してその場が明るくなった。

「それが篤。その時の篤はまるで抜け殻のようだった。どっちが助けられたのか分からないくらいに。篤は私を家に連れて帰って、お風呂に入れさせてもらったし洋服もくれた。一晩を一緒に過ごして悪い人ではないなーって思って、試すように目の事を話しただー。そしたら篤なんて言ったと思う?」

 サツキは首を横に振った。

「目は明日にでも知り合いに直してもらう。だからそばにいてほしいって……。だからいつか捨てられたとしてもその時までは篤を支えるって決意したんだ―」

 まっそんな感じかなー、とサツキはいつもの調子に戻る。

(篤さんはたぶん優しくて、強がりで、寂しがりやなんだろうな。
それにサクラすごい。自分の役割をはっきりとさせて篤さんを変えた。
私には……何ができるのかな?)
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