海上都市の機甲女 ~a point of change~

ケニーさん

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第三機

新たなバッチとカギ

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「ようこそ、ここが名の無い課だ。ようこそといってもツバキを入れて二人だけだけどな」

「改めてよろしくお願いします‼」

「よろしく。さて、まずは着替えだが……残念なことに更衣室は一つしかない」

 篤は更衣室の扉をあけながら言う。電気をつけると二人で使うにはあまりにも広く、ロッカーの数も異様にある。

「今まで俺一人だったから問題がなかったが、これからは後退で使う」

「一緒じゃないんですか?」

 篤はツバキの発言に対してびくりと肩が跳ね上がる。
 発言をした本人は至極当たり前の発言をしたといった具合の表情をしている。もし篤が「それもそうだな」なんてことを言ったら一緒に着替えることがあっさり決まってしまいそうだ。
 しかしこの状況において一般的ではないのはツバキではなく、篤の方だ。あくまでツバキは機械人形なのだ。決して人ではない。それは目を見れば一目瞭然だ。人のものとは違う。それでも篤はツバキを女の子として見る。

「それは俺も困るし、ツバキだって困るだろ」

「どうしてですか?」

「それはツバキが女の子だからだ」

「私が……」

「そうだ。これからは女の子としての自覚を持ってもらいたい」

「分かりました……これから気をつけます」

「それで、先か、後か、どっちいい?」


 ツバキは脊髄反射で答えた。

「後にします」

「そうか……ロッカーは好きなところを使ってくれて構わない。カギは自分で管理をするように。そしてこれがツバキの仕事着だ。急遽きゅうきょだったから今は一着だけだが、明日には何着か届くから安心していい」

 そう言って篤はまだ開封されていない仕事着をツバキに差し出した。

「基本的には仕事をする前にこれに着替える。それとこれを付け忘れないように」

 服の上に置かれた小さな箱を指しながら言った篤は更衣室へと入ってドアを閉めた。
 一人部屋に取り残されたツバキは箱の中身を確認する。
 中から出てきたのはバッチ。プリント配線板のようなデザインでとても科学的である。裏返すと小さく、《No.1001篤/ツバキペア》と彫られていた。
 彫られた文字を指先でなぞりながら確認する。それにより初めて篤とペアになったことを実感できた。

「お待たせ」

 着替え終えた篤はツバキに声をかける。
 白がメインとなっていていくつか青色がさし色のように入っている上着。青色に近い紺色のパンツ。服を中に入れて締めたベルトと、さし色と同じ青色のネクタイが見た目を引き締める。えりに付けられた階級章が気持ちを引き締める。

「どうした?」

 篤はバッチをまじまじと見つめるツバキに問う。

「何だかうれしくて――うまく言葉にできないんですけど」

「そうか……着替えてきな」

「はい‼」

 ツバキは更衣室の中に入ってまずはどのロッカーを使うかを選び始めた。数の多さに迷う。一つ一つ確認すると一か所だけカギの外れたロッカーがあった。それは篤の使っているノッカーだ。
 迷いなどどこかへ吹っ飛びツバキは篤のロッカーの左側と使うことに決めた。
 ロッカーを開けるとハンガーが三つかかっていて扉の裏面には体全体が移るほど大きな鏡が備え付けられている。
 篤から渡された服を袋から出して早速着替えを始める。
 下着姿となったツバキはたたまれた黒い布を広げる。それは上下一体型のライダースーツのようなもので、妙にサイズがでかいように感じられる。広げた拍子に一枚の紙がひらりと滑るように地面に着地する。
 ツバキは紙を拾い上げる。そこには機甲人形マシンドール専用戦闘用スーツの文字が並んでいた。使用機能、素材など書かれていると共に着用の仕方がイラスト付きで記されていた。
 一通り読み進めると専用の下着もあるようで袋を見ると確かにあった。
 ツバキは下着を脱ぎ専用の下着に着替える。だいぶ締め付けるようで下着を変えるだけで一苦労だ。次に戦闘用スーツを着込む。背中のあたりからまずは片足ずつ足と通して、下から腰のあたりまで持ち上げる。足同様、片腕ずつ腕を通していく。背中のチャックを上げる。しかしこれで完了ではない。最後に体に合うサイズにするために手首のボタンを押す。
すると適正サイズへと調整される。ぴったりと体のラインに沿ったスーツはまるでなにも来ていないような感覚になる。

(これは……少し恥ずかしい?)

 自分の姿を見てツバキは思う。
 肩、足などの関節部位が妙に機械的だ。説明書によると体の動きをアシストしてくれるようだ。
 ツバキは最後にバッチを胸元のところにはめ込み付ける。

「よし‼」

 ツバキはロッカーの扉を閉めて、カギをかける。

(また新しいカギ……)

 ツバキはぎこちない足取りで更衣室を出た。
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