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第二機
ストロー
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昨日の夜、篤は電話を掛けたものの慌ただしくしていた穂摘に後からメールで待ち合わせの時間と場所を送った。
待ち合わせの時間は十二時三十分。場所は北エリアの中央に位置するショッピングモール〝海ほたる〟。その中に待ち合わせスポットとなっている時を刻む柱。時間軸をイメージしたとされているそれはまるで二本の線が平行した螺旋状のDNAだ。その天辺に球体の時計がある。
今現在、十二時四十五分二十六秒。篤がこの場についてから約四十分。穂摘が一向に来る気配がない。それどころか連絡もない。
仕事では一切遅刻の無い穂摘らしからぬ事態に篤は携帯端末を手に取る。
すると皆ゆっくり歩く中、一つの足音だけが慌ただしく高い音を立てる。あまりにも場違いなその音は徐々に近づいていく。息遣いすら聞こえてくるほど近づいたところで――
「ごっ、はぁーはぁーふー……ごめん――なさい」
豊満な胸を上下させながら深く呼吸をする穂摘。篤は目の前にいる穂摘に目を奪われた。
結婚式などできるようなドレスにも似た装飾の白いワンピース。腰元が絞られたワンピースは彼女の体のラインをはっきりとさせ生地が肌を撫でる。
仕事上健康的に焼けた肌が真っ白なワンピースとマッチして女性らしさに陰りができるものの女の子らしさが顔を出す。
穂摘の都市を考えるともう少しばかり大人っぽい恰好をしたほうが良いはずだが日頃老けているといわれているため意外と気にしている。
何より今日は特別だ。篤の横に並んで歩いても違和感のないような姿でなければならない。そして彼の好みも考慮して、とあれこれ考えた結果遅刻となった。
「今日はなんか雰囲気が違うな。そのーなんだ。可愛いな。コンタクトにしたのか?」
「うん……」
「折角おしゃれしたのに走ってくるなんて、勿体ないな。お店に入る前にそこの日陰のベンチで一休みしよう。飲み物を買ってくるから待ってろ」
篤は移動販売店の列へと並ぶ。
その姿を見届けた後、篤に言われた通りに穂摘はベンチに座った。そこは程よく風が抜けて、火照った体をゆっくり冷ましてくれる。
「なんだか本当にデートしてるみたい」
自分で口にして恥ずかしくなってまた体温が上がる。
メニューを注文している篤の背中に目をやるとちょうど篤も振り返って、目が合う。
穂摘は慌てて目線を地面へと向ける。
視界に靴が入り上を向くと篤の顔があった。その距離およそ十五センチ。
「どうした? 体調でも悪いのか?」
穂摘は必死に首を横に振る。
「そうか? それならいいけど。これを飲むと落ち着くかもしれない」
「ありがとう」
穂摘はストローを唇で挟んで飲み物を口に含む。
何かもわからずに飲んだそれは甘酸っぱく口の中でシュワシュワと気泡が弾ける。微炭酸が火照って疲れた体によくなじむ。
「おいしい」
「そうか、ちょっと俺にもくれ」
はい、と篤に手渡す。その行動は無意識、反射的なもので全く考えもしなかった。
穂摘が口をつけたストローに上書きを売るかのように口をつける。
それを目にして自分が何を言ったのかを理解して飲み物を飲む篤の唇を見つめる。
「ありがと。確かにおいしいな。 ?」
全くもって鈍感な篤は耳を赤くしている穂摘の気持ちなど知る由もない。
「さて、そろそろ行くか」
篤は穂摘に手を差し出した。
待ち合わせの時間は十二時三十分。場所は北エリアの中央に位置するショッピングモール〝海ほたる〟。その中に待ち合わせスポットとなっている時を刻む柱。時間軸をイメージしたとされているそれはまるで二本の線が平行した螺旋状のDNAだ。その天辺に球体の時計がある。
今現在、十二時四十五分二十六秒。篤がこの場についてから約四十分。穂摘が一向に来る気配がない。それどころか連絡もない。
仕事では一切遅刻の無い穂摘らしからぬ事態に篤は携帯端末を手に取る。
すると皆ゆっくり歩く中、一つの足音だけが慌ただしく高い音を立てる。あまりにも場違いなその音は徐々に近づいていく。息遣いすら聞こえてくるほど近づいたところで――
「ごっ、はぁーはぁーふー……ごめん――なさい」
豊満な胸を上下させながら深く呼吸をする穂摘。篤は目の前にいる穂摘に目を奪われた。
結婚式などできるようなドレスにも似た装飾の白いワンピース。腰元が絞られたワンピースは彼女の体のラインをはっきりとさせ生地が肌を撫でる。
仕事上健康的に焼けた肌が真っ白なワンピースとマッチして女性らしさに陰りができるものの女の子らしさが顔を出す。
穂摘の都市を考えるともう少しばかり大人っぽい恰好をしたほうが良いはずだが日頃老けているといわれているため意外と気にしている。
何より今日は特別だ。篤の横に並んで歩いても違和感のないような姿でなければならない。そして彼の好みも考慮して、とあれこれ考えた結果遅刻となった。
「今日はなんか雰囲気が違うな。そのーなんだ。可愛いな。コンタクトにしたのか?」
「うん……」
「折角おしゃれしたのに走ってくるなんて、勿体ないな。お店に入る前にそこの日陰のベンチで一休みしよう。飲み物を買ってくるから待ってろ」
篤は移動販売店の列へと並ぶ。
その姿を見届けた後、篤に言われた通りに穂摘はベンチに座った。そこは程よく風が抜けて、火照った体をゆっくり冷ましてくれる。
「なんだか本当にデートしてるみたい」
自分で口にして恥ずかしくなってまた体温が上がる。
メニューを注文している篤の背中に目をやるとちょうど篤も振り返って、目が合う。
穂摘は慌てて目線を地面へと向ける。
視界に靴が入り上を向くと篤の顔があった。その距離およそ十五センチ。
「どうした? 体調でも悪いのか?」
穂摘は必死に首を横に振る。
「そうか? それならいいけど。これを飲むと落ち着くかもしれない」
「ありがとう」
穂摘はストローを唇で挟んで飲み物を口に含む。
何かもわからずに飲んだそれは甘酸っぱく口の中でシュワシュワと気泡が弾ける。微炭酸が火照って疲れた体によくなじむ。
「おいしい」
「そうか、ちょっと俺にもくれ」
はい、と篤に手渡す。その行動は無意識、反射的なもので全く考えもしなかった。
穂摘が口をつけたストローに上書きを売るかのように口をつける。
それを目にして自分が何を言ったのかを理解して飲み物を飲む篤の唇を見つめる。
「ありがと。確かにおいしいな。 ?」
全くもって鈍感な篤は耳を赤くしている穂摘の気持ちなど知る由もない。
「さて、そろそろ行くか」
篤は穂摘に手を差し出した。
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